一つの終焉
各地の平民が王侯貴族神官に牙を剥き、国は内乱へと突入した。
すぐに鎮圧されると思われたそれは、以外にも平民が優勢だった。
武器や戦力の質など、比べ物にならないほどの差があるにも関わらず平民が優勢になっている理由は、ひとえに数の問題であった。
当たり前だが平民の方が多い。
いくら質が高くとも、数の暴力には勝てなかった。
さらに、屋敷で働いている人間の中には平民もいる。
外からも中からも崩されれば、ひとたまりもない。
そうして国内の人間同士で争っていた者たちは、新たに迫る脅威に気がついていなった。
人間に間引かれることなく、徐々に数を増やして来た魔物が、人間の狂気に触発されて暴走を起こしたのだった。
国を飲み込むスタンピードの始まりであった。
魔物討伐が行えるほどの戦力などなく、ただ数が多いだけの平民など戦力にならず、小さな村なら数分で、大きな街でも1日あれば、魔物の波に飲まれていった。
後に残るのは、血塗られた壊れた建物と、魔物が食べ残した身体の一部のみ。
逃れられる場所などなく、逃れられる人間など存在しない。
必死になって、民を見捨てて国外に逃れようとした王族もいたが、それは叶わなかった。
なぜなら、国全体を覆うように、結界が張り巡らされていたからだ。
そう、この国の人間は、誰一人として見逃さないように。
私はこの国の終焉を、一番の特等席である上空から見下ろしていた。
私は終焉が見たかった。
一番見やすいのはどこかと考えて、空がいいと思いついた。
上空に足場の結界を作り、そこからこの国を眺めている。
私とともにこの国の終焉を見守るのは、協力者であるカルヴァノスただ1人。
ああ……とても感慨深いわね。
遠くまで聞こえる怨嗟が、耳に心地いい。
絶望も嘆きも、私の心を慰める。
やっと、ここまで来れた。
長かった。
終わりのない暗闇に放り出されたようで、心が何度砕けたか。
でもこれで、やっと終わった。
ようやく叶った。
私のたった一つの願い。
この国の終焉。
「なぁ、同じく召喚された聖女まで、殺す必要あったのか?」
「今更?」
「ちょっと疑問に思っただけ。」
「聖女アカリと聖女サラは、この世界に来て喜んでいた。喜んで、呑気に恋愛なんかしてた。身体を売ることもなく、綺麗な身体で。聖女アンネは、死にたがっていた。どうして殺してくれないのと、嘆いていた。聖女メティナは、純粋にこの国のために働いていた。こんなクソみたいな国のために。……これで答えになった?」
「まぁな。これからどうするんだ?」
「さあ?考えてないわ。」
「嘘だな。死ぬ気か?」
「少し違うわね。……神を殺すと言ったら……?」
「……はあ!?そんな、荒唐無稽な話……」
「そう?私の故郷には、神殺しの話なんかたくさんあったわ。つまり、不可能ではないということ。」
「まぁ、とりあえず、直近はすることがないってことでいいか?」
「そうね。まだまだ力が足りないもの。」
「なら、俺と来ないか?嫌なら、協力の対価として、一緒に来い。」
「あなた……物好きね……」
「うっせぇ。」
私は久しぶりに、本当の微笑みを浮かべた。




