国の混乱
大規模な魔物討伐が注目されていた頃、密かに足元が崩れ始めていた。
初めは大量の魔虫によって、作物が根こそぎ食べられてしまったこと。
レッドイナゴと呼ばれる魔虫は、単体でなら特に問題のない魔虫なのだが、集団になると恐ろしい力を発揮する。
集団になると繁殖の準備行動をとり、全て植物を根も残さずに食べてしまうのだ。
時には大きな木でさえ、全て食べられてしまう。
全ての植物を食べたら、次は動物だ。
単体なら草食なのに、集団では動物も食べる雑食になる。
最終的には、人間も襲い出す。
そんなレッドイナゴが、地方の村々を襲い、5つの村が食い殺された。
そうしてやっと国は気がついた。
国はさらに1つの村を生贄に、レッドイナゴを村人ごと焼き殺した。
その村には、火に巻かれる人々の悲鳴が響きわたっていた。
助けを求める声も、伸ばされる手も無視して、非情に見殺しにしたのだ。
大義のため、大を守るために、小を犠牲にした。
国は大義のためだと言うが、死した村人がそれを納得するわけもなく。
ただただ、怨嗟が響くのみ。
また別の地方の村では、奇妙な伝染病が流行っていた。
初めは軽い風邪症状だが、1週間経っても治らない。
そして手足の先が黒く染まってから3日以内に命を落とす。
小さな村ではあっという間に感染し、何の手段も取れないまま、村全体に広がってしまった。
全滅したその村が発見されたのは、ゆうに1ヶ月も経った後。
たまたま商売に来た、行商人が見つけたのだった。
また、その事態を国が把握した時には、事件発生から半年が過ぎており、その間に8つの村や集落が全滅した後であった。
国は感染した住民がいる村を焼き払う対応をしたが、全く効果がなかった。
次第に大きな街や主要都市にも感染者が続出した。
国を上げて感染予防や感染者の治療に着手したが、いずれも効果がないままで終わった。
何より、感染経路が全くわからないので、防ぎようがなかった。
人々は恐怖に怯え、外出を自粛するようになった。
行商人も街の移動を控えるようになったため、必要物資の供給が途切れるようになった。
そうなれば、必然的に飢える者たちが出てくる。
それは王都でも、変わらなかった。
そんな中、ついに王族や貴族にまで感染者が出てしまい、国自体が政治ができるような状態ではなくなってしまった。
いよいよ神官たちにまで感染者が出ると、国の機能はほぼ停止してしまう。
もはや誰も、この混乱を止められることなどできはしない。




