魔物討伐
神殿の空気は、重苦しく沈んでいた。
半年のうちに、聖女が3人もいなくなったのだ。
誰もが噂している。
次は誰なのか、と。
しっかり者の聖女メティナも、暗い気持ちを隠せないでいた。
そんな折、神官長から魔物討伐の同行を命じられた。
どうやら、聖女メティナには強く拒否されたらしく、そのせいで私に回って来たんだとか。
私なら、拒否することはないと踏んだのだろう。
魔物討伐には王国兵士団、王国騎士団、神殿騎士、神官とともに参加する。
かなりの数の魔物が発見されて、急いで討伐しないといけないことになった。
これだけの規模の戦力で赴くのなら、相当の数が想定される。
何が起きてもおかしくないだろう。
出発直前、聖女メティナには、強く抱きしめられた。
その身体は冷え切って、震えていた。
私は、必ず帰るという気持ちを込めて、強く抱きしめ返した。
目的地の森に着くまでに、2度ほど接敵したが、問題なく倒していた。
だが、安心できたのはそこまでだった。
森は入る前から、異常な空気を醸し出していた。
森に入れば、連戦に続く連戦。
味方は疲弊しても休めず、魔物は絶えずやってくる。
怪我人と死人は留まることを知らず、血の匂いで鼻が麻痺していた。
そんな時、運悪く、討伐隊を抜けて来た個体がいた。
身体中から血を流しながらも、私たちに対する戦意は衰えていない。
私は動けなかった。
当たり前だ。
だって、戦闘職ではないから。
私は痛みを感じた瞬間、意識が途絶えた。
目を覚ましたのは、いつもの部屋のベッドだった。
身体を確認するが、傷はない。
聖女メティナが治してくれたのだろう。
まぁ、いい。
少しドキドキしたが、計画通り、怪我だけで済んでよかった。
まず、急に魔物が大量に発見されたのは、見つからないように隠蔽していたからだ。
規定数になったので隠蔽を解除して、見つかるように誘導した。
魔物討伐に、聖女メティナが拒否することは想定内だった。
そして、カルヴァノスが魔物を討伐隊から引き離し、後方へ送った。
その結果、私が怪我をしたと言う顛末だ。
私がわざと怪我をした理由は、万が一でも疑われないため。
不幸にならない聖女がいたら、もしかすると誰かが計画を推察するかもしれない。
その時のために、私自身、被害者になっておく必要があった。
今回の魔物が人為的だと知られた場合、疑われるのは討伐に行かなかった聖女メティナ。
私は少しでも疑いが逸れれば、それでいい。
そして、今回魔物討伐に目を向けさせたのは、次の計画に必要だったからでもある。
ここまで来たら、もう転がり落ちるだけ。




