聖女殺害の犯人
数日は、動けなかった。
気落ちした私たち聖女を気遣って、仕事もしばらくお休みになった。
神殿側としても、誰が聖女を殺害したのか捜査しなければならず、部屋の外は慌ただしく動いていたようだ。
そうして、あの事件から数日。
部屋にこもっていた私は、神官長に呼び出されて、彼の執務室に赴いた。
室内には、残りの3人の聖女と神殿騎士が複数人いた。
聖女は全員、呼び出しを受けたみたいだ。
それにしても、何故、神殿騎士がこんなにもここにいるのだろう。
それに雰囲気が悪い。
嫌な予感が、ヒシヒシと感じる。
神官長が、重苦しい口調で話し始める。
「皆に集まってもらったのは、聖女アカリの死についての話じゃ。死因は〈オクタヴィアの微笑み〉。」
〈オクタヴィアの微笑み〉は、薬学と歴史学で学んだ。
こちらの世界に来た頃、聖女として必要な薬学や礼儀作法など以外に、この世界で生きるために必要な知識を詰め込まれた。
まぁ、何もないよりは、助かっているが。
その学んだ中に、〈オクタヴィアの微笑み〉があった。
〈オクタヴィアの微笑み〉は、一言で表すと毒薬のことだ。
昔、この国に存在していたオクタヴィア夫人という女性が、モテる夫の全てを手に入れたいがために、夫を病に見せかけて毒殺した。
その時に用いられたのが、件の毒薬だ。
現在、その毒薬の作り方を知る者は、ごく一握り。
その中の1人が……
「聖女サラ、聖女アカリを殺したのは、おぬしじゃな。」
「「「「え……?」」」」
「な、何を言ってるんですか!?私がそんなことするはずないでしょう!」
「犯人は皆、そう言うものじゃ。証拠は出ておる。〈オクタヴィアの微笑み〉のレシピを知り、薬学に最も秀でて、聖女特有のいや、聖女サラ特有の聖力を、聖女アカリの体内と彼女の指から検出された。彼女が食べたお菓子を勧めていたとの証言もある。」
「違うっ!たっ確かに、勧めていたけど、でも私じゃない!!」
「はぁ……連れて行け!」
「「「「はっ!!」」」」
最後まで否定する聖女サラを、神殿騎士たちは容赦なく連れて行ってしまった。
私たちはただ、無言で見送るしかできなかった。
その後、神官長に解散を言い渡されて、呆然としたまま部屋に戻ってきた。
私を心配した神官の1人が、落ち着くお茶を淹れてくれた。
お茶を飲むと思い出す。
聖女アカリの血を吐いた顔が。
そして、ともに笑い合った聖女サラの絶望の顔を。
私はきっと、一生忘れることはないだろう。
忘れてはならない。
だって……
私が、殺したのだから。




