聖女会議
月に1回、5人の聖女が集まり、お互いの状況を話し合う会議がある。
もちろん、聖女だけで集まれるわけはなく、お互い付の神官も参加している。
だから、好き勝手言い合えるような場ではない。
それを皆んながわかっているのかは、わからないけど。
その場にはお茶とかお菓子が出るから、さながら会話の筒抜けなお茶会といったところ。
今日がその聖女会議の日。
昼休憩が終わってから小会議室に集まった5人は、思い思いの好きなお茶を飲んで、現状や不満なんかを漏らしている。
私も彼女たちに合わせて、神官たちが許容する範囲の愚痴を言ったり、どんな仕事をしているのかを報告した。
「そう言えばさ、皆んなの婚約者はどうなの?」
「うちの婚約者は、変に遜っててイラっとする。」
「あたしは王子様だから、不満なんかないよー。むしろ、役得!」
「俺様で、強引だから嫌。」
「私は、優しくていい人だと思う。」
「わたしは、年下サイコー!」
私たちには全員、婚約者がいる。
もちろん、神官たちが勝手に決めた婚約者だ。
聖女だからと表面上敬っているが、内心は神殿の駒だと見下されているのがわかる。
上手く隠しているから、普通は気づかない。
私もこの世界に来て、能力をもらわなければわからなかっただろう。
相手には、気づいていることを気づかれてない。
さすが神官たちが選ぶからか、噂を集めたらどの人間もクズばっかり。
暴力的だったり、モラハラだったり、支配的だったり、この世界には碌な人間がいない。
国の上層部や神殿の上層部に行くほど、その傾向が強い。
それでよく国が成り立っているなと、不思議に思った。
「それで…………ゴフッ……あ……え……」
「え……」
「いやー!」
「なになに!?」
「どうしたの!?」
小会議室に、悲鳴が響く。
突然、なんの前触れもなく、聖女アカリが血を吐いて椅子から崩れ落ちたのだ。
「ち、治癒をっ!」
「無理……無理よ……こ、怖くて、力が出ない……」
「役立たずっ!」
「ヴィオレッタっ!私たちでやるよ!」
「わ、わかった!」
聖女の能力は、イメージと気持ちで発動する。
最も治癒能力の高い聖アンネは、突発的なことに弱い。
代わりにしっかり者の聖女メティナが、治癒能力がある私を名指しした。
私は震える身体を叱咤し、転がるように聖女アカリの元にたどり着いた。
私と聖女メティナが必死に命を繋いでいるが、両手からこぼれ落ちるのが止められない。
「アカリ!しっかりして!戻ってきて!」
声を張り上げても、もうピクリとも反応しない。
治癒能力が、プツンと切れた。
治癒能力は、死んだ人にはかけられない。
つまり、アカリの命はもう……
助けられなかった。
私は項垂れて座り込んで、動けなかった。
あれから、部屋にいた神官に呼ばれた神官たちが、その場を納めた。
聖女たちは各自神官に付き添われ、部屋に戻った。
当の私も、座り込んだまま動けなかったので、神官に抱えられて部屋に戻された。




