トラック2-03 |図書室でのキス(主人公視点)
「ねぇ……ここで出して」
……いや、無理だろ。
脳がそう判断するより先に、身体が反応してるのが一番まずい。
「ここじゃまずい?」
ここじゃなくても。
「私もダメって言ったのに……やめなかったじゃん」
責めるみたいな口調。
でも、目は全然怒ってない。
むしろ、楽しんでる。
「じゃあ下着の上から……当ててみようかw」
待って。
“当てる”って言葉、そんな軽く使うな。
「まさかそんな雑魚雑魚じゃないよね? クスクス」
・・・
・・
・
“当てられてます”
ちょっとまって、これなに?
初めてなんだけど!?
「あれ? なんか顔……我慢してない?」
自分でも分かるくらい、
必死に我慢してる顔してると思う。
「フフッ……カッコいい俺を見てくれーって。そう言ってる」
クスッ、って。
完全に見透かされてる。
耳元に、さらに近づいてくる。
「ねぇ、まだ何人か、こっち見てるよ」
背中が一気に冷える。
「今さ、誰か近くまで来たら……絶対バレるよね」
視線。
人の気配。
椅子を引く音が、やけに大きく聞こえる。
「だって君、今すっごくピクってなってるの、気づいてる?」
……やめろ。
そんなこと言うな。
「なにかやってるって、気付かれちゃうよ?」
そのまま、耳に息。
「ふぅ~~~~~~~っ」
……っ。
「クスクス」
耳元にかかる美羽の楽しそうに笑う吐息が、余計にきつい。
「ほら、音が大きくなったから……みんな不思議がってこっちを見てくるかもよ?」
視界の端で、確かに誰かがこっちを見た気がする。
「あっ、いま女子3人こっち見てたよ」
やめろって。
「もしバレたら……女子全員に広まるだろうね」
想像しただけで、頭が真っ白になる。
「そしたらもう高校で彼女ムリだね」
……それは、勘弁して。
「嫌ならキスの音で誤魔化して」
誤魔化しになってない。
絶対なってない。
「でもしょうがないよね?」
小さく、囁く声。
「図書室で勉強している真面目そうな女子高生に見られながらだもんね」
その言い方、ずるい。
完全に分かってて言ってる。
「でもダメ。焦らす」
一拍、間を置いて。
「君がいじわるしたお返し」
……した覚え、ないんだけど。
・・・
・・
・
時間感覚が、おかしくなる。
どれくらい経ったのか分からない。
ただ、何度も焦らされたけど、
果てなかったのが妙に美羽は嬉しそうだった。
「頑張ったご褒美に、キスしながらしてあげる」
「ちゅう」
耳元で、低く。
「今までで一番の体験、させてあげる」
そんなこと言われて、冷静でいられるわけない。
「さっきの女子達、またこっち見てるんだけど?」
視線。
また。
「止めるの無理? 無理だよねぇ?」
ごめん……さすがにもう無理。
・・・
・・
・
「何とかバレなかっ……た……いや、ダメだったかも」
え。
「もう当分、図書室には近寄らないほうがいいかもね」
冗談みたいに言うけど、笑えない。
「それじゃぁ会うのはもう……?」
思わず出た言葉。
不安、隠せてなかったと思う。
「何言ってるの?」
即答。
「残り日数少ないんだし、明日も会うに決まってるじゃん」
……そう言われて、胸の奥が少しだけ軽くなる。
「フッ……なに? 今日出し過ぎてもう出ない?」
からかうような目。
「出るよ」
即答してしまった自分が、情けない。
「そ?」
小さく笑って。
「さすが童貞君。性欲強いね」
……言い返せない。
「まぁ私も処女だから性欲強いんだけど」
さらっと言うな。
心臓に悪い。
「んじゃ、また明日」
立ち上がりながら。
「会う場所は連絡するから」
いつもの調子で。
「またね」
そう言って去っていく背中を見ながら、
俺はしばらく、席から動けなかった。
頭の中、ぐちゃぐちゃで。
でも、不思議と後悔はなくて。
明日が待ち遠しい。




