トラック2-01 |図書室でのキス(主人公視点)
放課後の図書室って、どうしてこんなに音が響くんだろう。
「お、来た来た。こっちこっち。ほら、席取っておいたよ」
声は低くて、気だるそうで。
でも、胸の奥が少しだけざわつく。
隣の席に座れって、当然みたいに言うから、言われるままに椅子を引く。
ガタッ、って音がして、周りの視線が一瞬だけ動いた気がした。
……気のせい、だと思いたい。
鞄を開けて、筆箱を探す。
「…ん? どうしたの、そんなにゴソゴソして」
首を傾げる仕草。
なんでそんなに可愛いんだよ。自覚しろ。
「いや勉強するための筆箱……」
「筆記用具? いらないってば。ねぇ、何のために放課後呼び出したと思ってんの?」
……えっ?
距離が、急に近い。
「……キス、するの……」
ちょっと待って。
・・・ここで?
放課後の図書室。
周りには普通に勉強してる人がいて、ページをめくる音とか、椅子の軋みとか、全部がやけにリアルで。
「そんな場所で……みんなに見られながらキスするの。……ドキドキしない?」
しないわけ、ない。
「まずくない……?」
声、我ながら小さかった。
「大丈夫。見られてもキス実習かな?ってくらいで済むし」
……こんなとこでしてるやつ見たことないぞ。
「……だから。ほら、舌 出して?」
椅子がきしむ。
その音だけで、全部バレそうな気がして、身体が固まる。
唇が触れた瞬間、世界が静かになる。
いや、静かじゃない。
周りの音が全部、遠くなる。
「ちゅ」
短くて、軽い音なのに、頭の中が一気に白くなる。
反射的に身体をひいてしまう。
「……あ、ちょっと。動かないで。キス……しづらいから」
拗ねたみたいな声。
そんなの、反則だろ。
「……ねぇ、君もこういう場所でするの好きかなって思ったんだけど。私なんかとしてるの……みんなに見られるの……嫌?」
不安そうな美羽の顔。
返事、できなかった。
できなかったけど、多分、顔に全部出てた。
だって美羽、もう楽しそうに笑ってるし。
「……ううん、なんでもない。君の顔、見たら……聞くまでもなかったね。……じゃあ、続けよっか」
次は、さっきより深い。
息が、絡む。
舌が触れた感覚だけが、やけに鮮明で。
「……ねえ、君の舌の方が……長いでしょ? もっと絡めてきてよ」
ちょっと、やめてほしい。
そういうこと言うの。
「ちゅ……」
我慢とか、理性とか、そういう単語が頭から消えていく。
「こんな場所で~なんて言って……がっつくりゃん」
煽ってるの分かってるのに、離れられない。
「これ……絶対、誰かに見られてるよね」
言われた瞬間、背中がぞわっとした。
視線。
図書室のど真ん中。
「……ね? 見せつけちゃおっか」
無理だって言えばよかった。
でも、言えなかった。
「昨日…家でまたしちゃった」
え?
何を?
「君としたキス思い出しながら…」
いや、俺も夜思い出して……
それから……
「初めてのキス、気持ちよかったから我慢できなかった……君のせいだからね」
全く同じセリフ言いたいんだけど……
「……これ……いつも使っているお気に入りのおもちゃ」
ポケットから何か出てくる。
ピンクのおもちゃ。
「これ、あてていい?」
俺に許可、求めないで欲しい……
・・・
・・
・
「……こんなに早いの初めてかも……」
確かに昨日より早かった。
オモチャってすごい。
「やっぱ君とキスしながらだと全然違う…」
ぼそっと言われたその一言が、耳に残る。
「……あっ、ごめん。心配しなくても次は君のばん」
次もすっごく気になるけど、
でも今は、それよりもっとしたい事がある
「え……何? 君も使いたいの? 私に? 」
「……まぁいいけど」
「あっ、下着は……触っちゃダメだから」
「はい、これがリモコン。これで操作して――」
知りたい。
美羽がどんな顔するんだろうって。
「んっ!!!……いきなりそれ……MAX……まって……音、響いて」
音。
静かな図書室。
まわりに人、いる。
「こんな……強いの……無理……」
声、抑えてるのに、息が漏れる。
そのとき、気づいたらしい。
男子が、こっちを見てること。
「待って……ちょっと待って……男子が、さっきからこっち見てるの……」
懇願するみたいな声。
さっきまでの余裕が、嘘みたいに消えてる。
「私の事、絶対見てる……」
お願い、お願い、って。
止めてって。
バレちゃうって。
他の男子に顔見られたくない、って。
だから、キスして、って。
……ずるい。
もっと美羽の顔見たかった。
・・・
・・
・
「今までで……一番っ……良かった……」
このセリフ、最高すぎない?
「……何 、そのどや顔?」
不満そうに睨まれて、思わず目を逸らす。
「〝一番よかった~〝って言われて、調子にのってるの草」
図星すぎて、何も言えない。
「ちょっと分からせる必要あるみたいだね……」
嫌な予感しかしない。
「ねぇ……ここで出して」
言葉の意味を理解する前に、何かが跳ねた。




