トラック6-02 |放課後の教室でのキス(美羽目線)
「あのね――」
言葉を出した瞬間、
君がどんな顔するのか、怖くなった。
でも、逃げたくなかった。
「ひとつだけ、ちゃんと伝えたいことがあって」
君の顔を見る。
ちゃんと、目を見て聞いてくれてる。
それだけで、少しだけ救われる。
「……ごめん、まだ“恋”って気持ちなのか、自信がなくて」
言ってしまったあと、
胸の奥がじんわり痛くなる。
好きなのは、間違いない。
でも、“恋”って言い切ってしまうほど、私は強くないから。
君のことが好き
君とずっとキスしてたい
君以外とは、絶対したくない――
全部、本当。
嘘はひとつも混じってない。
でも。
「……お互い“勘違い”だったらって、ちょっとだけ……怖くなるんだ」
もし、これが恋じゃなかったら?
もし、目を覚ましたときに、
「あれ?」って思ってしまったら?
……私じゃなくて、君がそう思ったら?
そう考えるだけで、胸が締めつけられる。
「恋愛なんて……したことないし」
「自信だって……全然ない」
君に愛され続けるなんて、もっと自信ない
「でも……」
声が、少し小さくなる。
でも、ここで終わらせたくなかった。
恋人じゃなくてもいい
制度だから、でもいい
「これからも、そばにいてくれる?」
お願い、みたいな言葉。
拒否されたらどうしよう、って思いながら、
それでも、ちゃんと聞けた。
「もちろん」
即答だった。
迷いのない声。
一瞬、胸がいっぱいになって、
でもそれだけじゃ足りなくて。
「……ホント?」
自分が嫌になるくらい、弱い。
「ホント」
「こ~んなに自己評価最低の陰キャ女子だよ?」
「毎晩してるドスケベJKだよ?」
自分で言ってて情けない。
魅力なんて全然ない。
「いいよ」
「もう知ってる」
でも君は、
そのままでいいよ、って
ずっと言ってくれて。
キスするたびに、
胸がいっぱいになって、
「……こうやって君にキスされるだけですぐに勘違いしちゃう、
君のことが大、大、大しゅきな女の子……だよ?」
……キスで返事するの、ずるい。
「ばかぁ……好きぃ♡」
そんなの絶対好きになるじゃんかぁ……
・・・
・・
・
少し落ち着いてから、
自分でも苦笑しながら言った。
「今、私たち……
絶対バカで、歯止めきかなそうだね……」
だからこそ。
「ふたりだけの“キス実習のルール”、作ろっか」
「そうしよう」
その返事が、嬉しくて。
ひとつ目は――
お互い“恋人”とは名乗らないこと
君にいたずらっぽくキス。
唇が触れた瞬間、
もっと甘いキスをしたくなる自分に言い聞かせるみたいに。
「実習相手。あくまでね」
恋人じゃないのに、キスもするし、エッチなことだって。
ズルいって分かってる。
だって男の子だもん。したくなっちゃう、よね……?
私だって、そうだし……
ふたつ目は――
もし誰かを本気で好きになったら、
教えてほしい
想像してしまう。
君が、私じゃない誰かを見つめてる姿。
―― ヤだ
絶対にヤダ。
これが恋かどうか分からない、
そんなの全部、自分に自信がない言い訳。
最後のルール――
キス、1回するごとに、関係を1日延長する。
終わりを、少しずつ先延ばしにするルール。
もっと一緒にいたい。
でも自信がない。
傷つきたくない。
ホントに自分勝手で最低なルール。
「……いい?」
「いいよ」
でもね。
もし私に自信が持てたら、その時は…
「じゃあ……」
小さく、キス。
「……これで、明日も一緒だね。“実習パートナー”として」
恋人じゃない。
でも、終わらない。
キスの数だけ、
明日を増やしていく。
今は、それでいい。
それが、私たちの答えだった。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
本作は、声優さんの演技と音で物語が完成する
「音声作品」を元に制作したラノベになります。
そのため、物語の最後にあたるエピローグについては、
声で体験する時間を大切にしたく、
ラノベ版はいったん、ここで区切らせてください。
(声での体験は活動報告をご覧ください。)
エピローグについては、発売後に改めて掲載予定です。
ここまでの読んでくださったこと、心から感謝しています。
ナッツより




