トラック5-02 |放課後の教室でのキス(美羽目線)
放課後の廊下って、こんなに静かだったっけ。
今日で最後。
そう思うだけで、胸の奥がきゅっと縮む。
教室入るだけなのに、勇気がいるなんて。
ドアを開ける。
「お待たせ」
声、ちゃんと出た。
近くで見る君の顔色は、昨日よりずっといい。
「ごめんね、待たせちゃって。体調はもう平気なの?」
無理して来てたらどうしようって、ずっと気になってた。
「もう熱も下がったよ」
それを聞いた瞬間、肩の力が抜ける。
「そっか……よかった」
本当に、よかった。
それだけで、今日ここに来た意味があった気がする。
「でもありがと。ちゃんと会えて、よかった」
……言わなきゃいいのに。
「今日が最終日だから……」
“最終日”。
自分で言っておいて、胸が痛む。
「ね、せっかくの最後の実習だから……」
少しだけ、軽い声を作る。
「今日は一生おかずに使えそうなキス、しようよ」
冗談みたいに言わないと、泣きそうになるから。
「昨日は……みーちゃん暴走してたし……」
誤魔化す。
本当は、終わりたくないだけ。
「というわけで」
笑って。
「スカート、めくって?」
君の驚く顔。
それだけで、満たされる。
水着を見せる。
「どう?」
君が“可愛い”って言ってくれたやつ。
それが嬉しくて、今日も着てきた。
「誰もいない放課後の教室で、水着姿で……」
言葉にすると、背徳感が増す。
「絶対、忘れられない思い出になるでしょ」
……忘れたくない、の間違い。
「制服、脱がしてくれる?」
ちゃんと見てほしい。
「……君が“可愛い”って言ってくれたから、着てきたんだよ?」
衣擦れの音。
教室でこんなことしてる自分、おかしいのは分かってる。
でも、
「……どう?」
「……可愛いよ」
その一言で、胸が熱くなる。
「っ……♡」
ずるい。
また次も、言ってほしくなる。
赤くなってる顔、見られたくなくて抱き着く。
「ぎゅぅ~~♡」
心臓の音、すぐ分かる。
「君の心臓……すっごいドキドキしてるよ?」
からかうけど、
私も同じ。
「シャワー室の時も、めっちゃガン見してたよね?」
思い出して、少しだけ優越感。
「みーちゃんのおっぱい、好きすぎでしょ」
……嬉しい。
「いいよ? 好きなだけ見ても」
もっと見て。
「その代わり――君の、見せて」
私に興奮してるって、
教えて欲しい。
・・・
・・
・
「こんなとこでしちゃったら……もう二度と満足できなくなっちゃうかもね?」
いっぱい君をからかって
でも……笑いながらも、胸は苦しい。
「いっぱいイイ子、イイ子してあげる♡」
今日、キスだけはなぜか出来なくて……
「こらっ……仕返しするなっ……」
まだ、って言い聞かせる。
「こんなんじゃ、一生の思い出にならないんだから」
だって
「んちゅ」
これが、
最後のキスかもしれないから。
「……やだ……」
まだ離れたくない。
君の表情を見る。
「……なんで?」
そんな顔、しないで。
「キスやだって」
違う。
「違う……そうじゃないよ」
声が震える。
「好き……」
言った。
「君のこと……好きなの……」
キス。
何度も。
「終わりたく、ない……」
明日から友達なんて、無理。
「キスだけで…こんなに胸が苦しくなるなんて知らなかった」
今にも胸が張り裂けそうで、
涙が止まらない。
「……ぐすんっ……ひくっ……」
君は、
迷子の女の子みたいに泣いてる私を抱きしめて、
優しいキスをしてくれた。
ずるいよぉ…
こんなにキスされたら…
期待しちゃう……
勘違いしちゃう……
怖い。
勘違いだったら、って思うと怖い。
でも、
「ねぇ……そういうの、ずるい……バカ」
そのキスだけで、
答えだけは、ちゃんと伝わってきた。
※ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
二人の距離が、少しずつ変わっていく過程を描いてきました。
残りの話数も、静かに見届けてもらえたら嬉しいです。
「活動報告」もお時間ありましたらご覧ください。




