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トラック3-01 |シャワー室でのキス(主人公視点)

挿絵(By みてみん)



「ほら……入って」


そう言われて、足が一瞬止まった。

部活後の女子水泳部のシャワー室。

言葉にするとただそれだけなのに、空気が違う。

湿った匂いと、タイルに反射する白い光が、頭を変に冴えさせる。


無言で一歩踏み出すと、後ろでドアが閉まる音。

音がやけに重く聞こえた。



「……大丈夫。他の子は、いないよ」



そう言いながら、彼女は素足で歩く。

ペタ、ペタって、水気を残した床の音。



「シャワー室に誰も来ない時間、ちゃんと選んだから」



選んだ、って言い方がずるい。

準備されてた感じがして、期待してしまう。



「……じーっと見すぎじゃない?」



視線、ばれてた。

美羽の水着姿。

部活後で、少し乱れた髪。

考えてないつもりでも、目は正直だ。



「もしかして、私の水着姿でエッチなこと考えてる?」



冗談めいてるのに、

まっすぐこちらを見つめて、逃げ場がない。



「……かわいい、って思って……」



自分でも驚くくらい、素直に出た。

嘘じゃないし、誤魔化しでもない。



「……え?」



一瞬、間。



「可愛い、って……バカ」



目を逸らすのが分かる。

頬、少し赤い。



「ていうか、部活後で、化粧もしてないし……」



言い訳みたいに続く声が、

逆に可愛いとか思ってしまって、またダメだ。



「なのに、そんなふうに言われると……なんか、ちょっと、ずるい」



……反応可愛すぎ。

ずるいのは、美羽の方だと思う。



「……でも、ありがとう。ちょっと嬉しいかも」



その一言で、全部報われた気がしてしまう。

単純すぎる。


カーテンを閉める音。

一人用の空間で二人きり。

距離が急に近くなる。



「……かわいいなんて、今でも全然思ってないけど」



否定から入るの、彼女らしい。



「でも最近、なんか……ちょっとだけ気づくことが増えたかも」

「男子の目線…あ、今の見られてた、みたいな」

「前は全然気づかなかったのに、最近はわかるんだよね、不思議と」



俺が水泳部だったら、間違いなく俺も見てたと思う

それくらい美羽の水着姿はヤバい



「クスッ……君のおかげかもね」



……俺?



「だって……」



耳元が、近い。



「君が……私に、すっごく興奮してるの、知っちゃったからさ」



囁き。

顔、近い。



「なんか、自信っていうか……ちょっと、意識するようになっちゃったのかも」



頭、追いつかない。



「ほら、だって君のここ……」



言葉の続きがなくても、分かってしまうのが最悪だ。



「私の水着姿だけで、こんなに、なっちゃうんだもんね」



……言うな。

言うなって。



その直後。

ドアの開く音。



「……っひうっ」



息を飲む声。

誰か、入ってきた……?


近づく足音。



「あ……声、出さないで……」



隣のシャワー室で、足音が止まる。

カーテンが開く音。



「……隣のシャワー室、誰か入ってきた」

「同じ水泳部の部員かも」



声を抑えながら、焦った息。

一気に現実が戻ってくる。



「シャワーの音で誤魔化すから」



蛇口の音。

強めの水圧。



「お願い……静かにしててね……」



制服が完全に濡れそうだけど

……無理言うな、とは言えない。



『ねぇ、隣にいるのって美羽?』



壁越しの明るい声。



「……えっ? カナ……?」



必死に平静を装ってるのが、逆に分かる。



『うん、ちょっとお手洗いに行ってて』


「そ、そうなんだ」



短い間。



「カナ……もしかして今裸?」



なんで聞いたんだ。



『そうだけど~?』

『私、泳いだ後は全身ちゃんと洗わないと』

『気が済まない派なんだよね~』


「そっか」



……情報が多い。



「ねぇ……聞いた?」



耳元で、ひそひそ。



「隣で私の友達が裸でシャワー浴びてるんだって」



わざわざ言うな。



「カナって子。可愛くて男子にも結構人気あるよ?」



知ってる。

だから余計にやめてほしい。



『そーいえば美羽さー』


「えっ……? なに……?」


『最近また胸、大きくなったんじゃない?』


「そう……かな?」


『今いくつ?』


「……94の……F……カップ……」



数字、言わせるな。



『うわー、でっか!』

『男子たちの視線、最近すごいもん』


「別に……他の男子の人気なんて……どうでもいい……から……」



本音だと思う。



『あ、そーいやーキス実習ってさ、もうやったの?』


「……ううん、まだ」



小さく。



「……今日はまだ、だけどね」



囁き。



「ねぇ……キスしよ……?」



今じゃないとダメ?



「ちゅう♡」



……そんな事、言えるはずない。



「ちゅう♡、ちゅう♡」



だって、俺もずっとしたいって思ってたし。



『でもさー、もしやるとしても美羽、気をつけなよー』

『男なんてさ、みんなけだものなんだから』



胸に刺さる。



『本気にしちゃダメなんだよ?』


「……わかってるよ、そんなこと」



即答。



「ちゅう♡」



また、キス。



『なーら、いーけど~』



大丈夫、俺も分かってる。

でも……



「興奮するね?」

「バレたらアウトのこの状況でキスするの」



今はしてもいいよな?


・・・


・・



時間が、溶ける。


隣に友達がいるのに、

頭真っ白になるくらい、美羽とキスした。

お互い、息も荒くて……



『ねぇ!』


「ひうっ」


シャワーが止まる音。


『私もう出るねー』


「え? あ、うん」


『おさきー』



遠ざかる足音。

ドアの音。



「……ふぅ」



一気に力が抜ける。



「あっぶな……」



本当に、心臓に悪い。



「あーあ……水着……白いのどろどろ」



言わないで欲しい……




「これお母さんに洗濯してもらう時、絶対バレるだろうなー」



えっ



「……なんてウソ♡」

「自分で洗うに決まってるじゃん」



心臓に悪いウソやめて……



「それより……友達のすぐ隣でキスしながらするの……すっごく興奮したね……?」



否定できない。



「……また明日もしようね?」



もう頷くしかない。



「ホント君は素直なんだよなぁ」



……素直、ってポイント高いの?



「そういえば君の制服、めっちゃ濡れてるじゃん」



俺も今気づいた。



「いっそこのまま……君もシャワー浴びちゃう?」



最後に、悪戯っぽく。



「勿論、裸で」



美羽の顔がちょっと怖く感じたのは

きっと錯覚じゃないと思う

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