第3話:ドラゴンの確定申告は命がけ
タケルは派遣コーディネーターに連れられ、王都の外れへ向かった。
そこにそびえるのは巨大な洞窟。入口には文字が刻まれている。
──《ドラゴン税務調査課・臨時窓口》
「臨時ってレベルじゃねえ……!」
中へ入ると、金貨の山。宝石の山。
そして奥には巨大な赤いドラゴンが寝ていた。
「本日の担当、山田タケルでぇす……」
声が震える。
ドラゴンはゆっくりと目を開け、低い声で言った。
「……また派遣か」
「またって……他にもいたんですか?」
「前のやつは“控除の説明がややこしい”と言って泣いて帰った」
税金で泣く派遣が異世界にもいるらしい。
タケルは勇気を出して言った。
「ええと……昨年度の収入は?」
「金貨2万枚と、宝石袋17個だ」
「……なに収入の種類が多いですね」
「でも“事業所得扱い”でいいのか? それとも“配当”なのか……?」
ドラゴンが顎に手を当てて悩む。
異世界のドラゴンが税区分で困っている絵面がじわじわくる。
タケルは資料をめくる。
そこにはこう書いてあった。
《ドラゴン族の財宝は「持ち帰り不可の据え置き資産」として固定資産扱い》
「いや、固定資産!?」
「減価償却って必要なのか?」
「知らないですよ俺も!!」
タケルの叫びが洞窟に響く。
そんなやり取りをしていると、洞窟の入口から誰かが駆け込んできた。
リエラだ。
「タケルさん! 魔法庁から追加資料です!」
「助かった……!」
リエラは書類を渡しつつ、小声で言った。
「このドラゴン、去年“ふるさと納税”で問題起こしてます」
「いやそんな制度あるの異世界……」
ドラゴンが振り返る。
「そうだ、去年は“火山のふるさと納税”で溶岩50リットルを返礼にもらった」
「返礼おかしいだろ!!!」
タケルは叫びつつも、なんとか帳簿を整理していく。
そしてついに、申告書が完成した。
「よし……これでOKです!」
「本当か……? 間違っていたら、貴様ごと焼くが」
「命がけの電子申告やめてもらえます!!!」
しかし、ドラゴンは深く息を吐いた。
「……ありがとう、山田タケル。派遣でも、お前はよくやった」
タケルは胸が熱くなった。
転生して初めて、誰かにちゃんと感謝された気がした。
その瞬間——
洞窟の外が突然、光に包まれた。
派遣コーディネーターが走ってくる。
「やばいですタケル殿! 次の派遣先、決まりました!!」
「えっ今!?」
「“魔王軍の書類整理課”から大量の応援依頼が……!!」
ドラゴンが一言つぶやいた。
「……ブラックだぞ、そこは」
タケルの異世界派遣キャリア、次の地獄へ突入。
——つづく。




