第2話:異世界の派遣トラブルはスケールが違った
魔法庁・資料整理課の朝は早い。
タケルは巻物爆発の件で、昨日さっそく“注意書き文書”を10枚写さされるという地味なペナルティをくらった。
「異世界まで来て、注意書き手書き……」
派遣社員の悲しみは世界を超えるらしい。
今日の作業は「禁書庫のホコリ取り」。
普通の掃除機かと思いきや、魔法庁は違った。
「この《ダークホール・クリーナー》で吸ってください」
渡されたのは、どう見ても魔族が作ったような漆黒の筒。
「え、これ安全……?」
「大丈夫ですよ! 最近のは吸い込み口に“魂セーフティー”が付いてますから!」
最近のって何!?
タケルが恐る恐るスイッチを押すと——
ドォォォォォンッ!!!
黒い渦が咆哮し、ホコリだけでなく隣の棚の扉まで丸ごと吸った。
「ちょっ……暴走してんじゃん!」
「コツが必要なんですよ〜。慣れれば小石くらいしか吸いません」
小石しかって、それはそれで危ない。
そんな中、リエラ(エルフ派遣)が駆け込んできた。
「タケルさん! 大問題です!」
「また何かやらかしたのか俺……?」
「違います! “冒険者課”の派遣さんが、仕事中にダンジョンに置き去りにされたらしくて!」
「置き去り!? なんで?」
リエラは肩をすくめた。
「“派遣さんは自己責任”って……酷いですよね」
「ブラック過ぎない……?」
魔法庁は、表向きホワイトだが裏は超ブラックという、典型的な役所系ファンタジーだった。
そのとき、資料整理課の課長が現れる。
「山田タケル君!」
「はい!」
「君、異世界人だろう?」
「一応……そうです」
「いいね! ちょうど人手が欲しかったんだ。今日から“魔力ゼロでもできる軽作業”を頼みたい」
嫌な予感しかしない。
案の定、渡された仕事は——
《ドラゴン税務調査課》への応援。
仕事内容は“怒っているドラゴンをなだめながら確定申告の手伝い”。
「なんで俺が……!!」
課長は爽やかに言った。
「異世界人って、ドラゴンと意思疎通しやすいって聞いたことあるから!」
そんな都市伝説あるか!!
タケルはため息をついた。
転生しても、派遣社員は派遣社員。
今日もまた、異世界の派遣現場がタケルを飲み込んでいく。
——つづく。




