第1話:気づけばまた派遣社員ですか!?
山田タケル(32)。派遣歴10年。
Excelはそこそこ、会議では空気、昼休みはほぼスマホ。
そんなタケルがある日、残業帰りに段ボールに足を取られ、見事に転倒して気を失った。
──目を覚ますと、そこは豪華な天井。
「ここは……異世界?」
と思ったが、最初に聞こえてきたのは天使の声ではなく。
「山田タケル殿〜! 明日の出勤は9時でお願いします〜!」
出勤!? 転生なのに!?
タケルは思わず叫んだ。
「いや、俺、てっきり勇者とか賢者とかそういう……!」
「いえいえ、タケル殿の適性を鑑み、最もマッチした職種に転生させました。派遣社員です!」
胸を張るスーツ姿の天界コーディネーター。
説明によれば、異世界にも“派遣システム”があり、人材不足の村や王国に派遣社員が送られるらしい。
「異世界くらい、正社員にさせてくれよ……!」
しかしコーディネーターは爽やかに微笑むだけ。
そしてタケルが転送されたのは王都の「魔法庁・資料整理課」。
部署名からキラキラしているが、やることは地味だった。
「古い巻物を五十音順に並べておいてください」
「五十音!? ここ日本じゃねーのに!?」
異世界なのに棚には“ア”“イ”“ウ”の見出し。
理由を聞くと「その方がわかりやすい」と魔法庁の人が言った。
昼休み、同じ派遣仲間のエルフのリエラが言う。
「タケルさんって、異世界転生ですよね? すごいじゃないですか!」
「いや……派遣なんだけど……」
「私も三回転生して三回派遣ですよ? ある意味エリートです」
異世界の現実は厳しい。
そんな中、タケルが1本の巻物を開くと、光が溢れ出し、文字が浮かぶ。
──“これを読んだ者は、願いを一つだけ叶えられる”
タケルは震える声でつぶやいた。
「正社員……正社員に……!」
その瞬間、巻物が大爆発した。
煙の中、上司が叫ぶ。
「それ業務外の魔法書だぞ!!」
タケルの長い異世界派遣生活が始まった——。




