名前を捨てる…?
まもなく帝国に到着する頃…
俺はアルマンド大公様に宇宙船の居室に招かれた。向かいに座り、私に話があると彼も座った。
「本日はどの様なご要件で?」
「帝国において、英雄を名乗る場合には爵位が必要となる。そのために君には新たな姓を名乗ってもらい、帝国の英雄として生きてもらいたい。これは、陛下とも協議したうえでの判断だ。」
「英雄だなんて…。私は奴隷だった人間ですよ。」
「確かにそうだ。だが、長年に渡り停滞していた戦線を終結させたことは、とても大きな意味を持つ。あの戦線では、多くの帝国の将兵が命を落とした。実力のある者たちもな。だからこそ、帝国として功労者として君を遇さないわけにはいかない。」
「そうかも知れませんが、新たな姓ってなんですか?」
「君には貴族になってもらいたい。土地を持たぬ名誉貴族としてな。後見人は、私と陛下がなる。他の貴族どもが口出しできんように儂の権力の傘の下に入ってもらうことになる。その際に必要なのが、新たな姓というわけだ。」
「もし…新たな姓を得たとしたら、俺の名前は消えてしまうんですか…?」
「今後、君の本名は名乗れなくなる。それが帝国国内で生きていくということなのだ。だが、消えはしない。心に残すことまで強制はしない。」
『俺がここで…我慢すれば家族にだって再会できる。それ以上だって…』
「…わかりました。」