出会い
〜ギエール帝国side〜
儂らが王城の大広間にたどり着くとそこは
儂でも冷や汗が滝のように流れ出してくるほどの濃密な魔力で満たされた空間であった。
部下達もよく耐えている。
玉座に腰を下ろしていたのは、白銀の狼を想像させる存在であった…。
あれが…元々奴隷だった覚醒者か…。
下手に刺激すれば儂ら全員ここで殺されてもおかしくはない。
陛下でもあの存在には勝てまい。
ならば、友好的に彼を帝国貴族に招き入れてしまえばよい。
儂は派閥を作らん主義だっだが、あの男が来れば儂はこれまで以上に覇権を手に入れる事が出来るに違いない。
ならばここは…
「そなたらは、これから何も話すでない。あの存在とは儂が話す。何があってもそなたらは何も言うな。行動を移すな。良いな?」
「かしこまりました。」
儂はこの者と話せる距離まで何とか近づいた。どうもこの者は儂を殺す気はないようだ。
儂が話だそうとしたとき…
「アルマンド最高司令官…ですか?」
〜俺視点〜
誰が来たのかと思ったら、俺が所属していたギエール帝国東方面軍の最高司令官のアルマンド大公様だった。会ったことはなかったが、俺の部隊の司令官だった男が憧れの存在だとずっと話していたから間違いないだろう。
俺は、ギエール帝国の言葉が流暢に話せる事を想像した。
そして…
「アルマンド最高司令官…ですか?」
アルマンド大公様は一瞬、驚いたようだったが、直ぐに返答してきた。
「ああ。そのとおりだ。君は、奴隷部隊の生き残りと判断してもよいのか?」
もしかして…殺戮したことを咎めに来たのか?だが…ここで殺されるわけには行かない…。
俺は地球に戻って家族にもう一度…
「…私を消しに来たのですか?」
だが彼は焦ったように
「それは勘違いだ。あくまでも定期連絡が途絶えたから確認しに来ただけだ。」
「では、私の行為は咎めないと?」
「軍法会議ものではあるが…」
「が…?」
「もし…君がこの国で築いた死体の山を消し去ることができるなら、なかったことにはできる。そうすれば、君を敵国を滅亡に導いた英雄にすることも…」
なんだ、そんなことか。
俺は想像した。これまで俺が殺してきたやつがすべて灰燼に帰し、彼らが所持していた魔力は全て俺のものとなる。
すると、王国中の死体と血痕がきれいさっぱり消え去るのと同時に俺は体中に力が溢れ出すのを感じた。
「これで…よろしいですか?」
「まさか…そこにいて王国中に倒れていた死体を全て回収したのか?それも魔力をすべてその身に宿したというのか?」
「視える退ですか?」
「私に魔力の痕跡をたどることができる。今、この国中から君の元へ魔力の本流が大量に見えた」
「流石ですね。」
本当のことだけど、少し厨二病っぽく言ってみようかな。
「私は一度訪れた場所には、マーキング着けることができるんです。つまり、私はこの地にいながら王国中で何が起こったとしても対処できる。これで理解頂けましたか?」