ギエール帝国から
また…目が覚めてしまった。
手はもとに戻っていた。
体は狼の毛皮を身に纏うような姿をしている。耳は別に人間と同じのようだ。尻尾もあるわけではないようだ。
俺は…ベルジーナ国王が座っていた場所に想像して同じ様な椅子を用意した。
俺の能力はなんて便利なのだろうか。思い描いたことがすべて現実に起きる。
俺は正直素っ裸だったので、魔法使いが着ているようなローブを真っ白に染め、ラインを黄金にした豪華なモノを着込み、座った。
俺が落ち着いたとき…
この都市の近くにとても大きな力を持った存在が近づいてきた。
ここは…俺の居場所だ。
誰にも渡しはしない。
俺はその存在に対して自分を主張するように
弱いやつを殺すことのできる殺意を向けた。
〜ギエール帝国軍side〜
「なんなんだ…この地獄のような光景は…?」
儂は、ギエール帝国東方面最高司令官を務めている帝国でも四家しかない大公を名乗っているアルマンド大公である。
ジゼル男爵が率いる奴隷部隊と連絡が途絶えてから1週間が経過したことで、強力な魔法を行使できる魔法師達を動員して、1個師団を率いてここまで来た。
だが、そこで見たものは目を反らしたくなるほどの死体の山であった。兵どころか、民間人にも問わず全員皆殺しにされている。
まぁ、この国の民間人は戦闘員でもあるので、殺したところで帝国法では罪には問われないが…それでも…これは。
それも、魔法は使わず明らかに殴りつけられ、食い千切られて殺されている。
つまり、これは誰かによってなされたということになる。
男爵の死体は、見つけた。誰かは知らないが、他の奴隷たちとともに土に埋められていた。奴隷部隊の者たちの墓も確認したが、男爵から提出されていた資料を確認すると…1人足りない。
つまり、その残された一人がここまでの惨状を引き起こしたということだ。
つまり…
「覚醒したか…」
だが、どうやって?
奴隷のそれも魔法に関して全くの知識を持たない奴らがどうやって?あの星には魔法の知識すらなかったはずだ。
死体を辿って儂達は、ベルジーナ王国の王都に辿り着いた。ここも同じように殺戮されているのか…?
儂らが王都に入ろうとしたとき…
王城からとてつもなく濃く、強大な魔力を込めた広範囲魔法『デス・アイ』が発せられた。
儂を含め、多くのものが対抗魔法を発動したが、1個師団のうち、生き残ったものは数えられるだけであった。
儂も気を強く持たねば魂を持っていかれる程であった…
敵国の王城にいるのは、常軌を逸した化け物だというのか?奴隷だったものがそれほどの力を手に入れたというのか…
「アルマンド最高司令!?ご無事ですか?」
「あぁ。だが、そなたらも気を強くもて、これから儂らが相対すはただの奴隷ではない。一国を滅ぼしうる戦力を手に入れてしまった覚醒者だ。」
「畏まりました。」
「覚悟は良いな? 参るぞ。」