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数百年前、突如として人間世界に侵攻してきた魔族。人間側の連合戦力で全面戦争を行ったが引き分けに終わり、その後数百年いまだ均衡が保たれていた。


しかし、これから数年にかけて、この関係は大きく変化する。そして、その序章は既に始まっている。


魔族領 グリュードラ

数百年前に魔族が人間から奪い取った領土。広さは、この全世界の10分の1程度だが、高い魔力濃度で人間が近づくことができずにいた。


「これはなんの真似だ?ドナー」

1人の男を囲むように、数百人の騎士が剣を向けていた。

「上からの命令だ。お前を殺せとな」


「殺される覚えはないんだがな」

男がそう言うと、ドナーは少し笑ったような顔で話し始めた。


「お前は強すぎるんだ。セントエリセルト。歴代魔族で1番多くの人間を殺し、その中には人間側の英雄も含まれている。...素晴らしい成果だ」


(なるほど)

俺は心の中で納得した。

「つまり、お前たちは怖くなったわけだ。俺という存在が」


「悔しいがそういう事だ。今のお前を止められる魔族がこの魔族領に何人いることやら。そう考えた上からの命令だ」


「都合の良い話だな。散々魔族の英雄だの持ち上げて、使い終わったら処分って。だが...お前たち程度で俺を殺せると思っているのか?」


「何言っ...」

僅か1秒にも満たない時間。本人からすれば一瞬にしか感じない時間の間に、立っている騎士は半分になっていた。

「たしかにこれは...異常だ。私が目で追うことすら出来ないとは」



「分かったなら諦めた方がいい。俺は今すぐにお前たちを殺せる」

これは単なる脅しではない。この考えている1秒の間にもドナーを除いた騎士ならば即死させられる。


「もちろん、最初から正々堂々君と戦おうなんて思ってないさ。私含め、ここにいる騎士は囮だ」


(まさか)

その言葉を聞いて何かに気づいたが、既に遅かった。身体は十字架に架けられていた。


「集団儀式魔法【王殺しの十字架(ヴェル・テミス)】。さすがのお前も、数キロ離れた場所で儀式魔法を発動させていたのは気づかなかっただろうな」

ドナーはこれ以上ない喜びに満ちた顔をしている。


「たしかに、儀式魔法を使うとは思っていなかった。騎士を囮にして正面対決をすると見せかけ、本明は魔法で俺を拘束すること。考えたもんだ」

これは、冗談抜きでドナーが一歩上だった。さすがに、儀式魔法を自力で解くには時間も多くの魔力も必要になる。


「これ以上お喋りするのも危険だな。既に拘束が外れかけている」

普通、この魔法は拘束された瞬間から大量の魔力を吸収し対象に大量の身体能力低下の魔法を付与する。だが、それを食いながら拘束を解く。ドナーは、この化け物を前に恐れていた。


「【切断魔法 ソリューアス】」

ドナーが魔法を唱え、化け物の首を切断する瞬間。男が浮かべた笑みの意味を理解するのは当分後になってからの話である。


「帰るぞ。早急に幹部と7大天魔に報告する」

首が落ちた事を確認すると、一行は引き上げていった。

この日、魔族領グリュードラでは大きな変化があった。彼の存在を知る者達は、人それぞれに安堵、悲しみ、愛、様々な感情が湧き上がった。

彼の死が、これからの世界にとてつもない変化と混乱を巻き起こす事を、まだ誰も予想すらしてはいなかった。



2ヶ月後

「【魂源身体構築魔法 ファルフレイト】」

巨大な魔法陣からは、1人の男が現れた。


(まさか、儀式魔法まで使うとはな。さすがに驚いた)

魂源身体構築魔法。魂を身体と分離し魔法陣に保存、大量の魔力と有機物を用いて身体を新たに構築し、保存した魂を取り込ませる。まさに大魔法。

「事前に魔法をストックしておいてよかった。あの場で1からこの魔法の魔法陣と術式を構築するのは不可能だった」


さて、恐らくグリュードラで俺は死んだことになっているんだろう。誰が殺害を命じたか。俺の殺害の命令は、俺の耳には届かなかった。これでも、7大天魔と同じ地位の俺が知らなかったとなれば、命じたのは他の7大天魔か....もしくは魔王。

このまま魔族領に留まっても、見つかるのは時間の問題か。いくら身体を再構築して魔力量が半分になったと言え、それなりに俺と面識があった奴らならばバレる可能性は高い。


「行くとすれば....人間領」

幸い、俺は前線には出ていたが地位的にはただの一般兵と同じ。身元がバレることはまず無い。

さて、決まれば長居は無用。向かうとするか。



最高戦力の魔族が人間の街に向かう。これが、時代の転換点である。



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