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マノゼノ大戦  作者: シュート
第2章:初めての任務
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第1話:一日の始まりは会議から

 雷電は携帯のアラームで目を覚ます。寝起きのままアラームを切ると同時に携帯のロック画面が映し出される。

 画面に映っているのは一人の女性の写真だった。黒髪のセミロングと青い瞳。そして桃色のカチューシャをつけて笑っている。


 彼女の名前はなんだろうか。雷電は必死に思い出そうとした。しかし何かに阻まれるような感覚が阻害してくる。思い出そうとすればするほど阻むものが硬くなり、時間だけが流れていく。


「ふぁぁ……」


 思考を遮るように気だるそうな欠伸が聞こえてくる。どうやら鍵本が目を覚ましたようだ。


「鍵本さん。おはようございます」


「おはよう。幻夢、かなり爆睡してたな」


 雷電の挨拶に彼はにこやかに返す。そこまでよく見ていなかったが彼の顔はかなり良かった。ここまで醤油顔の美男という言葉が似合う人は稀有(けう)だろう。右目を隠れている髪の毛がかなり勿体なく感じる。

 鍵本は近くにあった窓を開くと朝の風が部屋に入ってくる。爽やかながらも鳥肌が立つ程冷たく、雷電は思わず腕を擦った。


「すみません。窓を閉めてくれませんか? 」


「寒かったか。済まないな」


 鍵本はそういうと窓を閉める。それとほぼ同時にチャイムが聞こえてきた。雷電はチャイムの音を頭の中で反芻(はんすう)する。


「幻夢! おい、幻夢! 」


「な、なんでしょうか」


 鍵本の声に我に返った。夢から覚めた様に彼を見つめる。


「聞いてなかったのか? 会議室にすぐに集合って秘田さんが言ってたぞ」


 雷電に焦りと緊張が急に襲いかかる。聞きそびれた事より現実に引き戻されたことによる衝撃だろうか。そうだとしてもその答え合わせをする事は出来ない。

 鍵本の後を追うように雷電はブレザーを羽織る。そして扉を開けて部屋を出ていった。


「遅い! 」


 集合場所である会議室に着くと秘田からの怒号が飛んできた。


「申し訳ございませんでした! 」


「俺からも申し訳ない」


 鍵本も頭を下げた。重苦しい雰囲気に胸が詰まりそうになる。だが頭を下げる以外に許しを乞う方法は思いつかなかった。


「次回から気をつけて。さて、会議を始めるわ」


 雷電は頭を上げると近くにあった椅子に座った。


「さて、あなた達にはこれからエラー達を倒してもらうわ。配属先はホワイトボードに書いてあるからあとで見てちょうだい」


 秘田はそう言うとホワイトボードを軽く叩く。


「あと兵器の解析も少し進んだわ。この兵器はシステムの修復プログラムによって作られている。そしてあなた達の敵、エラーはシステムのバグによって生まれてるわ」


 そんなこと分かりきっている。雷電はどこか腹立たしくなっていた。


「つまりエラーを倒せるのはあたし達しか居ないということか? 」


「そうよ。あなた達しかいないわ。あなた達が休んでいる間に自衛隊を派遣したけど……全滅だったわ」


「そんな……」


 雷電は絶句する。しかしそれをよそに秘田はホワイトボードを見て口を開いた。


「さてと、今日は配属された場所で動いてもらう。各自確認するように」


 ホワイトボードには名前と場所が箇条書きされていた。雷電は自分の名前を探す。意外にも見つけるのに時間がかかった。だが見つけた時、雷電は思わずあっと声を上げる。


 自分の配属される場所はズュートタワー前だった。溢れ出てくる黒い何か、エラーの鳴き声、鼻を突くような腐敗臭。ふと昨日起きたことが蘇ってくる。


「おい、おい、幻夢」


 御剣の声で雷電は我に返った。妄想にすぐ入ってしまうのは自分の悪い癖だろうか。雷電は自分に嫌気が差しながら御剣の方を向く。


「御剣さん。なんでしょうか? 」


「幻夢は確かズュートタワー前に配属だよな。オレもそこの配属だから一緒に頑張ろうな」


「こちらこそ一緒に頑張りましょう」


 御剣は笑顔を見せる。こんな笑顔はあっただろうか。雷電には眩しく見えるほどの良い笑顔だった。

 一息ついてから幻夢は周囲を見回す。それぞれ配属される場所で分かれて何か話し合っていた。朝火に目を移すと上地と一緒だったらしく談笑し合っている。

 

「御剣鉄秤、雷電幻夢。御剣鉄秤は『リーダー』として、雷電幻夢は『先鋒』として南都の前線であるズュートタワーに向かってもらうわ」


 秘田は話を続ける。


「他の人達よりもハードになるがあなた達を期待してのことよ。頑張ってちょうだい」


 今から戦場へ行く。雷電は気が引き締まるような思いに囚われた。こうなっているのは恐怖と緊張からかもしれない。だが戦場ではそんな言い訳は通用しないのだ。

 雷電は覚悟を決めるとドアノブに手をかけた。


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