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マノゼノ大戦  作者: シュート
第1章:プレリュード
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第5話:同期。そして……

 しばらくの間無言で暗い廊下を歩き続けていた。夜目に完全に慣れて横にいた朝火の表情が見える。先程の会話の後、彼女の表情は硬くなっていた。


 少し話をまとめてみよう。南都の生命線であるO(オー)システム。あることが原因でシステムの制御ができなくなり、暴走した。話からすれば暴走の産物がエラーなのだろう。それが増殖したことにより今の状態になっている。この状態を打破するために雷電達がかつてのO(オー)システムによって選ばれたということなのだろう。


 ここから導き出されることは明白だった。これからはエラーを討伐しながら原因を探さなければならない。

 ふと雷電は親の安否が気になってくる。今の状況では相手もこちらを心配しているだろう。電話したい思いに駆られる。だが形容しがたい何かがそれを阻害していた。


「この部屋よ」


 天本は目の前にあるドアを開けると中に入った。雷電と朝火もそれに続いて部屋の中に入る。

 まず目に入ったのは部屋中に張り巡らされているコードだった。それと同時に様々な機械が所狭しと置かれている。


「こ、これは……? 」


 ほぼ足の踏み場もなく雷電はただ立ち止まることしか出来なかった。ゴミならばまだ踏んでも良さそうだが相手はコードだ。下手に踏んだら損傷してしまう恐れがあった。


「あっ、ごめんなさい。この部屋じゃなかったわ」


 天本は困惑している2人に気がつく。そして足場を渡り歩きながら部屋のドアを閉めた。


「気を取り直してこの部屋よ」


 天本が慌てながらも横にあるドアを開ける。その部屋にはシャワーユニットのような機械が四つ並んでいた。先程の部屋は機械を管理する部屋だろうか。機械がコードを通して先程の部屋に繋がっていた。


「さてと、今から兵器と()()するわ。空いてるところの機械に入って」


 その声と共に天本は部屋を出ていった。彼女のドアを閉める音とともに静寂が訪れる。


「幻夢、あたし達何されるんだろな 」


 しばらくして朝火が声をかけてくる。夢を見ただけで言われるがままに促されていた。そして今も訳の分からない機械にぶち込まれそうになっている。


 なぜ僕がこんな目に遭わなければならないんだ。

雷電は怒りと困惑で頭がおかしくなりそうだった。感情を抑えるために震える息を吐く。これも全て自分が断れないせいだと思うと腹が立っていた。


 そう思った時、突然時が止まったような感覚を覚える。しかし自分の体は勝手に装置の中へ入ろうとしていた。機械から漂う甘い匂いが鼻に突く。装置のドアを閉めた途端雷電は意識を失った。



 ゆっくりと押し流されるような感覚。もう夢と現の境界線を超えているのだろう。ふわふわしたような感覚は襲ってこない。しばらくすると視界に夢に出てきた少年がぼんやりと見えてくる。まだこちらに気づいておらず、ぼんやりと上を見上げていた。


「おーい!!! 」


 雷電は思わず叫んだ。相手の名前は知らない。だが声をかければ反応してくれると思ったのだ。


「幻夢くん、幻夢くんかい? 」


 少年はこちらの方を向くとにこやかに笑う。


「幻夢くん、ボクと一緒に戦ってくれるんだね」


 上目遣いで少年はこちらを見つめてくる。口ぶりからしてもう決定事項のようだ。どうして断れなかったのだろうか。あの時の自分に嫌気が差す。


「幻夢くん、どうしたの? 」


 こちらの表情に気がついたのだろう。相手の表情が不安げになる。


「いや、なんでもないですよ」


「そうなんだ。でもキミの顔は何かあるらしいけどね。もしかしてまだ自分なんだと思っているのかな」


 少年はいたずらっぽく笑うと話を続けた。


「キミは自分自身を変えたいと思ってないかい? 」


 少年の言葉に雷電はギクリとした。まさか心を見透かされてしまっているのではないか。そう思うくらいの衝撃だった。


「図星みたいだね。無限の可能性を持っていて自分自身を変えたい欲求がある。ボクはその要素でキミを選んだんだよ」


「無限の可能性? 」


 雷電は首を傾げた。


「キミ、大学生なんだよね。やる気があれば何者でもなれる。それが無限の可能性だよ」


「それで君がどうして……? 」


「キミの要素がボクの因子と反応したところかな……」


 少年は考え込むような仕草をする。それもつかの間、何か思い出したのかハッとしてこちらを向く。


「あっ、ボクの名前を言い忘れてたね。ボクの名前はラミエル。O(オー)システムを修復するプログラムってところかな」


 少年はそういうとニコリと笑い、手を差し伸べた。相手の華奢(きゃしゃ)な手に幻夢は思わずドギマギする。


「まぁ……すぐ会えるけど。幻夢くん、これからもよろしくね」


 雷電はラミエルの手を握る。それと同時に自分がやらなければという思いが満ちていく。


「えっ……こ、こちらこそよろしくお願いします」


 握手をしてにこりと笑うとラミエルは抱きつく。その時、匂いが彼からふんわりと漂ってくる。雷電は匂いを嗅ぐ。それはあの時と同じ甘い匂いだった。

 

 

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