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マノゼノ大戦  作者: シュート
第1章:プレリュード
3/23

第3話:日常が終わる日

 どうしたらいいんだ。

雷電は空間の歪みを見つめながら絶望していた。逃げようとしても身動きすることも出来ない。しばらくして自分がようやく怯えていることに気がついた。


「幻夢。おい、幻夢」


 朝火の声でふと我に返る。だが彼女は歪みに気づいていないようだ。雷電は何かが来ると声をあげる。しかしその声は何者かによってかき消されてしまった。


「ギャアアアアアア!? 」


 不快な声とともに腐敗臭が鼻を突く。もしやと思い前を向いた。すると獲物を見つけたような目をしたエラーと目が合う。このままでは殺されると思い、雷電は背を向けて逃げようとした。しかし場の空気が濃密で走っても数メートルしか稼げない。


「な、なんだこれは! 」


 朝火は銃を構えながら驚きの声を上げる。だがもう目の前にはエラーが目を煌々とさせて雷電を追っていた。あの時は夢だったが今は違う。こんな化け物に殺されたくない。そんな思いを胸に雷電は遅々とした逃走を繰り広げていた。


「ギャアアアアアア! 」


 銃声が辺りに響く。しばらくしてエラーの断末魔が聞こえた。雷電は嫌な予感がしながらも朝火の方を向く。そこには銃を構えたまま震えている彼女の姿があった。


「朝……火……さん? 」


 目の前にいるエラーは腰あたりを貫かれていた。しかし腐敗臭と共に空いていた穴が修復されていく。そして何事もなく朝火の方に近づきはじめる。

 雷電は彼女の方に走っていく。せめて二人で逃げ切ろうと思っていたのだ。しかしどう考えてもエラーの鉤爪の振り下ろしの方が早い。もう万事休すかと諦めかけていた。



 その刹那、赤い光が上空から落ちてくる。そして光はエラーを捕捉すると光のような速さでエラーを貫いた。


「何……これ……何が起きてるのか? 」


 朝火は顔が引きつったような表情で赤い光を見つめている。すると光は真紅の双剣へと姿を変え、地面へと突き刺さった。



 朝火は息が止まりそうになる。彼女も自分と同じ境遇だと思ってもいなかったのだ。朝火は突き刺さっている双剣を握った。その時、目を背ける程の光が襲ってくる。


「まさかこれほどの被害になるとは」


 聞き慣れない声と共に視界が段々広がっていく。詩音の目線には赤い髪をした女性がいた。その女性は夢の中で会った少年と同じ羽が生えている。もしやこの女性が少年が言っていた上司だろうか。雷電は怪訝(けげん)そうに二人を見つめた。


「これが抑えられなかった結末か? 」


「そうだ。私とラミエルで食い止めようとした。しかし……もう撤退するしかなかったんだ」


 この女性は何者だろうか。それと同時に夢で会った少年に名前を訊ねていないことに気づいた。雷電は女性に目を移そうとした時、ふと目が合う。透き通るような金色の瞳、整った顔立ち。まるで人間とは思えないような美しさに思わず息を呑んだ。


「ところで君の名前は? 」


「彼か? 彼はあたしの後輩の雷電幻夢だ。」


 女性は笑顔を浮かべながら雷電に訊ねる。しかしこちらが言う前に朝火に遮られてしまった。


「なるほど。しかし困ったな……ここに2人も()()()()()がいるとは思わなかった」


「ちょっと待ってください! あなたは誰なんですか」


 頭が混乱しそうだった。雷電は状況を飲み込みながら頭を整理する。しかしその思考は空中分解していき、段々まとまらなくなっていく。


「我が名はウリエル。朝火詩音を選んだ者だ」


 女性はそう言い放つ。それと同時にどこかから水色の光がこちらへ飛んでくる。

 雷電は思わず目を背けようとした。しかし視界を奪うほど強くない。しばらくして光が飛んできた方を向く。そこには夢に出てきた少年が立っていた。


「ラミエル、ありがとう。最後まで粘ってくれたおかげで助かった」


 ウリエルは少年に握手を求める。しかし少年は頬を膨らませ、不満そうな表情を浮かべていた。


「本当にそうだよ。まぁ、ウリエルさんがいたからボクも助かったんだけどね」


「あっ、ごめん。二人をある場所へ転送させるのを忘れてたよ。今からやるから待ってて」


 少年はこちらの視線に気がついたのかハッとした表情を浮かべる。そして手のひらをこちらに向けると何か唱え始めた。


「ちょっと待ってくれ、どこに――」


 彼女の言葉を遮るかのように突然体が引き上がるような感覚が襲う。気がつけば今まで居た場所とは違う場所に降り立っていた。引き上がる感覚が収まり、雷電は一息つく。


「ここはどこなんだ? 」


 朝火がそう言うと少年は答えた。


「第二南都大学前だよ。ここでみんなが待ってる」


 彼はそう言い終わると近くにいたウリエルと共に姿を変える。雷電の目の前にあったのは夢で見た槍だった。

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