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マノゼノ大戦  作者: シュート
4章:勝利の方程式
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第3話:勝利の方程式

 雷電は耳を疑う。正直突然何を言い出すんだと思った。だが活路を開くには彼に命を預けるしか方法がないように感じる。


「はい、御剣さんにこの命を預けます」


 雷電は覚悟を決めたように言う。それを試すかのように巨大な針鼠の化け物が針を数本飛ばしてくる。しかしその針はエラー達に刺さりこちらには一本も飛んでこない。


「ありがとう。まず幻夢は飛行できるか? 」


 彼の言葉に疑問符が浮かぶ。飛行できること自体が初耳だった。雷電がいいえと言うと彼はため息をつく。


「まぁ……そりゃそうか。幻夢は東方と交戦してから一度も前線に行ってなかったから教わってないよな」


 御剣はそう言った後に飛行の仕方を説明し始める。それを聞いてから雷電は試しにやってみると体が宙を浮いた。空中を自由に動けることに思わず驚きながらエラー達が届かなくなるまで飛んでいく。

 気がつけば横にいた少女も浮き上がっている。そして何事もなく安全な場所へと移動していた。


「さてと、これはかなり不利な相手だ。あの針じゃ避雷針のように雷を無効化されそうだぜ」


「じゃあどうしたら……」


「幻夢、相手の持っている針を全部切り落とすことは出来るか? 」


「な、なに無茶を言ってるんですか。そんなの――」


 雷電は飛んでくる針を避けながら呆れていた。あまりにも馬鹿馬鹿しすぎて覚悟を決めた自分が馬鹿だったのではないかと思えてくる。


「幻夢、もう少し武器を信用したらどうなんだ」


 御剣の声が心に深く突き刺さる。


「これから幻夢を含めアークはそれに頼る事になるはずだ。正直信じるかどうかで結果は変わっていくと思うぜ。でもこれは幻夢の決断だ。オレはお前の決断に任せるぜ」


 確かに彼の言う通りかもしれない。だが雷電はどこが腑に落ちなかった。この兵器を信じていくほど自分が自分でなくなる気がしてならなかったのだ。


「ラミエル、今から針を全部切り落とすことは出来るか? 」


「うん、できるよ。ボクの力を侮って欲しくないね! 」


 ラミエルの声と共に雷電は急降下する。そして針を一本切り落とす。しかし針は直ぐに生えてくると何事もなく雷電に襲いかかってきた。


「くっ……! 」


 脚部が砕けるような音が聞こえる。幸いバトルレッグが守っていたが平衡感覚を失う様な衝撃が襲う。


「あいたたた……幻夢くん、キミに負荷がかかるけど本気を出してもいいかな? 」


「ラ、ラミエル。負荷はさすがに――」


「幻夢くん、ごめん。さすがに本気を出さないとキミの命が危ないんだ」


 ラミエルはこちらの言葉を遮った。それと同時に雷電の体が青白く光り始める。


「さてと、行くよ! 」


「ちょ、ちょっと待ってください」


 雷電はラミエルを静止した。


「ごめん、説明は後にするよ。今は……アークゼノを倒さないとね」


「まさか、君はアークゼノのことを――」


 雷電の言葉を紡ごうとした。その時自分自身があやふやになっていく。これが我を失う時なのだろうか。雷電は自分の意識を手放しながら冷静に分析している自分に驚いていた。


「幻夢!? おい! 幻夢! 」


 御剣の声が微かに聞こえてくる。雷電はその声に導かれるように我を取り戻す。視界には傷を深く負った大男がこちらをにらんでいた。姿からおそらくアークゼノの男だろうか。微かに息があるがかなりの致命症を負っているように見える。


「ラミエル……ど、どういうことなんだ」


 雷電は震える声で訊ねる。


「ただボクは本気を出しただけだよ。その代わり……幻夢くん、ちょっとあのアークゼノに近づいてみてよ」


 雷電はラミエルの言った通り近づこうとする。しかし体がずしりと重く一歩も歩くことが出来ない。


「ごめん。今まで大体光速の半分くらいで体を動かしていたから負荷がかかっても仕方ないね」


「光速の半分……!? 」


 ラミエルの力があるこそかもしれない。だがそれほどの速さで動いていた事など信じられなかった。


「ぐっ……マノ世界の人間ごときに……」


 男の息も絶え絶えな声が聞こえてくる。


「だが残念だ……この俺、鳶島風太(とびしま ふうた)に……トドメを刺さなかった……だけでなく女も……救えないなんてな」


 鳶島は勝ち誇った様な表情を浮かべている。彼の目の前には宙を浮いていたはずの女性がいた。


「くっ……ただの女をさらうだけで……ここまで被害を食らうとは……」


「ちょっと待っ――」


 雷電がそう言いかけた時、鳶島の姿が女性と共に消える。それと同時に連絡デパイスから御剣の声が聞こえた。


「幻夢、幻夢、大丈夫か?」


「はい、大丈夫です。でも……本当にこれでよかったんでしょうか」


 雷電は罪悪感に押し潰されながらも御剣に訊ねる。そう言えば彼に女性が近くにいたことを伝え忘れていた。だがその状況を伝えた方がいいのか頭を抱える。


「何言ってんだ。良かったに決まってるぜ」


「そう……ですか」


 半ば予想出来た回答にため息をつく。心の中には罪悪感が広がり、渦巻いていた。

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