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マノゼノ大戦  作者: シュート
第3章:美しき傲慢の魔女
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第7話:自分の存在意義

「今回の任務だがどうやら秘田さんは人を選んで任務に行かせたみたいだぜ」


「人を選んでいたということはどういうこと?」


 雅楽の瞳が鋭くなった。


「好戦的な修復プログラムに選ばれた人だけを任務に行かせたってことだ」


 雷電は御剣の言葉を聞いて愕然とした。確かに自分は好戦的な修復プログラムに選ばれたかもしれない。だがそれに対しての大きな違和感が二つあった。




「なら……何故朝火さんではなく鍵本さんなのでしょうか?そして好戦的な修復プログラムに選ばれた人を任務に行かせた理由は?」


 雷電は御剣に疑問を投げかけた。しかし喋った拍子に火傷がヒリヒリと痛み、思ったように声が出ない。


「まず先に言った質問から答えるぜ。まず朝火さんは別の任務へ行ってたんだ。特別哨戒任務とくべつしょうかいにんむってやつだぜ」


 御剣は話を続ける。


「次に白羽の矢が立ったのは雅楽さんだったんだがエラーによるけが人の治療に追われているんだ。けが人も日に日に増えてるし戦闘に行かせるのは酷だという判断らしい」


 御剣の言葉を聞いて雷電は胸が傷んだ。

エラーの発生により怪我人が日に日に増えている事は雷電も知っていた。


 アーク達がいる第二南都大学には病院まで完備されている。雷電も何度かその病院の前を通ることがあり、病院の通路に怪我人が寝かせられていたところを見たことがあった。


「なるほど。それで消去法で残った鍵本さんに白羽の矢が立ったんですね。御剣はリーダーだし上地さんと白百合さんは好戦的なアークではないから除外されたということでしょうか」


 雷電の言葉に御剣は頷いた。そう考えると確かに妥当な選択だと思える。だが朝火が赴いた特別哨戒任務の内容はなんだったのだろうか。その疑問を遮るかのように御剣がポツリと言った。




「あと二つ目の質問なんだが今回の事件は何が原因だったかはっきり分からなかったんだ。ようやくオレがインカム通してアークゼノだとわかったぐらいだぜ」


 雷電としては謎の人体発火はアークゼノ以外ありえないと考えていた。しかし御剣と秘田はほかの可能性も考えていたのだろう。


「まぁ今回の任務に関してはオレは特に何も言えなかったんだよな。あれは……相当無茶だったと今になって思うぜ」


 御剣は話を続ける。


「しかし全員で行ったら全滅の危機もあるし難しいところなんだ。結局オレはどうしたら良かったんだろうな」


 雷電は頭を抱える御剣を見ながら罪悪感に襲われていた。自分がこんな事にならなければ彼が頭を抱えずに済んだのだ。


「まぁそれはともかく……雷電さんも大事に至ってなくて良かった。それだけで任務は成功よ」


「ああ……そう…………だな」


 そう言っても御剣の顔はかなり曇っていた。





「二人ともごめんなさい」


 雷電はただ二人に謝ることしか出来なかった。


「いや、幻夢くんは何も悪くないわ。私はただ医者という職業を全うしてるだけよ」


 確かに医者は病気の治療や診察を行う職業である。エリートながらも人の命を救うみんなの憧れのような存在だ。


「医者ってエリートでみんなが憧れる職業ですよね。そして表に立って――」


 そう言いかけた時、雅楽はこちらの言葉を遮った。


「医者ってのは結構裏方の職業なのよ。結局医者の目的は苦しんでいる人を回復させる最善のサポートをすることだから」


 彼女は髪の毛を指で揺らしながら話を続けた。


「でもこの知識(ノーレッジ)がその役目を奪おうとしてる。私は自分の存在意義を失いたくない。でもいつか失うかもしれないわ。だからこそ……」


 雅楽は杖を二人に見せると言葉を切った。

おそらく彼女が使える魔法は治癒魔法なのだろう。他の人からすれば夢のようなものだ。だが医者である彼女は不安を覚えているのだろう。


「あなた達は存在意義を失わないで。医者としても、アークとしても失格の私のように……」


 突然御剣が彼女の言葉をさえぎった。


「癒月、そんなことないぜ。裏に君がいるから表であるオレ達が安心出来る。影のヒーローってもんだな。だからこれからもよろしく頼むぜ」


「え、えぇ」


 御剣の言葉に雅楽は面食らっていた。


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