第3話:兵器でしか切り開けない
雷電は鍵本と共に車から降りる。それと同時に空間の歪みが複数現れ、エラー達が立ちはだかってきた。
「エラーは全部で七体か。幻夢は右側の三体を頼む」
鍵本が冷静に相手を分析すると鎌を抜いた。
「俺が……残りの四体を片付ける」
彼はそういうや否や鎌をエラーに向けて振り下ろす。そして華麗にエラー達をさばくように翻弄していった。
雷電は彼に触発されるように無限を構えるとエラーに向かって疾走した。
「グギィィィィ!? 」
エラーは鳴き声をあげると雷電を睨みつける。
いつものようにエラーの足を払うとよろけたエラーの腹に目掛けて無限を突き刺した。
エラーの腹部を貫通して血液が無限を濡らす。雷電は慣れた手つきでそれを離すとそのまま真っ直ぐに引き抜いた。
血が無限を伝い、地面に落ちていく。血なまぐさい匂いにも今では嗅ぎなれた匂いになっていた。一生かけても慣れるものではないと正直思っていたが、改めて人の適応力はすごいものだと痛感する。
そう思いながら雷電は残りのエラーに対してなぎ払うと転倒したエラーに突き刺そうとした。
「ギァァァァァァァァァ! 」
エラーの鳴き声が聞こえたかと思うと雷電の背中に激痛が走る。おそらく片方のエラーが仲間を助けるように背後から攻撃したのだろう。
やはり多数の心強さを感じる反面、今の心細さをひしひしと感じる。だがそんなことを思っている場合ではない。ここから道を切り開くのは自分の力だけなのだ。
『槍というものは突くものだけだと思われがちだが、実際は叩く方が威力が高い―― 』
ラミエルが言っていたことが言葉ではなく音声として蘇ってくる。突きが通用しないならば叩けばいいのだ。
「はぁっ! 」
雷電は負けじと気迫の声を上げて穂先で一体のエラーの胸元を振りかぶるように叩きつけた。肋骨が折れるような音が聞こえる。それと共にエラーが血を吐いて白いブレザーが真っ赤に染まっていく。
「ギシァァァァァァァァァ!? 」
もう一体のエラーは鳴き声を上げながら鉤爪で切りつけてくる。それをバックステップで避けるとその隙に素早い動きで胸と胴を突く。
顔にエラーの返り血がついても気にならなかった。むしろ心のどこかに怒りの炎が上がり、エラーの息の根が止まるまで何度も体を執拗に突いていく。そう、怒りが収まるまで何度も――
「幻夢、何をやっているんだ 」
雷電は鍵本の声で我に返る。一体自分は何をしていたのだろうか。そう思いながら雷電は薄々誰かに乗っ取られているような気を感じていた。
「いいや、何も無いですよ 」
それを誤魔化すようににこりと笑った時、御剣の叫び声が聞こえた。
「幻夢、路月! 六時方向にトラックが来るぞ! 」
彼の声と同時に突然雷電の体は宙を浮き、左斜めに倒れていく。その後大きなトラックが炎上し、クラクションの音と同時に横転し始めた。
何かが自分を左に突き飛ばさなければトラックの下敷きになっていただろう。額で汗を拭った時、ふと黄色い光が雷電の横を通り抜ける。一体なんだろうかと思った矢先に鍵本から声をかけられた。
「幻夢、大丈夫か? 」
倒れている雷電に対して鍵本は手を差し出す。雷電はその手を掴んでようやく立ち上がった。
「はい、大丈夫です 」
雷電はそう言ったと同時に横転したトラックは爆発した後に炎上がさらに激しくなる。
「気をつけろ! 五時方向に人の影だ。もしかしたらアークゼノかもしれないから気を抜くんじゃないぜ」
御剣の声が聞こえた時、女性がビルから飛び降りてくる。そして女性はふわりと着地すると同時に周りが炎に包まれた。
「あーあ残念。一人処理出来ると思ったのに」
女性は紫色の長い髪をなびかせながら上から目線の態度を向ける。彼女は黒と紫色のライダースーツに身を包み、黒い斧を堂々と持っていた。
「貴様……アークゼノの一人か? 」
鍵本は鎌を女性に向けながら呟く。彼の左目はただ女性を睨んていた。
「ふふ、そう言うならウチと戦ってみる? 」
そういうと女性は手から炎を出して雷電達に襲いかかってきた。