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マノゼノ大戦  作者: シュート
第2章:初めての任務
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第3話:エラー時々少女

「良かった。怪我はないみたいだな……っておい、大丈夫か 」


 困惑する御剣をよそに突然少女が泣き始めた。目の前に車が来て怖かったのだろう。雷電は傍観しながら強い罪悪感に苛まされていた。


「ダメだ。幻夢、どうにかならないか? 」


「御剣さん、僕がどうにかしますので少し下がってください」


 御剣は音を上げて助けを求める。


「怖かったね。大丈夫だよ」


 雷電は少女の頭を撫でた。いつ頃だっただろうか。かつて同じようなことを誰かにしたことがあった。しかし得体の知れない何かに阻まれ、思い出すことが出来ない。


 気がつけば少女はかなり泣き止んでいた。ここまで来れば話ができるだろう。そう思いながら雷電は口を開いた。


「さてと、君はどうして泣いていたのかな? 」


「怖かったから…………」


「そうなんだ。何が怖かったのかな? 」


「黒くて何かへんなのが――」


 少女は突然何かを見つけたのか表情が固まる。思わず振り返ると目が眩むような光が襲いかかった。視界が遮断され、目の前が何も見えなくなる。しばらくこのままだろうと思えたが光はすぐ収まった。


 雷電はほっと息をつく。しかしそれもつかの間、目の前の空間がいくつも歪み始め、エラーが姿を現した。


「ピギャァァァァッ!!! 」


 エラーの耳障りな鳴き声が聞こえる。猛禽類(もうきんるい)のような目を煌々とさせて少女に襲いかかろうと見つめていた。


「ここはオレがやるぞ。幻夢はこの場から直ぐに逃げてくれ」


 御剣は声を張り上げてエラー達に突撃していく。確かに彼の言う通りだ。少女の安全を考えたらそちらの方がいいだろう。しかし非情な事は到底できなかった。雷電は少女を下ろして背負っていた槍を引き抜く。


 雷電は槍をつかったことがない。ゲームで槍を扱うキャラのように戦うなど一般人にはできないことは分かっている。ならどうすればいいのだろうか。雷電は何も出来ずただ必死に槍を振り回してエラーを追い払おうと奮起していた。


「困っているみたいだね」


 突然槍から呆れたような声が聞こえた。聞き覚えのある声にラミエルだと推測する。


「戦い方が全く分からないんだ。どうしたらいいんだ」


「そうだろうね。仕方がないよ。でもちょっと待ってね。キミのエネルギーを戦闘用に変換するから」


 その声を境に燃え上がるような力が体の奥底から湧き上がってくる。まるでとてつもない力に飲み込まれていくようだった。


「さてと。この槍……『無限(インフィニティ)』の戦い方を教えるよ。槍というものは突くものだけだと思われるけど実際は叩く方が威力が高いんだ。槍のしなりを利用して振りかぶって叩いてみて」


 いや、この槍どう見ても柄がしなるようなものに見えない。何故突くよりも叩くほうを優先するのだろうか。そんな疑問を抱えながら雷電はラミエルを握る。


「ピギャァァァァ!? 」


 エラーの鳴き声で雷電はハッとした。今は叩くとか突くとか叩くとかどうでもいい。まずは目の前にいるエラーを倒さなければ話にならない。雷電は覚悟を決めるとエラーの胸元を目掛けて無限(インフィニティ)を叩きつけた。


「ギャァァァァ!!! 」


 無限(インフィニティ)の柄はあらゆるものを凌駕(りょうが)するほどのしなり具合を発揮する。しばらくして肋骨が折れるような音が聞こえた。エラーは折れている胸部を見て断末魔をあげると音を立てて倒れる。


「グギィィィィイ!? 」


「ピギャァァァァ!? 」


 息つく間もなく二体のエラーがこちらを目掛けて襲ってくる。雷電は飛びかかってくるエラーを避けた。そして高く飛んだ一体のエラーに目掛けて飛ぶと無限(インフィニティ)の穂で叩きつける。

 大きな岩を砕いたような音が響く。雷電の目の前では穂がエラーの頭蓋骨を粉砕していた。エラーは悲鳴をあげることも無く崩れ落ちるように倒れる。


 雷電は自分では無いような動きに戸惑いを感じながら着地する。もう一体のエラーの喉元を狙って突く。自分でも驚くような素早い動きに驚きながらもエラーの喉元を深く貫いた。

 雷電の体から力が抜けて無限(インフィニティ)が手元を離れる。それと同時に喉元にそれが刺さったままエラーが倒れていく。


「やったね! あと槍は力に任せて抜いたら折れるから流れに逆らわずゆっくり抜いてね」


 ラミエルの満足気な声を聞きながら雷電はそれを真っ直ぐに引き抜いた。


「お兄ちゃん……すごい…………」


 少女は困惑と喜びが入り交じった表情で雷電に抱きつく。だが彼女と対比して雷電の顔は曇っていた。三歳児にこんなのを見せてよかったのだろうか。そのような思いが頭の中を支配していた。


「さてと、こっちも処理が終わったぞ。そっちのお兄ちゃんよりオレの方がかっこいいだろ? 」


「こっちのお兄ちゃんかっこいいもん! 」


 雷電に張り合うように御剣が少女に笑顔を向けた。だが彼女は雷電にくっついたまま離れない。


「そんなことよりも君のお父さんとお母さんは? 」


 雷電は少女に訊ねると首を横に振ったまま黙り込んでしまった。


「なるほどな。オレも一緒に探そうか? 」


「うん! 大きいお兄ちゃんも一緒に探そう! 」


 御剣の提案に少女は笑顔で頷いた。

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