インダス文字(5.ドラヴィーラの看板ほか)
5.日向数夫編「古代文字」
グラフィック社の図録(2014年)。インダス印章の写真から。
(1)131頁、下段中央の小さな写真。左を向く豚。
〇 左端から縦棒が4本並ぶところ、右端は、SUに似ているので、左からSANSU/ SUSANと読み換える。
〇 右から2番目は、合成記号でWA-ME/MA-NI。
〇 中央の記号は、TASI/ YOMETASI。しかも上部に、半分、角が見えるので適宜、WAを読み加える。
(左から右へ)SANSU/SUSAN U-SI SITA-WA RAKU-NI WA-ME/MA-NI U
算数し、私、楽に間に合う。
(右から左へ)U ME/MA-NI-WA NI-KURA SITA-WA NI-SE-NO SANSU
埋めには、憎らしいわ、偽の算数。
繋げれば「計算したので、私、楽に帳尻が合う」。「矛盾を埋めるのに、憎らしいわ、計算をごまかして」と解釈できる。豚の肩や腰に多数の斑点が有り、数えたくなるので符合しよう。
(2)131頁、右下の角の写真。左向く一角獣の印章。
130~131頁の最上部に、文字列だけ大きく再現されている。A.パルポラ「第2巻: Pakistan」の12頁、M-629A。
〇右端のテーブル型の記号は、台と見做しDAI/IDA。
〇右から3番目は、キツネの漫画を縦にした合成記号で、NOYOMESE/ NOSEYOME。
〇右から4番目の記号は(130~131頁の最上部ではTAWAだが)良く見ると、縦の「目」の中に短い縦棒があるので、TAWASIME/SIMETAWA。
(左から右へ) MASUMENI MESAMU TAWASIME NOYOMESE U DAI
娘に目覚め、「私の、嫁(に来て)頂戴」。
(右から左へ) DAI U NOYOMESE SIMETAWA SAMUME NIMASUME
「大夫の嫁、せしめたわ」と寒めに、娘。
合わせれば、「娘に目覚め、『私の嫁(に来て)頂戴』。『大夫の嫁(の地位)、せしめたわ』と冷静な娘」。
右から3番目のキツネの様な合成記号は、角隠しを被る「嫁」の姿を兼ねており「キツネの嫁入り」の民話に通じよう。
6.「世界の文字の物語」(古代オリエント博物館、大阪府立弥生文化博物館編集・発行。2017年3版)22頁。
(1)「ドラヴィーラの看板」
「Cracking The Indus Script: A Potential Breakthrough」で検索すると、冒頭に登場する。1991年に発見されたもので、近藤英夫「四大文明[インダス]」(NHK出版。2000年)の87~97頁に、長澤智美による現地取材の記録あり。古代のドラヴィーラの北門入り口の上に掲示された看板と見られている。
記号が横に10個並ぶ。車輪の様な、KAの記号が全部で4つあり、右端近くで2つ連続する。
(ア)素朴な読み方
10個の記号に、左から右へ、①から⑩まで番号を付せば、次の通り。
①及び④、⑧、⑨ は、KA。
②NA/NE。
③MOU。
⑤WO。
⑥KE。
⑦SI。
⑩SA。
(右から左へ)SA-KA-KA-SI-KE-WO-KA-MOU-NA-KA
さかかし けを か もう なか(逆毛をかまう中)
(左から右へ)KA-NE-MOU-KA-WO-KE-SI-KA-KA-SA
かね もうかを けしかか さ(金儲けをけしかけるさ)
これならまるで「金儲け話の情報交換も売り」とする床屋の看板である。因みに南インドのカンナダ語(ドラヴィダ系言語)では、「資産」(asset)は、SAMPATTUである由。
(イ)表情の変わる漫画
SAKA(逆さ)をヒントに、看板の右端を上に、縦にして見ると、中央寄りに、ストレス過剰な表情で、人の顔の漫画が登場する。(KEが両目、WOが口)これは床屋で、絡んだ髪を解いてもらう際に痛みを感じる表情だろう。右端のSAは、ハサミの様な道具、その左隣のKAKAは絡んだ髪の毛を表し、ちょうど顔の上に登場する。
逆に看板の左端を上に、縦にすると、やはり顔の漫画が登場するが、今度は安堵の表情である。(KEが両目、SIが口)髪の毛の手当が終了したに違いない。
(ウ)読み換え
論文掲載用のウェブサイトで、この話を海外の研究者に披露したら、この看板はドラヴィーラの北門入り口に高く掲載され、訪問者へメッセージを送った筈なので「床屋の看板」では不十分との反応だった。そこで再度、検討し、次の修正を加えた。
〇 KAと読んだ、①及び④、⑧、⑨の記号につき、〇(EN)の中に、十字(RO)+ 支線(I/YA/SI/NO)と捉え、EN-RO-(I/YA/SI/NO)と適宜、読み換える。
〇 SAと読んだ、上記⑩の記号は、合成記号SAMUとする。
すると、右から左へ、解読し直した結果、次の通り。
MUSA KA EN-RO-(I/YA/SI/NO)SI KE WO KA MOU NA KA
まさか(の)遠路や、時化をかまう中
左から右へと解読した内容は、そのまま採用すれば、
「まさかの遠路や、時化をかまう中、金儲けをけしかけるさ」。
(エ)精密な読み方
(音価の調整)
上記③ 基本形は、MOUだが、3本の縞模様があるので、この数を読み込み、MOUSA。
上記⑤ WOの形だが、WAが上下に合わさった形とすれば、WA-NI。また4つの線分に分離しているので、適宜、(SI/YO)-WOとも読み換える。
上記⑥ KEだが、4つの線分に分離しているので、適宜、(SI/YO)-KEとする。
上記⑦ 一本の縦棒は、線文字Aやキプロスの古代文字の場合と同様に、I/YA/SI/NOと読み換える。
上記 ⑧と⑨の連なりは、KA×2でKA-NIとも捉える。
上記⑩ 合成記号SAMUとする。
(解読)
上記⑦の修正点(I/YA/SI/NO)を踏まえ、次の通りの読み換えが可能となる。
〇 右から左へ
MUSA-KA-KA-YA-KE-WO -KA-MOU-NA-KA
まさか、蚊よけをかまう中
SAMU-KA-NI-YA-KE-(SI/YO)-WO -KA-MOU-NA-KA
寒気に、やけしをかまう中
MUSA-KA-KA-SI-(SI/YO)-KE -NI-WA -KA-MOU-NA-KA
まさか、貸し用件/剣、庭をかまう中
SAMU-KA-NI-SI-KE-(SI/YO)-WO -KA-MOU-NA-KA
サム、堪忍。時化世をかまう中
〇 左から右へ
KA-NE-MOU-KA-(SI/YO)-WO -KE-(I/YA/SI/NO)-KA-KA/NI-SAMU
金儲けしようを、けしかけるさ/兼や、母さん/毛のカニさん
(オ)まとめ
以上を繋げれば、
(a)逆毛をかまう中、
(b)まさかの遠路や、時化をかまう中、
(c) まさかか、蚊よけ/貸し用の件/剣や庭を、かまう中、(あるいは)
(d) 寒気に、やけし/サム、堪忍。時化世を、かまう中、
金儲けを、けしかけるさ/兼や、母さん/毛のカニさん。
となり、移住者の勧誘と解釈できる。インダス河流域から見れば、ドラヴィーラは当時、南方の小さな島であり、人口と経済力の維持・増大のため、この看板で宣伝したのだろう。
この文脈で文字列を見れば、4つの車輪の様なKAの記号は、移民の荷車の漫画となる。また(イ)の通り、看板を縦にすると、人の顔の漫画が現れるが、右端を上にした場合に見られる、ストレス過剰の表情は「時化」を表し、左端を上にした場合の安堵の表情は、緊急避難して世話になった結果だろう。
(2)右下の印章
左向く一角獣の印章。右端の記号は、RYOの上部にUでRYOUだろうが、印章の右端上部の破損で、Uの右側が欠けている。これを意図的な損壊と見做し、「不」、「破損」、「端欠き」等を読み加える。一角獣の角は、SI/ YA。
(右から左へ)次の2通りに読める。
不 RYOU NIME YA(不良! 逃げや)
不 RYOU MENI SI(不良、目にし)
(左から右へ)やはり、2通りに読める。
YA MEMA RYOU 破損 (やめましょう、は損)
YA MEMA RYOU 端欠き (やめましょう、恥かき)
繋げて解釈すれば、
(ア)不良! 逃げや。「やめましょう」言うのは、損。
(イ)不良を目にし、「やめましょう、恥かき!」。
不良に出会った場合の対応として、2通り示唆している。右端の RYOUの記号が、不良の漫画を兼ねている。
(3)左下の印章
左向く一角獣の印章。6本の縦棒を(1+2+3)/(2+4)/6本に分け、読み換える。左手の三角形の記号は NA/NE+(横縞3本で)MI/SAN。一角獣の角を NO/SI/YAとする。また一角獣の耳を短い縦棒2本と見做し、適宜 RA/NIと読み込む。
(ア)6本の縦棒を(1+2+3)に分ける場合。
(右から左へ)U SI-RA-MI NA-SAN/MI NO (うちら、皆さん/ 南の)
(左から右へ)SI RA NA-MI SAN-NI-SI U (白波三人衆)
繋げれば「うちら、皆さん、南の白波三人衆」。
(イ)6本の縦棒を(2+4)に分ける場合。
(右から左へ)USI RA-YO NA-MI NI (うちらよ、波に)
(左から右へ)SI RA NA-MI NI-YO U (白波に酔う)
繋げれば「うちらよ、波に、白波に酔う」。
(ウ)6本の縦棒をMU/ROと読む場合。
(右から左へ)U MU NE-MI YA (産むね、見や)
(左から右へ)YA MI-NE RO U (闇値を狙う)
繋げれば「産むね、見や。闇値を狙う」。
(エ)全てを繋げれば「うちら、皆さん、南の白波三人衆。うちらよ、波に、白波に酔う。産むね、見や。闇値を狙う」。当時の流行歌か舞台の演目で、さしずめ「白浪5人男」か。
7.大城道則編著「図説 古代文字入門」(河出書房新社。2018年)
(1)牛の印章(86頁)
牛が怒った様子で上部を睨み、背中の毛が反り立っている。
(上段)
(左から右へ)SO RI TA KI KE NO RYU U
剃りたき/反り立つ 毛の 理由
(右から左へ)U RYU NO KE KI TA RI-SIME SO
売る気配、来たりし、締め(られ)そう。
(下段)
左端の縦棒4本はYO、あるいは(2+2)本と見做してRA-NI。その右隣は「男」と「木」の合成記号で、OKI/ KO-O。右端の記号は、重なる「目」の中央に短い縦棒、加えて四隅に縦棒で、SI-NIME-YA、あるいは縦棒を合計(3+2)本として、MI-NIME-NI。
(左から右へ)YO OKI SAMA SINIMEYA
よう、貴様は死に目や
(右から左へ)MINIMENI SAMA KOO RANI
惨めな様が、甲羅(背中)に
上下を繋げて通読すれば「毛が反り立っているが、理由は、売られる気配があり、締められそうだから」。「よう、貴様は死に目だ。惨めな様子が、背中に表れている」。
この牛は、さんざん畑仕事に使われた挙句、これから肉牛として売られる運命。人間の残酷な仕打ちに対し、怒りを露わにしているのだろう。良く見ると、頭の下の飼い葉桶が空である。
(2)一角獣の印章(114頁)
パルポラ「第1巻:インド」の12頁、M-18A。またAmit Sengupta Indus Sealsで画像検索すると登場する。右端の合成記号を分解すれば、屋根はRI、加えて(SI-SAN)+TI+NU、あるいは(SAN-ZAN)+NI/(I-SI)、と読める。すると次の通り。
(右から左へ)SAN-ZAN-I-SI U-SENI SI-SAN
散在し、失せに資産。
(左から右へ)(SI-SAN) U RI-SAN-ZAN-NI
資産売り、散々に。
繋げれば「資産売り、散々に散在し、失せに資産」。一角獣が怒った表情なので、教訓と見られる。
8.「詳説 世界史B(改訂版)」(山川出版社。2019年発行)
インドの古代文明を解説した53頁に掲載の印章。ネットでは「The Earth is Mysterious, The mystery of Indus script」で検索すると、冒頭に15個の印章が登場するが、そのうち上から2段目、左から2つ目の印章。
(1)試し読み
大意を掴む為、複雑な記号を簡略化して読めば、次の通り。
(左から右へ)
MAKE-SO I-YA NI/RA TA RI/TARI MA-SE MI SO NI/RA NA YOSE U/USENI
負けそう、いや、似ている、たまらんぜ! 溝に、な、寄せ(て)失せに。
(右から左へ)
U/USENI SESI NA NI/RA SI SAN ME-SE RI TA NI/RA NI MAKE-SO
失せしなら 資産、召せりたら、逃げましょう。
以上から、アラン・ドロン主演の昔の映画「太陽がいっぱい」に類する話と判明する。
(2)音価
上部に12個の記号が並ぶところ、左から右へ、番号を付せば、次の通り。
①左端。弓形を5本合わせた記号:分解すれば、左端がSO、その右側が、MAKEと見られるが、全体が中央で折れている事にも着目し、
SO+MAKE +2(I/YA/SI/NO) +ORE、とする。
②二本の短い縦棒:NI/RA/HASI。
③二本の長い縦棒:NI/RA/HASI。
④「魚」の記号:TA/ [ME-(SI/YO)]/ SAKANA。
⑤「魚」の記号に屋根:RI。
⑥「目」の記号の中に「穂先」の記号:(ME/MA)-SE。
⑦短い縦棒3本:MI/SA/DI/KAWA。
⑧弓型の縦棒:SO/I/YA/SI/NO。
⑨長い縦棒2本:NI/RA/HASI。
⑩四角い果物の記号:NA/NE。
⑪「穂先」の記号で「羽」が4本:(YO/SI)-SE。
⑫右端。「牛の頭」の記号:U/ USENI/ USENIWA。
(3) 解読
(左から右へ)
SO+MAKE +2(I/YA/SI/NO) +ORE NI/RA/HASI NI/RA/HASI TA/ [ME-(SI/YO)]/ SAKANA RI
(ME/MA)-SE MI/SA/DI/KAWA SO/I/YA/SI/NO NI/RA/HASI NA/NE (YO/SI)-SE
U/ USENI/ USENIWA
ORE-SINI-MAKESO NI NITA RI MASE KAWA NO HASI NE/NA SEYO USENI
俺氏に、負けそうに、似ておられる。川の橋ね。なせよ、失せに。
(右から左へ)
U/ USENI/ USENIWA (YO/SI)-SE NA/NE NI/RA/HASI SO/I/YA/SI/NO MI/SA/DI/KAWA
(ME/MA)-SE RI TA/ [ME-(SI/YO)]/ SAKANA NI/RA/HASI NI/RA/HASI
SO+MAKE +2(I/YA/SI/NO) +ORE
U SESI NA RA SISAN MESE RITARA NI KEMASO-ORE-ISI
失せし(失踪)なら、資産をせしめて、逃げましょう、俺、必死。
繋げれば「俺氏に、負けそうに似ておられる」。「川の橋ね。なせよ、失せに」。「失踪したら、資産をせしめて、逃げましょう。俺、必死」。
(4)読み換え
(ア)上記②と③の記号を合わせ、4本の縦棒と見做して、SI/YOとする。
(左から右へ)
SO+MAKE +2(I/YA/SI/NO) +ORE SI/YO TA/ [ME-(SI/YO)]/ SAKANA RI (ME/MA)-SE
MI/SA/DI/KAWA SO/I/YA/SI/NO NI/RA/HASI NA/NE (YO/SI)-SE U/ USENI/ USENIWA
MASONOKEYA+ORE SI/YO TA RI MASE SAN SI NI NA SEYO U
まあ、その気や。折れた酔っ払いさんを、死に至らせよう。
(右から左へ)
U/ USENI/ USENIWA (YO/SI)-SE NA/NE NI/RA/HASI SO/I/YA/SI/NO MI/SA/DI/KAWA
(ME/MA)-SE RI TA/ [ME-(SI/YO)]/ SAKANA SI/YO SO+MAKE +2(I/YA/SI/NO) +ORE
U SEYO NA NI SISAN MISE RITA SIYO MAKESO-ORE-SIYA
ウソよ。何、資産、見せりた。容姿、負けそう、俺氏や。
繋げれば「ウソよ。何、資産、見せた。容姿、負けそう。まるで俺氏や」。「まあ、その気や。折れた酔っ払いさんを死に至らせよう」。
(イ)右端、⑫の「牛の頭」の記号が、細長く、上部が縊れている事に着目し、TUBOと読み換える。
(左から右へ)
SO+MAKE +2(I/YA/SI/NO) +ORE NI/RA/HASI NI/RA/HASI
TA/ [ME-(SI/YO)]/ SAKANA RI (ME/MA)-SE MI/SA/DI/KAWA
SO/I/YA/SI/NO NI/RA/HASI NA/NE (YO/SI)-SE TUBO
ORE-SINI-MAKESO NI NITA RI MASE KAWA NO HASI NE/NA SEYO BOTU
俺氏に、負けそうに、似ておられる。川の橋ね。なせよ、没。
(右から左へ)
BOTU (YO/SI)-SE NA/NE NI/RA/HASI
SO/I/YA/SI/NO MI/SA/DI/KAWA (ME/MA)-SE RI
TA/ [ME-(SI/YO)]/ SAKANA NI/RA/HASI NI/RA/HASI
SO+MAKE +2(I/YA/SI/NO) +ORE
BOTU SEYO NA RA SISAN MESE RITARA NI KEMASO-ORE-ISI
没せよ。なら、資産をせしめて、逃げましょう、俺、必死。
繋げれば「俺氏に、負けそうに似ておられる」。「川の橋ね。なせよ、没」。「没せよ。なら、資産をせしめて、逃げましょう。俺、必死」。
(5)まとめ
全てを繋げれば、次の通り。
「俺氏に、負けそうに似ておられる。たまらんぜ!」。「ウソよ。何、資産、見せた?」。「容姿、負けそう、まるで俺氏や」。「川の橋ね。なせよ、没」。「まあ、その気や。折れた酔っ払いさんを死に至らせよう」。「没せよ。そうしたら資産をせしめて、逃げましょう。俺、必死」。
(6)漫画
この印章を、上下逆さまに見ると、一角獣の首に、魚が一匹、掛かっている様に見える。(一角獣の鼻が、魚の目に変貌)然るに、上記②から④の記号は、左から右へ、HASI NI SAKANA、とも読めるので、符合する。記述の文脈から「橋に、魚(酔っ払い)が乗ってしまったのなら、水に戻したら良い」とのメッセージだろう。
9.中村元「古代インド」(講談社学術文庫。2004年)より
33頁に写真掲載の3つの印章について、次の通り。
(右側の印章)
パルポラ「第1巻:インド」の7頁、M-8A。左向く、背中の黒い一角獣が登場する。左端の6本歯の記号は、HA + ROKU/「2×3」と考える。
(右から左へ) MITI HO HA-KURO(満ち帆は、黒)。
(左から右へ) NISAN-HA HO MITI(兄さんは、帆が満ち/不死身)。
合わせれば「兄さんは、不死身。満ち帆は黒」となり、ギリシャ神話で、クレタ島に遠征して怪物ミノタウロスを退治した英雄テーセウスが、父王との「生還なら白い帆で」との約束を破り、黒い帆を掲げてアテネへ帰還し、父王の自殺を招いた物語の一節と判明する。
一角獣の頭の下の「譜面台」を船に見立てれば、帆に相当する上の部分が黒いので符合する。また印章の右端、一角獣の背後に「亡霊」が淡く描かれているが、この文脈なら、テーセウスの帰還を待つ父王アイゲウスで、黒い帆を認めて崩壊する姿かも知れない。一角獣は、不気味な表情であり、テーセウスが、早期の王位継承のため、意図的に黒い帆を掲げたのではないか、と疑いたくなる。
(真ん中の印章) 「四大文明展」図録の印章(336)に同じ。
(左側の印章)
右向く、痩せた一角獣が登場する。左側の記号は、YOSE。一角獣の長い角をSI/YA、また角の根元の耳と目をMEと読み込む。
(左から右へ)左端の記号、中央の縦棒4本、耳、角、目の順に、
YOSE YO ME YA ME(よせ、嫁。やめ)
(右から左へ)角、耳、目。縦棒4本[1+(YASI)+2]。そして左端の記号の順に、
SI NIME I-YA-SI-NI SEYO(死に目、癒しにせよ)。
繋げば「よせ、嫁。やめてくれ。死に目なので、癒しにせよ」。一角獣の長く、くねる角、また耳と目が怪しげな漫画となり、嫁が何を求めていたのか示唆している。