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81 地獄

第4章開始です



----そこは正しく地獄だった。


自分と同じ人の顔には生気が宿っておらず、ただ命令に従う傀儡のようで。

殴られても、蹴られても、呻き声をあげるだけ。眼球を抉られようとも、腕を折られようと……どんなにひどく痛ぶられても、ただ叫び声をあげるだけ。助けを求めることも、反抗の意思を示すこともありはしない。

周りも一緒だ。きっと助けを求められても助けることはなく、反抗を起こすものもいやしない。


ただ、それが運命であると、土で出来た天井をただ、空を眺めるように見つめるだけ。


きっとこれは正しい人の在り方じゃない。でも正しくないのは、自分達だけじゃない。


それを従えている人間も同じだった。


同じ人を人として見ていない。奴隷どころか、玩具としてしか私たちを見ていない。


そんな人間が正しいものか。


人には階級があることは知っている。生まれながらに、上下関係が存在することも理解している。虐げられる者と虐げる者、奪われる者と奪う者、人にもそんな上下が存在することは知っているのだ。


だが、これはあまりにも残酷だ。


そう思う私はきっと異端なのだろう。周りは……両親さえ、これが当たり前で、そこに疑問を覚えている様子はない。


それでもーーこの狂った世界に違和感を覚えずにはいられない。


少し騒がしさを感じて、周囲に意識を向ければ、先程まで隣で働いていた男が、お遊び感覚に爪を剥がされ、鼻の先端をこそぎ落とされていた。


男が悲鳴を上げ、膝から崩れると男の頭が踏みつけられる。

周りはそれを見向きもしない。ここではこれが日常茶飯事だから。

ただ自分に課せられた使命を黙々と果たすだけ。その使命がどんな意味を持つのか、何をしているのかさえ知りもしない。


そしてそれは私も同じだ。


肩に担いでいた荷物が不自然に衝撃を受け、地に落ちた。

拾い直そうとする私に影がかかった。



----ああ、次は私の番か。



顔を上げれば、同じ種族とは思えないほど、醜悪な笑みを浮かべる者たちがいて、楽しそうに私を見つめている。


その手には、先端がオレンジに発色している鉄で出来た棒や、無意味に先端が幾つも分岐した刃物なんかが握られていて、



私は----。



----ただ、周りと同じように、壊れた玩具のように、いや、それよりかは面白みのない叫びを上げた。





少しずつ更新していきますので、よろしくお願いします。

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