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ご都合主義なんてありません  作者: よーや
第一幕 二章~異世界転移の場合~
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異世界転移の場合┈┈case-2


よろしくお願いします。




平穏な日常は突如として終わりを告げた。




…なんて台詞を現実で言うタイミングはきっと来ない。

あるのは作品の中でだけ。




私が役者である事が、現実でプラスに活きた事はない。



役になりきる為に日々生きていくという事。

日々生きていく為に役になりきるという事。


この二つはただ逆にしたようで、その実、意味はまるで違う。


ドラマやテレビに出る時に、役者として振る舞う事は、自らの強みを売り出す為の、言わば示威行動だから。

日常を生きていく中で、役者として振る舞う事は、自らの弱みを隠し通す為の、言わば逃避行動だから。




インタビューでよく聞かれる事がある。

天才子役が高校生になるまで役者としてやってきた中で、同年代と自分を比べて、成功者としての秘訣は?





そんなもんねぇよ。

成功してるなんて思った事もねぇよ。





子供が子役を始めた理由なんて、皆親のエゴに巻き込まれただけって相場が決まってんだよ。


子役が役者を続けるのだって、周りからのプレッシャーで続けるしかねぇんだよ。




あーしが役者で良かったと思う事なんざ、こういう感情を隠せる術を身に付けられた事と、世渡りが上手くなった事しかねぇ。



まだ思春期にも満たねぇ子供が、親に自分の感情を殺せって望まれる事がどんなに酷か。


そんな状態を、周りの誰も彼もが期待してくるって環境がどんなに情緒の形成に響くか。



顔面の裏にどす黒い闇を渦巻かせながら、表では子供らしい笑顔や泣き顔を晒すんだ。



そんな事を十年近くも続けさせられてみろ。

素の自分なんて心の中以外では出てこなくなるんだよ。





私の場合、熱心な追っかけもいるから余計に散々。

高校にまでひっそり侵入してまで、あーしの素顔を知りたい、なんてキモい考えで盗撮やら私物の盗難までやらかしやがる。



…そうなってくるとあーしは、皆が思う理想の私である事を、常に意識しなければいけなくなる。






例え、狂った追っかけに監禁されて、これから犯されそうになっていようと。




現実のあーしなら、このクソ野郎に唾を吐きかけて、粗末なもんを笑ってやる所だが。

理想の私を演じる私は、冷静を装いつつも、恐怖から目をぎゅっと閉じ、僅かに身体を震わせた。





┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈





いつまで経っても手を出してこないので、恐る恐る目を開けると、知らない場所で知らない人達が私を囲み跪いていた。



役者業としての一環で、海外の様々な地へと何度も足を運んだ事はある。


しかし周囲を見回してみても、どうにも海外の何処にも当て嵌らない場所と、何処の民族にも当て嵌らない人種の様に思えた。



跪いていた人達の話を統合すると、村総出で儀式をしていたら突然光と共に私が現れた、との事だった。



神の遣いだと崇めてくる人々から、今の日付等を、さり気なく情報収集していった結果。


私はどうやら異世界に来てしまったらしいと分かった。


私が神の遣いというのも、この世界での神が黒髪黒目だとされているから、らしい。

村の教会に祭られていた少年姿の神像は、古ぼけてはいるけれど、確かにそう見えなくもなかった。





それから始まった異世界での生活は、意外な事に快適なものだった。



役者として今まで培ってきた演技力や知識が、村での“神の遣い”としての私の立場を守るのに大いに役立ったからだ。



例えば、雨を降らしてくれと言われれば、祈祷師を演じながら、天気予報士を演じた時に得た知識を使い、あたかも私が雨を降らせたように見せられた。


流行病が村に蔓延すれば医師を演じ、子供が産まれるとなれば助産師を演じ。


そうして起こること全てに対応していった。



これまでと違い、役を演じても役や作品としての評価をされる訳ではなく、演じれば演じるだけ周りは私個人を見て評価してくれる事も快適さの要因だろう。



しかもこの“神の遣い”には台本が無い。

好き放題演じながらに、カットはかからない。

自分で適切な役を見つけ演じ分ける事が出来る。


これ程までに私が自由でいられるのは、今までの人生で初めての事だった。


この世界には私を束縛する煩わしい大人達もいなければ、邪な考えを持つ悪人も、私に近付こうとした段階で信者達に排除される。



自由で、平和で、ストレスの無い毎日。


























そんな平穏な日常は突如として終わりを告げた。


この台詞を現実で使う事になるなんて。



村が属する国とは隣国に当たる大国が私の暮らしている村へ向け、軍を差し向けたらしい。

しかもその軍は完全武装。

明らかにこの村の侵略を目的とした進軍との事だった。



村人達から何とかしてくれとせがまれたが、いくら何でも進軍を止めるなんて、私の手の届く範囲を超えすぎている。


そうこうしていると、隣国進軍の目的が、神の遣い等と名乗る不遜な輩を殺し、大国の権威を知らしめるのだ、といった内容の長々しい声明により明らかになった。



こちらの国は、隣国と比べかなり小さい国だったので、村を見捨てる選択をするだろう。


そうなると無力な村人達が、どうにも出来ない国という大きな存在よりも。


声明を受けても進軍を止められない、且つ村への侵攻の原因である私、そんな何とかなりそうな個人に、怒りを向ける事となったのは自然な流れなのかもしれない。




ありもしない神通力等でも警戒したのか、深夜寝込みを襲われ、厳重に縛られた上で、村人達の手により私は隣国の軍に突き出された。




あぁこれで神の遣い役も終わりか。

そう思った瞬間私は、いや、あーしは感情が爆発した。












期待されたから答えてやっただけなのに、期待に答えられなきゃこれだよ!ふざけんじゃねぇ!大体自分達で何とかならねぇとなりゃあ、やれ儀式だのやれ神の遣いだのと、何でも人任せにしてんじゃねぇよ!そもそもこちとらまだ高校生だっての!てめぇらより年下に自分らの叶えられなかった理想とか押し付けてんじゃねぇよ!期待がどれだけ重いか知らねぇで期待すんのは無責任っつうんだよ!何であーしより長く生きててそれが分からねぇんだ!てか役者ってだけで清廉潔白みてぇなイメージを持つのは勝手だけどよ、あーしだって普通の人間なん







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転移例 No.2 …学生:I

転移先 …中世的世界

死亡原因 …喉や肺の爛れによる窒息




一言…「神の遣い」の反対語って「下々のご本人」?


順次更新予定。

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