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夢→転生=現実

 すげえ夢だなぁ……。

 二年三組の教室を探した。しかし俺の知っている場所を何度も探しても見つからない。

 なんだこれ、夢だとはいえなんで教室の場所変わってるんだよ。

 

 男子トイレ、俺の小便の音だけが鳴り響く。

「ふぅ」

 

 最後の一滴まで残さず搾り出す。そしてゆっくりとズボンをあげて収納。もも周りに温かい感触。

「あぁ! 残尿!!!」

「ちょっと神城君!」

 トイレの外から聞こえる怒号。女の声だ。俺はゆっくりとベルトを締めてトイレを出ていく。


「いつまでサボってる気!? もう授業始まってるわよ!」

 黒髪ロングのストレートヘア、きりっとした目で俺をにらみつけている女。腕には、二年三組学級委員とかかれた腕章。

 

 なんだこいつ、見たことないぞ。人も変わんのか、ほんとすごいな俺の夢。

「サボるっていうか、教室わかんなくて」

「はぁ!? 何寝ぼけてるの!?」

「いや、寝ぼけてるっていうか寝てます。完全に」

「意味わかんないこと言ってないで行くよ! ホラ!」

 

 女は俺の手を引っ張って、歩き出した。


「あ、俺手洗ってないけど……」

 ピタリと足が止まる。ものすごい形相で俺をにらみつける女。


「洗 っ て き な さ い」

 まるで汚物でも投げつけられたかのような表情の女を前に、「はい」と言わざるを得ない。

 

 それにしても綺麗な娘だ。こんな娘、現実でも同じクラスにいたら、そんな風に何度も思う。

 

 再びトイレに戻り、洗面所で手を洗う。ポケットに入ったハンカチを取り出して、すぐに戻ると、先程と変わらぬ顔で女は立っていた。

「まっててくれたのか、ありがとな」

「少し目を離したらまたサボるんでしょ」

「あはは……」

 

 女は颯爽と階段に向かって行く。俺もおいてかれぬようにと、駆け足で追いかけた。

「でも珍しいわね。あなたが何も言わずに私の指示に従うなんて、明日は嵐かしら」


「珍しいって、俺いつもどんなんなんだ?」

 足を止めて、俺の顔を覗き込む。


「な、なんだよ……」

 一切迷いのない真っ黒に輝く瞳。直視していたら引き込まれてしまいそうだ。


「うーん、やっぱり神城君よね……」

 顎に手を当てて、首を傾げる。


「でもおかしい。今日の神城君は目が死んでるわ」

「今日のってか、よく言われるぞそれ」

「それに覇気もない」

「まぁ一般人だからな」

「いつもみたいに、『俺に近づくな、下衆が』みたいなのもないし」

「え、俺そんな感じ?」

「なにより……」

 

 女は俺の頭皮をじっと見つめた。

「髪が赤い……」

「おう、毛先だけだけどな」


 なんかめんどくさくなってきたな。というか長すぎだろこの夢。いつまで寝てんだ俺。

「まさか!」

 女は口を大きく開けて、俺をにらみつけた。


「え、なに?」


「夢渡人……」

「え? なにそれ」


「いや、でもそれは都市伝説のはずじゃ……」

 夢渡人……。確か俺も聞いたことがある。この女の言う通り都市伝説だが、夢を通じてパラレルワールドの世界にわたってしまうという……。

 長い夢、夢の中で夢だと気づくこの違和感。まさか本当に……。


「え……俺、まじで渡っちゃったの……」

「そんな……ありえない。じゃあ私の前にいる神城君は……」



 涼しい風が俺の全身をめぐる。隣には黒髪の美女。俺は、ゆっくりと深呼吸してグラウンドを眺めた。

「なにこれ」

「体育よ」


「もう一回聞いていい? これ何……」

「体育よ」

 女は依然として表情を変えずに言った後、髪を耳にかけて振り向く。


「神城君がどんな世界から来たのかは知らないけど、この学校は異能力科天元高校。国家の軍所属の、異能力軍、天道軍を目指すもの達の学校よ。私は、二年三組学級委員、本城三月」


「異能力科? 異能力軍って、なんのこといってんだ?」

 

 本城は、でこに手を当てて、説明を続ける。

「まさかそんなことも知らないなんて……一体どんな世界から……。まぁいいわ、今このご時世。戦争は当たり前、その中心になるのが核兵器でも人工知能でもなく私たち異能力者よ」


「異能力ってのはその……」

「人が生まれ持ったもの。もちろん『それ』をもって生まれなかった人間もいるわ」

「な、なんだそれ……」

 

 つまりここは、異能力が存在する世界、ってことか。全く同じ世界のパラレルワールド。こいつの名前も確か同じクラスにいた気がする。ただ無口で何考えてるかわかんねえ奴だったし、そもそもみてくれが全然ちげぇ……。


「じゃあ現実と違うのは大きく言うと異能力が存在するってだけか」

「それだけでも随分大きな違いなんじゃない?」

 

 確かに……。でもまぁ人が変わってないならいいか。また母さんの飯食えるし。


「なるほどな、じゃあ朝のいじめられっ子は雷系の能力ってわけか。お前の能力はなんなんだ?」

 

 本城は得意げに口端を上げて、自分の腕を指さす。

「身体強化よ」


「ほぉ……」

 本城が腰にぶら下げた刀を見つめる。

「じゃあその刀はなんなんだ?」

 強く刀を握りしめる本城。


「私の家系。三百年前から続く本城家っていう剣術の家系なのよ。だから有名な流派は昔から叩き込まれてる。それを最大限生かすための異能力よ」


「へー」

「興味がないなら聞くな」

 少しムスッとした表情で本城はそっぽを向いた。


 興味がなかったわけじゃない。それよりも疑問に思ったことがあったのだ。

 

 俺の能力はなんだろうか? まさかあのいじめられっ子と同じ雷の……。


「な、なぁ」


「本城さん!」

 本城に尋ねようとしたところで、『炎蓮隊』とかかれた腕章をした男が、屋上の扉を開ける。


「優。どうしたの?」

「焔さんからお呼び出しです、恐らく新しい任務のことだと思いますが……」

「わかったわ。すぐいく」

 

 本城は、ポケットから小さな紙を一枚取り出して、俺に差し出した。

「そこに私の電話番号とメアドがのってるわ。また何か困ったら連絡して」


「お。おう。さんきゅーな」


 本城は足早に屋上を去っていく。

 困ったら連絡しろって、そんなこと言ったら全部が全部困ってるんだけどなぁ……


「あ……」


 また教室の場所聞くの忘れた……

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