夏休みに置かれて
差し示した連なりに
牽引されている車
山手の向こうには
ちらほらと
夏の花が見える
生い茂っているから
ただの雑草かもしれない
熱光線で
そんな考えも黒こげになり
申し訳なさそうに届く
車のエアコンは
風というより
糸の冷たさだった
極限まで脱げるとしたら
骨になって乾いている
冷たい井戸水に
足を浸しているのが
せめてもの冷であり
夜になったら涼しくなるという
変な噂話にしか聞こえない
遮断して蝉時雨
聞こえさせられている
日陰で干され
熱気を着て寝るのかと
血を吸われながら
腹にたまる赤色を見ている
縞模様に渦巻いて
赤黒いようで真っ赤になる
テレビはブラウン管で
前時代の技術の雄を
歴史を感じさせる色合いで見る
四角になった死角
向こう側には知らない埃があって
タイムトンネルみたいに
その先は暗い
猫の鈴だけが廊下を通り
知っている者として
振る舞っているが
知らない者は
その一歩目が踏み出せない
傍らに押しボタンの扇風機
近くには猫が横になり
二つ折りの座布団を
半分も占領していた
西瓜の模様は
水着にもあって
西瓜が西瓜を割ろうとする
川べりには広場があり
土の上に空き缶が増えた
橋の下まで歩いて行けるが
そけまで行ける気持ちが無い
少し離れた階段に
薄ピンクのスカート
黄緑色のバッグが見えた
橋の下まで行き
常に日陰のあるベンチに座る
余分な物は無いが
本に興味があり近づくと
「官能小説」という
耳慣れない言葉を
夏休みに置かれてしまった