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聖人伝説(3)

一つ一つの町や村を巡るべきか。

問題はそこではない気がする。


治癒反対派がどう動くか。

記録にあるのは『治癒された者や家族が殺された』という事。

それらの人が害をなしたわけではない。


しかし、長年治癒魔法を忌み嫌った人々がどのような行動や反応を示すのか、やってみなければ分からない。


「ザンに戦略を相談します」

皆に分かりやすいよう目を閉じる。


(どうだった?)

(かなりややこしい事になっていて、順番に・・・)


(そこに着いてからの事をイメージできる?)

(うん、緊急だから見ていいよ)


ここに着いてからをイメージし始めた、その瞬間記憶が吸い取られるように現時点まで進んだ。


記憶は吸われたわけではなく残っている。

当たり前だが安心した、ビックリしすぎた。

『多重思考』で記憶を見たのか、改めて驚く。


(整理できたから、イメージでこちらから送り返すね。

抜けがないか確認して)

(・・・・・・おーけー)


(じゃあ、一番いいと思う作戦は・・・イメージで)

(はやっ)




(キレてなーい!)

(あー・・・なんかあったら呼んで、最初の移動だけ手伝う?)


(そっちの準備だけお願い。後はやってみる)

(では成功を祈る。なお、このテープは自動的に消滅する)


(ふるっwww)

(《wやめてw》じゃあ)



各ギルドから一斉に情報が伝えられた。

冒険者ギルドは当然だが、商業・職人などあらゆる組合から。


強固なネットワークで守られる彼らには広報は義務である。

客などに反感を買っても、『伝えるのが義務』と言い張るだけだ。

相手には、それ以上どうしようもない。



  正真正銘の新たな聖者がサラスに訪れる


伝えられたのはそれだけだ。



ユウは新たな課題に挑戦していた。

他を一時中断するくらいには困難だと思われたことだ。

他人の記憶を辿っての転移。


まず、自分自身が転移をする時に使っているプロセスをたどる。

見通し範囲へ跳ぶ時、人物を目指す時、全てを【無・勘】を使い。


【聴】との関連、【調】で受け取れるイメージの感覚とも比べる。


なぜか、馬の記憶を見た時を思い出す、【無・勘】が伝えてくる。

馬の記憶にあった、高度な位置管理機能を思い出す。

転移石を馬に使わせたら・・・なんで今そんな事を。


馬に使わせればいいのだ!

いや、オットー伯爵か、無礼だがバレないので大丈夫。



役割分担だが、治癒と障壁以外の魔法は使わないのでルーナは交渉担当。

全員白衣を脱ぎ、ルーナは余計な鎧は預かってもらう。

たいがいの者は、おっぱいにひれ伏すしか無いだろう。

ロケット発射しそうだ。


必要な道具は伯爵の活動拠点で調達、無ければ戻ってどうにかすればいい。



先に身元を明かす。

「ザンユウという冒険者パーティーをご存知ですね、私がそのユウです」

「只者であるはずがないとは思いましたが・・・なるほど」


「私が関わったことは、内密にお願いします」

「わかりました、誓います」

祈るように跪く伯爵。



伯爵に漂白剤代わりの清浄をかける、まだ病衣だが、『意識改革』施設に行けば着替えはあるらしい。


広いVIP病室の端から端まで跳んでみる、問題無い。


「では、『意識改革なんとか研究所』のイメージをはっきりと」

ユウは同時にイメージが充分か覗いている。

「いきます」

5人が消えた。



種明かしをすると、伯爵が拠点をしっかりとイメージし転移石を握り、ユウが魔力を流し込んだだけである。

石無し転移の成果か、近いからか、消費は目に見えない位だった。


2階建ての小さな建物だが、城とも言える伯爵邸のすぐ裏だった。

2人、男女が書類の前でうなだれていた。

「心配をかけてすまなかった」

「一体・・・皆さんどうやって? 伯爵、お体は?」


「100年経って、本物の聖者いや聖女が来られた。

お任せするしかない」


「しかし、現状もう無理でしょう。

治療するうちに全員感染する可能性さえあります」

「戻ってこられては危険です。なぜわざわざ・・・」



ユウはやるべきことをこなす。

カーシャには念話のことを伝え忘れた。

ザンには転移の成功を報告。


“呪われ”と同じ様に感染者が分かる、全く違うが。

近くて苦しみが伝わってくる人もいる、つらい。

そして、まだまばらだが、敵意を示す光点が遠くで動いている。


「おふたりとも、念の為除染して大丈夫でしょうか?」

ここで茶さんがストップをかけた。

「感染は全く無いです、ここはお屋敷の側の施設とお見受けしますが」

「そうです」


「お屋敷に、治癒反対派は?」

「私が説得したので大丈夫のはずですが」


「ではユウ、屋敷全体の除染と、感染者の治療を。

【聴】で敵意が見えれば改めて対処しましょう。

ここが始まりです」


茶さんが『ユウ』と呼び捨ててくれた。

そんな場合ではない、活動開始。


「伯爵は待機を、可能なら屋敷へ移動してください」


ユウとシンヨルは常に一緒だ。

外へ出ると、屋敷の屋根へ跳ぶ。

更に、最も高い無人の物見(やぐら)へ跳ぶ。


病院で使ったのと同じ、【想】で維持した薄い除染魔法陣を屋敷を覆うように作る。

問題はこれからだ。


感染者を完全除染(実際は出血等以外治癒状態に)すると、光点が分からなくなる可能性がある。

そういえば、個人をマーキングできなかったか?


出来た、状態など付箋のようにつけておく。

念の為遠慮気味に踊って満タンオーライ。


酷い人から順に、除染(殺菌)と治癒のコンボで治してゆく。

病院で繰り返し除染魔法陣を作ったので、8人ほど治して半分消費。


また少し踊って、軽い感染者を除染と治療に分けて行う。

結局付箋は不要だったが、次に役立つかもしれない。



伯爵は屋敷内で、数人の前にいる。

全員に敵意はない。


いきなり転移して驚かせるかもと思ったが、意を決して跳ぶ。

これから修羅場が待っている、こんなこと序の口だ。


「この方々だ、正真正銘の聖人だ。

お待ちしておりました」

全員一瞬驚き、構えたが伯爵から説明済みのようだ。


着替えて凛々しい伯爵が、他に見えないようにウインクする。

約束は守ったよ、らしい・・・多分。


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