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自己犠牲

「ところで、宿に行くのはいつにします?」

ザンがしれっと尋ねる。


「4時には絶対着いておくべきでしょう。

余裕を持って3時に行きましょう」

珍しく、リリアが答える。


「じゃあ、これからの方針について先に話し合っときましょう。

軽くですけど」



まだ2時くらいだが、全員集合。


まず、ザンが自ら喋る。

「これから一番の問題が、ユウとオレの成果次第で時期が決まるということです。

あとは、ヤツらの魔物が出るかどうかですね、アリア」


さん付け禁止ルールでアリアを呼び捨てに出来、気持ちがいい。


「うん、ユウの遠隔による魔物殲滅で、だいぶ予定が狂ったはずなのです」


「先に言っておきます。

多重思考なんですが、自動的に全体の状況分析をするようになりました。

過信は禁物ですから、気になる事はどんどん指摘してください。

修正点が一度分かれば、自ら修正して正確になるはずなんで」


「へえ、お告げのようなものなのか?」

ロロ(ろろ)の指摘が面白いし分かりやすい。


「いいえ、全ての分析は『確定していること』からしか出来ません。

そうでないと、可能性が多すぎて答えは出ません。

そういう時は、ユウの【勘】のほうが向いているはずです」


「わたしの【無・勘】は、ザン理論の穴を埋められるとは思ってます。

あと、ザンとわたし自身の工夫で成長は加速的に伸びますので」


「うん、ユウもよろしく頼む。

今回、魔物に苦労はしましたが得たものも大き過ぎました。

敵が動くのを控える可能性は大です、彼らの準備ができるまで」


茶さんが手を挙げた。

「ウインドという人物の役割はどうなのだろうか・・・」


「確実な答えは与えてくれませんし分かりません。

手紙には疑う余地はありませんが・・・敢えて本当に裏切る事も有り得ます。

その時は、最善の判断をしましょう」


ウインドが自らを犠牲にして女神様と部下の思いを叶えようとしている、という可能性は言わなかった。

ウインドへの中途半端な感傷こそが、彼の思いを台無しにしかねない。



「いずれにしても、来るならでかいのなのです。

自然発生のにもちゅういなのです。

あと、サーシャさん他の協力で転移ネットワークを広げるなのです」


イジワは食事を終えてから戻り、食事の間は宿で広報活動に協力する。

広報というより、隠蔽かも。



湯の宿の食堂には

  本日、飲食無料 (元)魔斬の両腕提供

と大きな紙が貼ってある。

負担は書いてあるとおり暴走討伐の3人。

ひとり数千万ジョネン、3人で億稼いだので。



ここは、多くの人間が集まってから登場するのがいい。

中央の2つのテーブルには『英雄御一行』と札が立っている。



8時より30分速く食堂へ全員集合する一行、惜しい。

噂を聞きつけてよその宿から来ている者も多い、床で食っている。

中央テーブルの周囲は充分に余裕がある。


英雄にぶしつけな行動をするなんて有り得ないのだ。

まあ、これから多分毎日会える。

今日はタダだし、混雑は仕方ない。



ザン達が現れると、おおーと歓声が上がる。

もう出来上がっている者も多い。


イジワではなく、ザンが喋る。


「あー、皆さんおまたせー」

イジワと違って堅苦しくはない。

「あそこの紙に、『(元)魔斬の両腕』って書いてあるけど、これからオレ達はパーティー組み直して出直すから。

一番の理由は・・・これだー!」


ザンが両腕を広げ、ぐるりと一周して見せる。

ちゃんと本物の腕だと見えるように袖をまくっている。


ザンは多重思考ですべての声を聞き分ける。

少なくとも、声を出して不審がるものは一人もいない。

食堂は歓声に包まれる。


「金持ち―」とからかう者もたまにいるが、周囲の者に本気か冗談か分からないが殴られていたり。


ザンは周囲を観察しながら続ける。


「パーティー名は出来れば早めに発表するので待ってくれ。

あと、統合しないがオレ達と一緒に動くシンヨル・・・“新たなる夜明け”もいる。

彼らがいなければ、今回の魔物は倒せなかった」


シンヨルメンバーが一礼する。


刺客などがいれば、ユウが氷の檻に閉じ込めてくれるだろう。

そのユウ本人は特に挨拶しない。

そのうち嫌でも名前が轟き渡る、こんなところで披露する必要もない。



ザンは獣人メンバーをもちろん見つけているが、おとなしく飲食している。

こんな目立つ時に接触はしてこない。

Cランクになれるくらいなのだから当然か。


獣人リーダーの目に光るものが見えた気がした。




イジワは帰り、お風呂タイム。


ユウはルーナいじり(言葉で)も程々に、ルナノの体を穴の空くほど観察する。

本人以外にはバレているが、家に帰られたら終わりなので仕方ない。

さすが15歳と言いたいところだが、B程度か。


だが、決定的に何かが違う、正体不明のオーラ。

実年齢33歳のユウはなんとなく分かった。

必死過ぎず自然に、茶さんと決めなければ。




風呂から上がり、4人部屋に全員集合。


考えたパーティー名を言うはずだが、ルナノだけが『ザンユウと両手両足』と恐る恐る言う。

全員うんうんと頷く、そういう感じなのだが合う言葉がないのだ。



いや、野心家がいた。ロロ(ろろ)だ。

メモを取り出し、読み上げる。


『魔物をぶっ潰す 魔物から○民を守る ザンユウ新選組 ザンユウとなかまたち』


「ちょっといまいちばかりなのです・・・」

ザンとユウは絶句。

「○には何が?」

「国を守るなら国だな」


「ちょっと、新選組ってどこで?」

「昔の英雄が武闘派につけた名前だ。俺の知識は半端じゃねえぞ」


そうか、ロロ(ろろ)もエルフなのでかなりの知識を持っていて不思議ではない。

というか、英雄にもニホンの人がいたようだ。

前の神の時代なのだろう。


訴えられたくないので、最初の方の案は黙っていよう。



「パーティー名は“ザンユウ”にけってー!なのです」

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