知らせ
魔弓というのは、魔法を撃てる弓だ。
対象者は弓師で、魔法師が買うことはほぼ無い。
魔石が数個入り、使用済みは排出される。
オーガの魔石なら、威力によるが2~5発。
オーガ自身は魔力が出せず耐性もないが、魔石は魔力を出すものらしい。
下位の魔物なら威力も発数も劣る。
ショッピングにはいつ行けるやら。
ユウの転移でどこかで掘り出し物を見つけられる可能性もあるが、隠蔽が大変。
良い方法を見つけたいところだ。
忘れがちだが、一度行った場所やイメージに残る人がいなければ、見通し範囲にしか転移出来ない。
どこかの監視塔からこっそり、もありか。
ザンは以前ユウと来た辺りの奥地にいた。
最初はオークなどがいいのだが、そうもいかない。
見える範囲の敵は、毒グモ含め全方向問題ない。
さて、斬りを全開にしてみると・・・。
長過ぎる。
太くもなく、重量もないが、両手大剣より長い。
最初は短剣でいく。
腕が戻った分、感覚が違う。
前は肘で斬っていたのだ。
以前ダンジョンでウルフを殲滅した時を思い出す。
あの時は滅茶苦茶振り回しただけだが。
クモ・ヘビは無視してオーガを探す。
いた、瞬時に近づき、腕を縮めるようにして後頭部を斬りつける。
行くのが速すぎた、次は近くで待って間合いに慣れよう。
次のオーガは敢えて纏わず、素振りのようにジャストタイミングで斬る練習をする。
ごめんよ遊んでるんじゃないんだ、とオーガに訳のわからない事を心で叫びつつ、避けて背後に素振りして離れてを繰り返す。
オーガはいるはずの後衛も見つけられず、跳び回るザンに困惑しつつ必死だ。
やがて逃げようとするオーガに会心の斬撃。
疲れている相手なので参考にならないかも。
ここでテスト、ユウに念話を送ってみる。
(ユウ、聞こえる?)
(どうしたの!)
(今、森の前に降りた辺り。聞こえるかと思って)
(あせった・・・テストしとかないとね、おーけー)
(そっちからも1回頼む)
オフにしてすぐ(ザン、おーけーでしょ?)と聞こえた。
(サンキュー、邪魔して悪かった。じゃあまた)
(またねー)
ユウも単調な作業を繰り返す。
魔法陣の発動も色々なバリエーションがある事を今更気づく。
同じ強さのものを更に小さく凝縮すると強力なものになる。
気付かなかったのではなく、出来なかっただけか・・・。
狭い部屋でも、凝縮することで相当の魔力を消費する。
【無・勘】つまり集中とカンを研ぎ澄ましやっと気づく。
ほんの僅か、初期値の比率が増えているように思える。
つまり、右画面の増加分ゲージがやはり僅かに減っている。
改めて魔力量を感覚で探ると、ゲージ出現前と比較にならない量だ。
だが初期値が増えたかどうかは分からない。
ゲージに頼り切って、量を探るのが久々だから比較対象が無い。
増えているとしてもこの割合では何ヶ月かかるか。
これまでの事を思い出せば、何かのきっかけで加速する可能性もあり得る。
【無・舞】により10分で済むのだから、焦らずやればいい・・・。
それより、取り敢えず必要なことを思い出した。
「数分だけ見つからないようにナーラに行きたいけど、いいです?」
「うん、いまのユウならおうふく楽勝なのですね。
実験してらー、なのです」
魔力消費なら、転移も多い。
今や、一人ならゲージの減りも微妙だが。
癒やしの空撃ち・実質消費の違いはあるかも。
ユウが消えた。
ナーラのギルド、誰もいない応接へ。
不意に近づく者も【聴】で分かるので、問題無い。
(ザン、聞こえる?)
(おっ、どうした)
(城塞都市ナーラにいるの、問題なしね)
(おお、分からないけど世界中から通じそうな勢いだな)
(ほんとはロワの最初来た場所からやりたいけど、死体落ちてそうでやめたの)
(あはは、確かに)
手順通りザンからも呼び出しを試し成功。
(じゃあまたね)
(じゃあな)
ザンの“纏い”の剣は既に普通の片手剣程度まで伸びていた。
オーガを見つけては、まるでイジメているような罪悪感を持ちつつ『素振り』を続け、最後に仕留める。
普通の木剣でイジワと立ち会いするべきだな、と思う。
長さに一見慣れたが、形だけである。
もどかしい。
と、いきなりあの感覚が。
強敵をユウの協力で倒した場面が蘇る。
【斬】の能力が増えたが、まだ何も解らず焦る現状も。
ウインドを探すが、離れて行ったようだ。
能力を探るために来たのか?
再び近づいてきた、遠くに注意すれば辛うじて分かる。
弓? というか、矢が少し離れた木に刺さる。
再び去っていくが、追わない。
彼のやりたかった事が分かった。
時代劇も好きで見ていたんだろうな、と思う。
矢文だ。
恐らく、知らせるべき内容を選ぶために能力を調べ、離れて手紙を書いたのだろう。
好意的解釈過ぎるとザン自身思わなくもないが、ルナノを斬りつけた事以外全てザン達を助けてくれた。
ルナノを斬ったのも、選択肢が無かったからだろう・・・。
直接会話など、禁じられているかバレてしまうのか不明だがそんなところか。
能力があるとはいえ、戦闘力不明のウインドがこんな奥地に来て大丈夫か。
どちらにしろ、無理を押しているのだろう・・・。
矢に結び付けられた手紙を開く。
風車は付いていない、あれじゃ飛ばないか。
この世界の文字で書いてある。
準備が整ったら、セラルカ聖堂の鐘を13回鳴らせ