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ひとつの結論

「大事なことを言います。

決めつけず、順番に聞いてください」


ザンは覚悟を決め、話し始めた。

「マスターはすみませんが、中に居てもらえますか」

ジェギ達のようにマスターと言ってみた。


「ああ、任せます。また後ほど」

ギルド長が戻ったのを確認、ザンは重苦しく口を開く。



「なぜか黒煙を焚いたあと、ルナノに石を渡し、更に斬りつけて呪いをかけたのはウインドという人です。

オレのよく知る人です。


ルナノ、オレの袋に手紙が入ってる」


ルナノが手探りで手紙を取り出す、それ以外はルナノが整理してくれていたのですぐに分かったようだ。


「ユウさん、アリアさん、ルナノ、3人がまず読んでみて。


ルナノ、ウインドさんは一見粗暴だったけど、本当は繊細で丁寧、2つを使い分けてた。

オレとユウさんの世界・・・国の人だ」


ユウがその部分を読んだ。

「シンジロ、カナラズデキル・・・だそうです。

まさか、いるんですね!

でも、裏切ったなんて」



「彼は襲う直前にある能力で存在をはっきり知らせてくれました。

そして予言に合わせて黒いケムリ、大事な人を襲う・・・。」


「でもそんな・・・」

「ルナノさんに重症を負わせて?」


「そこです。

“魔断の風”リーダーが傷を見て、『内部はほぼ大丈夫、出血が続くのが危ない』と言いました。

そんな器用な斬り方が可能でしょうか?」


「もしかして、誰か“ハイヒール”とか使ったかい?」

「はい、『少ししか』魔力が通らないと」


「なるほど、考えられるのは呪法陣を表面にだけ掛けたってくらいかねぇ。

ハイヒール使いなら、内部に魔法が通れば重症部分は治るはず」



「わざわざ自分の名前をリストにかいていますね、2番めに」

ユウが不思議そうだが、意味は想像がつく。


「ああ、諜報活動の基本だねぇ。

事実を曲げて自分の名前を書かなければ、誰が書いたかバレバレだよねぇ。

さっきのをギルド長にそのまま見せるか、注釈付きにするか迷うけど・・・まあうまくやってくれると信じようか」



「そこまではいいんですが・・・良くないですが。

オレとユウさんを会わせるために、石を渡すのに、夢・・・予言を真似る理由が分かりません」


「ザンさんはどう思うんだい?」

「女神様・・・神様の計画に従ったのかというくらいです」


「うんうん、予言の成就・・・かねぇ」



「予言の成就?」


「うーん、単なる想像にすぎないけどぉ。

ユウが“呪われ”を殲滅したのはしってるよねえ」

「はい、鮮やかというか素早い行動に驚きました」


「情報を拡散したとたん、新しい“呪われ”魔物が湧いた。

動けない、不完全なやつがねぇ」


「いや、充分強いです。

どうすることも出来ず逃げ帰りました」


「だれか大怪我かなにかしたのかい?」


「いえ、決定的な攻撃が出来ません。

魔法を吸われ大きくなるし、呪法陣に対抗出来る者しか近づけません」


「ユウがいたらどうだろうねぇ・・・」



「・・・・・・

あっ、予言の成就の話は?」


「ああ、敵さんはあせってる、のかもねぇ。

全てが早まった可能性は大きいねぇ。


で、ウインドはもっとひどい結果になる前に、予言をなぞったんじゃないかい?」


「そんなことで・・・そんなことに意味が?」

「実際、ふたりが出会ってから黒いモヤ、なるものや襲撃はないよねぇ、いまのとこは」


「・・・・・・」




「大体わかった気がします、出来る準備をしましょう」

ユウは前向きな言葉を言ったがその通りだ。


「あ、あれ?

すごく僅かですが・・・何しろ離れているんで。

ゴザの“呪われ”魔物が動いています、なぜかこちらに向かって」



「こっちに来ている?」

「あ、いや、会って一時間かもうちょっと経つでしょうか」


アリアが懐中時計を出す。

「2時間くらいかねえ」

もうそんなに経ったとは、寝る時間・・・そんな場合じゃないか。


「2時間でやっと気づくくらいです、遅いです」


アリアが地図を出す、ゴザで見たのと同じだ。


「ゴザの北だったねぇ・・・まっすぐ来るとしたら最悪でも、森に入らなければ安全だけど。

ゴザ周辺には知らせないと、ギルドちょ・・・マスターを呼んでおくれ」


真似された。



ギルドを通じて、西側への魔物の移動が伝えられた。

アンテの特殊な通信網で城塞都市ナーラに真っすぐ進んでいることも。

公開されるのは予想ルートで、ナーラが目標なのは秘匿されるそうだ。



とりあえず他の皆には、ウインドは本当はこちら側の人間だが隠すように伝えた。




謎が解けたかはともかく、やるべきことはやったはず。



丸半日もの不休の旅をしたザンとルナノのために1階喫茶の厨房が開放された。

2人分の食材は残りで問題なく、全員分の焼き菓子も配るそう。


男性陣がわざわざ厨房から締め出され、女性陣がアピールなのか分からないが全員でああだこうだと作り始めた。


たった2人分だが・・・。



リリアが変なスパイスを入れようとして止められたり。

結局、ユウとルナノ自身が作った。

ユウはコンビニ弁当生活ではなかったようだ。


宿が近いので、夜中だがなんとか部屋を取れた。



ユウの感知能力で襲撃があれば気付けるという。

疲れた身体にユウ特製の清浄プラスアルファの魔法で元気も戻った。

寝る前なのに。

自重するが、本当に。



ルナノの体温を感じながら、残してきたイジワ達のことを考える。


イジワ達は煙と襲撃の妙な符号には気づいているに違いない、ウインドは通報者としか言って無いが。

あっちに本物のモヤと襲撃が来たらと不安だが、来るならこちらが本命だし、どうしようもないし・・・


いつのまにか眠りについていた。





寝るのが遅かったので全員早朝に起きることはなく、普通(8時くらい?)の時間のようだ。


とりあえず4人部屋に、8時なので全員集合。



忘れていた、ザンの能力の説明。

密室なのでちょうどよい。


主に、ユウに対して説明する。



【足・重・山】の物理能力からだが、空を飛んで来たことは披露済み。

重力方向の自由な切り替えを訓練した成果は、改めて。


研究中の【山】は、部屋なので自重しつつ押したりぶつかったりしてもらう。

自分の動きを中心に固定化できるが、防御に影響するかは分からないと告げる。



【多】と【視】、その連携。

うまく出来ていると指摘され、同意する。


【多】は選択的行動ほぼ限定で、自身の思考が速く・同時に多くなるだけである。

戦闘・剣技の上達につれ効率的な動きができるが、考えた瞬間にそのまま出来るわけではなく試行と鍛錬が必要。


【視】は【多】であらゆる視点が『分かる』が、感覚に落とし込むのに苦労した。

ズーム機能は大まかにだけ言っておく。

2つの美乳を前にして、究極の着衣内ズームインの誘惑に耐えているのだ。




あとは、『転移石』の試行結果や魔力消費をユウから説明する。



ユウが魔力を濃くした状態で、距離や人数が少ない事もあり連続使用しまくって問題なかったらしい。


ここで、ザンはゲージの存在を知る。

魔力の量や質、必要量まで分かるという。

空きスペースの有効活用、羨ましいがザンの場合何を表示すればいいのだろう、出来ないのに悩む。



転移石の話に戻ろう。

果たしてゴザまで戻りユウの、全員の協力を得て魔物を討てるのだろうか。

ユウは何度か使うことで転移石の性質を理解したという。


人数、これは重量ではなく概ね量の多さで魔力消費は増える。

距離も同じ。


可視範囲と行ったことのある場所なら直接イメージして行ける。

出現前に障害物など分かるので、重なってしまうことはない。

昨晩の狩場移動で分かった。


意思を持って触れることで同行できるのも実証済み。

ユウの場合【聴】で、部外者排除も可能のようだ。


問題は、未訪問の地ゴザへどう移動するか。


音速手前で12時間程かかった事を説明するが、秒速350メートル程度であることしか知らない。


学校を出て間もないルナノが計算。


~~~~

これらの時間や距離などの単位だが、疑問に思って調べたことがある。

同じという方がおかしい。


『5メートル』とルナノに文字に書いてもらう。

読むと、『3トーラ』と書いてあった。

つまり、言葉で会話する限りそのままで通用する。


商店などでは公式のメジャーを使うが、普段は感覚。

より細かい単位を使う方が無難、1メートルなんて言うと、0.6トーラくらい? 等々曖昧になってしまう。

~~~~


距離は約15000キロだそうだ。

想像つかない・・・いや、確か地球の外周は4万キロだ。


このアンテの地図は、一つの大陸だけで他にも陸地がありそうだと思ったが、これだけで一つの世界である可能性もある。

異世界が地球のようなものだとは限らない・・・平面かも。


話が逸れてばかりだ。




「ザンさん、ゴザに連れて行ってください、飛んで。

帰りは魔法を充電しつつ多くとも数回で済むはず」


また10時間以上か・・・ちょっと気分的にしんどい。



「可能であれば、多分音速の数倍でも大丈夫なはずですよ。

風魔法、これでいきましょう、温度も気圧も大丈夫です。

魔法を舐めないでくださいね」

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