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ザン、凱旋

ドーラからゴザへの2日の道中、呼び戻されることはなかった。


馬車もその御者もギルドのVIP専用なので、簡易通信石を備える。

お互い定時連絡のみだったようだ。



夕刻、ザン達の乗る馬車はゴザのギルド前に停まった。


よりによって冒険者の最も混雑する時間帯だったが。

後部扉が開き、“魔断の風”そして“魔斬の両腕”の面々がゆっくりと降りる。


ギルドに入ろうとしていた者たちは全員動きが止まった。

どうぞ、とさえ言えずに硬直する冒険者を横目に、ジェギが扉を開ける。


更に、受付を待つ者たちを横目に、奥側へと向かう。

受付に用は無い。



「みなさん、おかえりなさい!」

受付していたサエラが仕事の手を完全に止め、ザン達に最初に言った。

表情が崩れかけて危険領域だった。



つかつかと歩いて来る者もいた、4名の獣人だ。

マントに覆われながら、隠すこと無く見えるザンの腕に目が行くが一瞬だ。


恐らく、“魔斬の両腕”というパーティー名とともに、色々なことが既に知れ渡っていることだろう。


他の者達も全員が、尊敬や畏怖?っぽい目で見ているが、からかったりするものは皆無だ。

まあ当然か・・・。


「やったな、オマエら!」

親指を上げて見せた後、ザンに抱きつく獣人リーダー。

別に目立ちたいわけじゃなくこいつの素なのだ、ザンも受け入れる。



「2階に行くぞ!」

モスコが呼んでいる。


「じゃあ、また後で土産話でも・・・俺達に頼めた義理じゃないが」

「時間が出来れば話すよ、色々多すぎて大変だけど」


ザンは、ゴザで今まで一度も見せなかった腕を上げて別れた。



応接に6人全員座って待っているとギルド長ラダンが入った。


「応援要請を承けてもらい、感謝の言葉も無いです。

それとまず、おめでとう。“魔斬の両腕”の皆さん」


「こちらこそ、なかなか戻れずすみません」

リーダーのイジワが答える。



「順を追って説明しましょう。

最初に情報を持ってきたのは、とあるSランク冒険者です」


皆、ウインドの名前が浮かんだはずだが、確定ではない。

ギルド長は普段の人の良さそうな表情のまま、立って説明している。


「さすがに無下(むげ)にはできず、なんとか近くにいたパーティー、AランクとBランク2組、計3組の討伐隊を組みましたが、その日は戻らず・・・です。


今日『偵察隊』のみを出すことができました。


実は“呪われ”・・・いや“授与魔法”持ちだという情報もあったので。

目のいい冒険者と、遠見の魔道具を揃えました。

あとは、オーガに対抗できるBランクを探すのに苦労し、今日やっと出せたのです・・・。


最初の討伐隊10名のうち、8名が『干からびた』姿で見つかっています。

絶望でしょう。


ですが・・・。

手の施しようが無い様ですが、実はそうでもないのです」


「最初の一報で『植物』と聞いたように思うんですが、その事と?」

イジワが言ったが、確かにそんな気がする。



「そうです。

魔物は全く動かず、ある程度近づいた者だけから、恐らく体力や魔力など全て吸収する呪法陣を放つタイプのようです。

情報提供者はそれを知っていてわざわざ討伐隊を出すよう仕向けたとしか」



「ウインドさんですね?」

多重思考は使ったが、不確定なものは分かりようがない。

だが、ザンは口にしてしまった。



「・・・何か彼から聞いていましたか」

認めてはいないが、ギルド長が何か含むような物言いで続ける。


「アンテは彼を疑っていました。

あっさりとそれに合致するように動いた。

納得できない点が多すぎるのです」



ジェギが問う。

「あんたはアンテのどの位置に、・・・聞いても仕方ないか。

私のことはどこまで知っている?」


「あなた、と言うより“魔断の風”3人がアンテ協力者ですね?」

「そこまで知るなら信じていいようだな」



ザンは多重思考のパターンから、ある問いに辿り着く。

普段の思考には絡んでこないが、択一の問題の際は勝手に可能性を絞り込んで提示してくる。


「ユウさんは“癒やし”で既に“呪われた”魔物、つまり“授与魔法”を潰しているんですよね」


思考の答えというのは、このギルド長なら聞いても問題ない、事だ。

そして、重要な答えが得られる可能性がある。


「お気づきでしたか。

アンテの中心事物から、あなたとの関係は聞いています」




ジェギがまとまらない話を収束させた。


「今のところはだが、例の植物の魔物と戦うかどうかは選択の余地があるということだな。

ゆっくり、は出来ないが考える時間はありそうだ」




下に降りると、もう冒険者たちはいなくなっていた。


なんと、義手を作ってくれたサイクロさんが来ている。

計測と補修道具一式担いで来たようだ・・・。


「ふむ、剣の接合部には歪みはほぼ無いな。

肘側の可動部は軽く増し締めしておこう」


他の装具はメンテの必要はないだろう。



イジワ達は、預けていた宝石の鑑定依頼を出す。

なんと、Aランクでは10個まで1000ジョネン。

大量の宝石が数千ジョネンで済みそうだ。




宿は、御者が既にいつものところを手配してある。

馬車も置き場所が必要だし、御者は盗難防止に馬車に泊まるようだ。


宿は昨日から魔物騒ぎで客が減っていた。


ギルドも昨日はガラガラで、安全が広報された今日になって通常に戻ったそうだ。

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