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ザンへの手紙

第四章開始です。

「“授与魔法”の魔物は恐らく絶滅したようだ」


今日はひとり早めにギルドへ出向いたザンに、ギルド長ムダラは言った。


恐らくユウさんの仕事だろう。

敢えてこの情報を広めた可能性が高い、ザンの脳内での答えだ。


今日はそのために来たのではない。


ウインドの姿を見かけなくなり、いや、元から呼び出さなければ会えなかったが。

ともかく動きがあるはずだと、ギルドに来る必要性を感じたのだ。


ひとつの動きはあった。

「今日の朝伝わってきたことだが。勘が良いな」

「いえ、今日はウインドさんの事で・・・」


「ウインドなら、3・4日前に書き置きを残している」

封筒を手渡され、ギルド長は応接を後にした。




もしかしたら、ニホン語は無理としても簡単な英語で書かれているかもと思ったが、普通のこちらの文字だった。

滞在3ヶ月未満なのを配慮して、簡単な単語を使っているようだ。


いや、最後だけ懐かしい文字が。

カタカナ、ニホン語だ。



~~~~~~

俺はしばらく帰ってこない。


俺くらいになると、おえらいさんとの話でいそがしいんだ。


おまえにはわからないから書いてもしかたないが。


ちょっとややこしい事になるかもな。


何が起こっても、君の中で感じたことを信じろ。



シンジロ


カナラズデキル

~~~~~~



さすがに手紙では悪ぶることも無理、というかおそらくいつもの手紙もこうなのだろう。


明らかな違和感は、途中の『おまえ』と最後の『君』。


多くの可能性がある。

・一部の人間に向けては言葉遣いを変えていて、この手紙もそう

・自分ではなく他の人に向けた言葉の可能性


重要なのは、敢えて同じ事を繰り返して、ニホン人にしか分からない言葉で書いたこと。


手紙に封はされていなかった。


結論は出ないが、何が起きたとしても最後の2つの言葉は信じよう。




手紙を広げる事から再度仕舞うまで肘で可能だ。

テーブルさえあれば、装具の内側の革部分で押さえながら大抵のことはできる。


後は適当に魔法袋へ。


~~~~~~~~~~~~



対練での今のポイントの第1は、【視】と【多】であらゆる情報を集めることだ。

キャパオーバーになるくらいに。

処理は追いつくが、『感覚の慣れ』が大事だ。


第2は、【足】を使うポイント、何気に凄まじい威力を秘めているのだ。

それに【山】をオンにするタイミング。

跳ぶ瞬間オンだと地中に足が沈むし、(仮想の)巨大な魔物に蹴りを入れる瞬間オフだと弾き飛ばされる。


こちらも一旦多重思考で考え、瞬間的に出来るように繰り返す。



視界には3人がいるが彼らの背中からの映像も見えるし、後ろの魔法師組やその手元、背後まで見える。


普通なら気が狂いそうな感覚だな、と思い笑える程だ。





「ただいま」「ただいま戻りました」

最初のはイジワ、後のはオレ達夫婦だ。


「おかえりなさい、メイドさんは到着が明日になりそうです。

それとザンさんルナノさん、しゃちほこばらないでリラックスして。

わが家なんだから」


この世界にシャチホコは無いと思うが・・・似た意味が伝わってくるだけか。



「あっ、それと変異っぽい魔物と言うか植物がゴザにいるそうです。

オーガ地帯になるので、A・Bランク3組が向かったようですが」


「変異? “授与魔法”のヤツではなく?」

「そんなに巨大なんですか、あちらには監視砦も無いはずですよね?」

イジワとザンが続けて尋ねた。


「最初の一報はギルドの連絡網だそうですが、詳しくは・・・。

存在は間違いないようですが、“授与魔物”かどうかはまだ不明です」


「もし俺達が行くことになったらどうする?」

「近いですし、待っていますよ」



“授与魔法”のヤツはユウさんが殲滅したばかりだ。

ジェギ達含め、ギルドの上位陣は知っているはずである。


すんなり討伐されるのか、最悪の状況か、どちらかだ。

もしユウさんに倒せない程の“授与魔法”魔物ならば・・・。




考えても仕方ないので、リュリュさんとメイドさんが必死で作ったらしい料理をいただく。


野菜の切り具合は気になるほどでもない。

大事な肉の味付けなどは手を触れていないから安心して欲しい、そうだ。


あまり酔うのもアレだし、食欲が増すようにエールをもらう。

冷却はルナノだ。



プレイは無し、普通に風呂に入る。

ベッドでの一回だけだ。

なんのはなしかは内緒だ。



~~~~~~~~~~~~



朝一にギルドに行くと、ジェギたちもすぐに来た。


揃ったところでギルド長が言った。


「ゴザの昨日の変異討伐隊が戻ってこないそうだ。

日が暮れるまでに戻れたはずなのだが、一旦退避している可能性もある。

ギルドの御者をつけるから、討伐が分かり次第引き返すのも可能だ。

頼めるな?」


リュリュも既に一緒に出勤していて聞いていた。

頷いている。



普通の馬車より一回り大きく立派で、御者も訓練されているようだ。

本当なら一気に飛んで向かいたいが、さすがに5人一緒は無理だ。


2人ずつならできるかも?

女性に抱きついてもらい、背中に男性なら。

別にいやらしいことは考えてない、本当だ。



出発直前にギルド長が意味深な事を告げた。

「ウインドが行方不明だそうだ」


何か言いたげにしていたが、(きびす)を返して馬車から離れ、見送ってくれた。

リュリュも一緒に。

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