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ユウの挑戦

少しグロい場面有り。


いつもと同じメンバー、いつもと同じ練習。


既に昼食だが、漠然とした先行きの不安をユウは言い出せずにいた。

このままでいいのだろうか。



「今日は今から予定を変えるよ・・・ますよー!」

アリアだが、少女らしい言葉遣いだと、全員一瞬戸惑いの空白時間ができるのが嫌でわざとやっているのかもしれない。


よく考えたら、最初に会った時はおばさんだったが、実際の年齢は様子からすると100歳とか、な気がする。


ロリおばさん、いや、まさに王道のロリババアか。



ザンさんなどは喜びそうだ、これがロリババアの実物か、と。




一旦街に戻り、商店街の端っこあたりの大きな建物に。

赤い十字の旗がある、前の世界と全く同じか。

病院らしい。


女神様、いや神様が関係しているのかもしれない。


割と広い庭には、やはり全く変わらない、看護師らしき女性が車椅子を押している。



アリアが受付に一言かけ、待つと大きな冠・・・ナースキャップをつけた女性が現れた。

キョロキョロと誰かを探している。


キャップの前中央にはエメラルドのような澄んだ緑の宝石が埋まっていた。

「カーシェッテ、来たよ」

「ヒィッ、アリア?」


「あれ? 変わらないのは分かるけど、呪われたはずでは?」

「直せたから来たんだよ、カーシェッテ」

「とりあえずこっちへ。カーシャって呼んで、わざとらしいから」



太ってはいないが、キリッとした目が貫禄を物語るベテランナース。


「ここの院長でカーシャ、わたしの古いお友達よー!」

「アリア、呪いが脳に転移したのね・・・」


「あたしゃ、昔からこうだ・・・こうだったでしょー!

このめむばー達から、言葉遣い注意されたのー!」


額を抑えて、院長であるカーシャさんが呆れている。

いちいち若さアピールが大げさ過ぎる、絶対わざとだ。



薬も使うが、魔法による治療が中心だから女性が医者で院長もあるのだろう。

聞くと、医者には教会の司祭上がりの男性も多いそうだ。


緑の宝石は、独自の魔道具だそう。



冒険者姿や怪しいローブはまずいので、全員白衣を着せられた。

通路を進み、1階の一番奥へ向かう。


「隔離病棟、ですか?」

「よくご存知ですね」

思わず言葉にしたユウに、カーシャが答えた。


「隔離ではなく、目立たぬよう裏から入ってもらい、隠れてもらったのです」


「“癒やし”の大実験なのよー!

ついでに人助けー」


「頭痛が痛いな」

スベリ芸でシンクロしてくるロロ(ろろ)



隔離された区画に入ると、なんとなく異臭がしてきた。


「一番奥の、彼から診てもらえますか」

「ちょっと待って下さい」

ユウが、前もって【舞】を使う。


「伝えてあると思うけど、魔力を高める舞闘術だ・・・なのよっ!」

「もうちょっとお静かに」


「わかったのよっ。


手順は、まず詳しい病状を聞いて、そのうえでユウの診断も行う、のよっ。

今日できるだけの患者を診るけど、無理だったとしても何日でも通う。

のよっ」


「10年解けなかった呪いを解いたと聞きましたから、期待はしています」



異臭のする部屋には一人の青年?が横たわっていた。

サーシャと6人が入ると、他の医者や看護師は全員部屋から出た。


彼は右手右足が無く、顔面も右側が(えぐ)れている。


「“悪魔教”の被害者です。

実験に使われて、捨てられていたのをアンテ関係者に発見されました」



伝染病だとしたら、マスクもしてないが大丈夫か。

いや、専門家もいるので心配ないのだろう。


「薬品や呪い、様々な事をされたようですが・・・。

本当の原因も分からずお手上げです」


ユウは【聴】を働かせるが、言われた通りの複合であることしか分からなかった。

あっ、【勘】も使って探ろう。


「毒状態が強いです・・・」

あまりに強すぎてゲージが点滅しない、足りない。


ふと思いついて踊り始める、もしかしたらこの感覚は。


【無】を使って、更に舞う。

狭い病室で前後回転できないので、その場で手を動かしつつ回る。


ゲージが橙色から明るくなる、少しづつ。

今まで白黒だと認識していたはずだが・・・今はどうでもいい。



もう明るくならない、“今の”限界だ。

点滅がギリギリ、【想】【無】(維持と集中)で減らせるはずだが、最初点滅しなければ使えない。


加減すれば使えるのは使えるが、大きく効果は下がる。

思ってもみなかった弱点だが、そのうちなんとかなるだろう。

何か見落としている気もするが・・・。


新しい技術、満量からの光量増も見つけた。



「それでは、ユウ、イキます」

病院なので詠唱もおとなしめだ。


黄緑色の輝きとともに、3分の2の魔力が失われた。

クラクラっとなりよろけ、ルーナに支えられた。


「解毒はまだ未熟なようです。

ギリギリの点滅から3分の2消費です」


細かい説明はしてないので、院長には不明だろう。

ゲージの色の事は後でアリアに話そう。



「では、次は明日ですね。ポーションでは間に合わない程の魔力でしょうから・・・」


「いえ、2分ほどで大丈夫です」


全員隅っこに集まって場所を空け、ユウが踊る。

2分で満杯、ゲージを明るくする。


「解呪、ユウ、イキます」

1回1回が本気だ。



水色の光で呪いは消えた。

「3分の1消費です。例のアレって呪いは弱かったみたいですね」


カーシャだけは分からないが、他の全員は頷いていた。



あとは“治癒”。

大きな欠損は、大教皇クラスの使う“聖級”でしか治らない。

果たして、ユウにできるのだろうか・・・。



【聴】に、【無】と【勘】を加えて探る。

必ず複合して使うことで、思わぬ効果が発見できるはず。


ゲージが点滅している! が・・・

点滅量は200%をかなり超えている。


ゲージの3つ目の画面に、『仮のゲージ』が見える。


助けられない。


部屋には先程までの腐臭は消え、傷口のニオイが漂っていた。

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