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ザン、完敗に乾杯

スタミナはついた。



「“魔斬の両腕”の皆さんにはこちらで宿を用意させていただきました。

お風呂もありますし、良い宿ですのよ。

しばらく滞在していただきますので、お荷物はお持ちになってください」


奥さんである、ラーラさんからだ。

リュリュさんが、本人いわく45歳だそうなので、単純に見た目の2倍だとしても100歳近いはずだ。


聞けないが。


既にギルド長には話してあり、連絡の心配は無いそうだ。


荷物を全部魔法袋に詰め込みチェックアウトを済ませ、しばらく一緒に歩く。


商店が無くなり、住宅街だ。

あちこち出かけた経験では、町の最奥部になる。

城のような壁のある邸宅もある。



「こちらです」

宴会後は、リュクサーは一言も喋らず、奥さんがずっと案内してくれる。


ペンションか、こちらでなんと言うか知らないが。

対練などにはちょっと狭い程度の庭のある、上品な宿だ。





「おかえりなさいませ。おめでとうございます」

20歳くらいのメイドだ。


「驚いたかね?」

満を持したリュクサーのひとことだった。



元々、リュリュがメイドと住んでいた家だった。

魔法を使った自家発電・・・ボイラーだが、給水施設付きの風呂がある。

入ってすぐにリビングダイニング?で、奥側だけ2階になっていて8部屋もある。


元々来客用の部屋があるので、とりあえずの収納や寝床は問題ないそうだ。


「うちから若手のメイドをもうひとり連れてきますのでお待ち下さいね。

それまでお手数をおかけすると思います」


ルナノが少し慌てる。

「あの、私達にもメイドさんをということですよね?

それはあまりに・・・」



「今までずっと宿だったんですよね」

ラーラに、リュクサーもやっと話に加わる。


「ルナノさん、ここは現実的に考えようじゃないか。

私らは娘を宿暮らしにさせたくないし、“魔斬の両腕”を離れて暮らさせたくもない。

君は冒険者であるし、主婦のような家事は似合わない。


メイドが不要なら、いつでも追い返して構わんよ」



このおっさん、いやリュクサーさんも食えない人物だ。

『追い返して構わん』なんて言われたら断れない。

というか、助かる。



ここはオレのターン。


「イジワが主役ですが・・・、ここは私から有り難くお受けいたします。

何か条件があれば別ですが」


「はっははは、条件は言ったとおりだ。

それより、イジワ君も君たちも、リュリュを孤独にさせないよううまくやって欲しい。

都合さえ付けば、どこにでも連れて行ってやってくれ」


2人は宿へ帰った。




宴会でたっぷり食べたので、軽食と軽く1~2杯。


風呂はメイドさんが沸かそうとしたが、ルナノがあっと今に沸かす。

貴族御用達の発熱魔法具にちょっと魔力を通したそうだ。


主役のイジワから入る。

まだ一緒には入らない模様。



ルナノに初めて体を洗ってもらえた。

戦いは起こらなかった。

防音を確認していなかった。


夜は、清浄の魔法具があるから心配ないだろうという話だ。



~~~~~~~~~~~~



ある事を確かめる。


イジワとザンの対練だ。

ザンは少ししか動かず、剣を受けるだけだ。

多少でも強く捌くとイジワの剣が吹っ飛ぶだろう。


一旦イジワはバックステップ、合図だ。


速すぎる。

4・5回打ち込まれたところでザンが言った。

「まいった!」



~~~~

昨夜軽く飲み食いしながら、ザンはなんとなく話していた。

イジワの、最初にオーガを倒した動きについてだ。


「明らかにそれまでと違う一瞬の動作だったけど、あれがもしかしたら」


「ああ、あの時が初めてだった気がする。

何度かオーガには使ったが、少ししかもたないし、疲れすぎた。


昇格試験でかなり続けて使ったが、疲れて見たとおりだったよ」


「今はもう普通に使えそうだよね?」


「普通に、と言えるかどうか知らないが、“恩恵”のおかげでずっと続けて使わなければ大丈夫だ」


「神速、って言ったっけ?」

ルナノが一応ルノワの本も読んだことが有り、教えてくれていた。

色々な技を使ったそうだ。


どこまでホントかわからない、という注釈付きで。



「多分な」

後は、防御無視の『神の突き』とか。

『兜割り』で思い出したが、後は多すぎて忘れた。


イジワが愚痴る。

「他の技は存在さえ怪しいな。

見栄っ張りの子孫のせいで困ったもんだ。俺もその一人だけど」

~~~~



これだけ速くとも、本来ザンがこれに当たることは無い。

当たらなければどうということはない、なんて言わない。

強い味方だ。


またなんか生えてきそうだし、『神の突き』とか。



ザンが相手の体に当てないようにだけ気をつけ、ほぼ全力での3対1の訓練が続く。



その日は、暴走終了間もないが中ボスと変異種発生があった。

イジワがボスを倒し、ジェギ達も唸らざるを得ない。


「英雄パーティーの再現だな」


公爵の殴り込みに立ち会ったジェギ達全員が、イジワの本名も素性も知っているのだ。




リュクサーさんがまた訪ねて来るかと思ったが、来ない。

リュリュに聞くと、もう帰ったそうだ。


娘の結婚と、その相手の自慢を早くしたかったらしい。



ルナノとリュリュに改めて、イジワの“天賦の才(ギフト)”とさらなる可能性について報告する。

それを(さかな)に乾杯。



風呂の防音は確認した。


多少漏れるが、声を我慢するのがたまらないのだ。


第四章前のザン編まとめ、です。

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