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ザン、スタミナをつける

結局その場での父親からの返答は無く、今夜会食をもうけて話をすると言う。

“魔斬の両腕”メンバー全員に参加して欲しいそうだ。



父親の名前は、リュクサー・ラミルス。

公爵というのは貴族でも『かなり偉い』、子爵は下から2番目。


英雄の右腕の子孫ということで、かつてのリュクサーはルノワ家に興味を持ち、数度例の剣を見に行ったという事だ。



そもそもルノワ家が誕生したのは、平民だった『英雄の右腕』ルノワ本人の功績が認められたからである。


その剣には別の名前があったらしいが、子孫はその二つ名を有難がって名前を変えたらしい・・・。



ルノワの物語も本として出版されたが、余計な圧力で話が誇張されまくっているらしく現実味に欠けており、人気がない。




「いきなり来たもので、ごめんなさい。

でも、驚きました・・・」


「仕方ないよ、親なら当然だろう。

話の内容もだいたい察しが付く、大丈夫だ」


イジワは自身の話はもうしなかった。




公爵ともなると、やはりドーラでも最高級のレストラン・・・ではなかった。


寂れた感はあるが、小綺麗なレストラン。

客はぼちぼち。


「ここはこの周辺で知る限り、最高の料理を出す。

儲けが少なくてこのざまだが、必ず私はドーラではここに来る。

旨い料理を楽しむといい」


普通の食事会のような事をいう、父親。


「条件があるんだが、聞いてもらえるかな?

もちろん嫌ならこちらも出来る限り譲歩するつもりだ」


「あの、結婚を許していただけるんでしょうか?」


「あっははは、すまんすまん。

まずはこちらの話を聞いてもらえるかな」


機嫌もよく、感触は良いのだが肝心なことは最後まで言わないようだ。


「知っていると思うが、英雄と大魔法師は魔王討伐後姿を消した。

ふとしたことから、英雄の右腕と呼ばれた剣士の子孫が居ることを知り、居ても立ってもおられず長旅を経て訪ねた。

戦っておったよ、きみのじいさんは」


「あの祖父がですか?」


「ああ、君の父親もだ」


「!!」


「2人とも似たように、オーガで挫折したそうだ。

腕利きの家来を失って、命からがら逃げたということだが運だけは有ったようだ。

2人とも何度か会って英雄話で盛り上がったよ」


「そのような話は一度も聞いたことが有りません」


「恥、と思っていたのかもしれんな。

少なくとも才能がない事を身にしみて感じたんだろう。

数代を経て、君に才能が顕現したわけだ、家出まですることで。

天賦の才(ギフト)”を得たか」



「・・・・・・条件とおっしゃるのは何かお教えいただけば。

ラミルス公爵閣下」


「すまんすまん、能力の詮索はタブーだったな。

あと、呼び名はリュクサーで頼む。今のところは」


あれ?イジワは否定しなかった。


「条件というのは、“魔斬の両腕”のお2人にも多少は関わってくることだ。

必要なら相談してからでも構わない」


3人で顔を見合わせる。


「結婚は、英雄の右腕の子孫でAランク“魔斬の両腕”のイジワことアレン・ルノワとリュリュ・ラミルスの名前で行う。

でないと、自慢できんだろ?

それが私の条件だ」


しかし、それではイジワの家に居場所がバレてしまう。


「いずれは君の名前は故郷に伝わることだろう。

オヤジさんかジイさんが飛んでくるかもな。

そうなったら私が全力で助けてあげよう、全部知っとるからイチコロだ。


絶対に冒険者をやめさせたりはさせんよ。

後は夫婦で勝手にやればいい」


イジワがオレ達を見た。

2人とも無言で頷いた。



「リュリュ、おまえにも確認がある。

式は明日午後にでも空いた教会で行う。

その辺で中古のドレスでも買おう、いいな」


「はい、ありがとうおとうさん」


「キミらは冒険者の正装であるその格好で構わん、というよりそっちがいい。

そういうのを一度見てみたかったからな・・・。

この6人だけで構わんが、連れて来たい者がいれば来るといい。」


「しかし、公爵という身分では家族の結婚は一大事、他の貴族に・・・その、舐められないように贅を尽くすと聞いていますが」


「私はそういうのが嫌いでな、変わってると言われるが。

こいつとも駆け落ちしてな、貴族同士だが色々周辺と揉めたさ」

奥さんを指差して言い、彼女も笑っている。



リュクサー・ラミルスは質実剛健、場合によっては手続きふっ飛ばしの豪快な人物だった。


エルフに似合わず。



夜のうちに、明日結婚式という知らせが関係者に伝えられたようだ。

式のみ、冒険者としての装備で参加求む、というリュリュの書簡とともに。




翌朝、イジワのやることは指輪を買うことくらいだった。


ザン同行で貯金を全て持っていったが、20万ジョネンの質素な指輪だった。

ザンのときと同じく見た瞬間気に入ったそうだが、宝石屋の在庫が多すぎてそのくらい割り切らなければ選べなかった事だろう。



式参加者はリュリュ親子、主役のイジワ含む3人と、ギルド長それにエリルさん。

ギルド事務員などは、公爵家の結婚式など恐れ多くて来れないようだ。


ギルド長は正装で来て浮きそうだと思ったが、空気を読んで仕事着だった。

エリルさんの初めて見る、『夢見る瞳』が忘れられない。



そういえば、緊張で最初こそ味が分からなかったが、昨日のレストランは美味かった。

今日も出来れば行きたい。


ルナノも言っていた。


「スタミナがつきそう」だと。


今回は何も起こらずごめんなさい。イジワにとっては色々大事な話でした。


最後に深い意味はありますん。(R15規制)

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