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ザンと手癖の悪い仲間

「一夜だけのあやまちだったんだろ?」


「過ちなんかじゃない!」

自分で言ったくせに。

イジワがこんなに声を荒げるのを初めてみた気がする、仲間以外のことで。


「一緒に飲んで、雰囲気がそうなって・・・。

前からずっと気になってたし」


「付き合うしかないんじゃ?」


「ああ、覚悟が決まったよ、ありがとう」

あっという間に出ていった。


何しに来たんだろう、自慢か?

いやいやいや、本当に相談したかったんだろう。


というか、よく思い出してみると多重思考がどうとか考えた記憶があるが、めっちゃ分かりやすく背中を押しただけである。

恐らく、元々好きあってたに違いない・・・。




練習中は特にイジワに変わった所はなかった。

明らかに剣速が上がってモスコがギブアップしているが。



ザンはまず【視】の完全習得を目指す。

全方向だけでなく、相手の姿をずっと捉えていることも可能だった。


イジワとモスコを加え、3対1でもおこなう。

それぞれを捉え続ける事も可能で位置関係も把握できるが、感覚に落とし込むのが難しい。


更に、数十メートルであればズームアップも可能で、それがどこからの視点であるのかも分かる。

やはり、視点の位置が分かっても直接判断するには慣れが必要だろう。


同時に【山】も使えるが、練習を中断すると困るので使わない。



既に上下方向への飛行を隠さずに使える事で、習熟にはいい。


対魔法でも、地上に降りずに飛び回ることで魔法師2人の魔法速度向上を共に目指せた。




「リュリュさんに結婚を申し込んだ」


夕食でいきなり告げたイジワに、ルナノはもちろんザンもビックリ仰天だった。

付き合うのは普通として、いきなり結婚とは。


「普通に付き合うんじゃダメなのか?」

「男として責任を取る」


ここで流石にルナノも何があったのか気づいたようだ。


「ねえ、結婚したとして、依頼で移動するだけじゃなくて別の町に留まるかもしれないでしょ?

何ヶ月も掛かる遠くで何か起きたら、ザンと一緒に行くことになるだろうし。

そういう時の事は考えてるの?」


「その時に決める。もう了解はもらってる」

2人がえっ、と声を出した。


「申し込んだんじゃなく、決まった、でしょ!」



~~~~~~~~~~~~



2日ほどで【視】にも慣れてきた。

もちろんさらなる能力発展と技術向上を目指す。


練習に【山】を組み込む余裕ができたが、こちらが普通に剣を捌こうとするだけで相手の剣が吹っ飛んでしまう。


体へ打ち込むことは避ける。

ヒールがあるとは言え、結構大変なことになりそうだ。



【多】の想定する、飛行状態や空中停止だったりあらゆるパターンで【山】を試していく。



動かざる、というのは空中を含め、体全体に適用され吹っ飛ばされることはない。

自分で動くことは出来る。


【丈夫な体】で割と平気ではあるが、打たれれば痛みはあるし斬られればおそらく意味はなさそうだ。



こっそり、馬車など重いものを持ち上げてみるが、体が固定され重量が無くなったように持ち上げられる。


体が耐えられるか、巨大な岩などで今度試したい。





夕刻前、リュリュさんが闘技場に現れた。

エルフらしい夫婦が一緒だ。



「イジワというやつはどいつだ!」


これは例のパターンではないか。


「ごめんなさい、突然来たので。

結婚するとだけは、ギルドの・・・私用通信で伝えたんですが」


父親も母親も・エルフらしく?スマートな体型だ。

父親はそれに加え多少ガッシリしている、剣術などやっていそうだ。


「ラミルス公爵家の一人娘に手を出すとは不埒者め。

イジワというやつ、出て来い!」


ギルドでも地位があるようだったが、身分が関係するのか。


いや、実力で偉くなったのかもしれない。



イジワがつかつかと歩み寄ってゆく。


「イジワと申します。

Aランクパーティー“魔斬の両腕”所属の冒険者です」


父親は、Aランクよりも、“魔斬の両腕”と聞いてビクリと反応した。

跪くイジワを上から下まで観察する。


「貴族式の礼儀だけは知っているよう・・・


・・・剣をみ、見せてくれるか」


剣に興味があるのか。


恐らく、あの剣はルナノと横領した金で買ったはず。

結構な高級品だ。

練習時も常につけたままだ。



イジワは少しだけ躊躇ったが、腰から剣を外し、手渡した。


「これは、ルノワ子爵家に伝わる『英雄の右腕』では・・・ないのか?

なぜこれを持っておる。

まさか、盗んだか!」


イジワはルナノを見ると、ルナノが頷いた。


「我が家の家宝です。

はい、冒険者になるために盗んで参りました。

本名はアレン・ルノワと申します」


「間違いなく英雄イジルと共に冒険した剣士ルノワの物と伝えられる剣だ、この手に持ったこともある。

アレンが家出したというのは聞いていたが・・・」


「恥ずかしながら、貴族を捨てた身です。

娘さんに釣り合うなどとは思っておりませんが」



「はははは、あっはははは、こりゃ愉快だ!

どうせ『冒険者なんかに』、などと猛反対されたんだろう。


父や祖父の果たせなかった夢を、家出までして果たしてしまうとはな。

こりゃ愉快だ、あっはははは」



ザンはイジワの才能の一端が分かったような気がした。

英雄パーティーのメンバーが祖先、か。


でも、そんなことよりも・・・

イジワ、いやアレンか?どっちでもいいけど・・・。



おっさん、結婚を許すかどうか早く言えよ!

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