ユウ、悟りを開く
底上げと癒やしの練度上げは続く。
魔力の量は目で見るようにはっきりと認識できる。
これは、ずっと前からだ。
ルーナさんに尋ねると、普通は、例えれば『空腹感』のように大体で分かるそうだ。
初心者魔法師はこれが把握できずに戦闘中倒れる者もいる。
これ程はっきり魔力量が認識できるのに、視覚化出来ないのはなぜ?
いや、出来ないのが普通だけども。
まずは、はっきりしている魔力への知覚を研ぎ澄ましてみる。
自分で視覚化してみる、PCの表計算ソフトみたいに。
目を瞑り、きっちり細部までイメージ。
もちろん【聴】で敵も探りながら。
あることに気づいた。
魔力量は胸で感じている。
おっぱいではなくて、胸の内部、心臓あたりか。
脳内の“レベルと能力”の画面の中央に心臓で感じる魔力を重ね合わせる。
敵は大丈夫。
同時に索敵もやってるので、帰ってからやったほうがいいかも・・・。
と、画面中央・・・違う、一段後ろに心臓からの情報が重なって見える。
濃淡でしか分からない、やはり無理か。
頭では『量』で分かるのに。
一旦忘れて、索敵と癒やしの練習に戻った。
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宿の酒も食事も上々。
最近はウイスキーとほぼ同じのを頼むが、こっちでは水で割ったりしない。
魔法で冷やすので、氷が溶けたりもせず濃厚だ。
ほろ酔いで風呂へ。
昨日からの観察から分かったのは・・・ユウ自身が狙いすぎということ。
ユウのおっさんアイをまず止めることだ。
そして本気でルーナの妹になる。
よって、ルーナの吸い付きには満たされることが出来る。
そして、忘れた頃にリリアの母性をくすぐるのだ。
『千里の道も一歩から』
おっぱいは深い。
おっぱいは人生そのものなのだ。
ユウは悟りを開いた。
そして、ルーナに思い切り抱きつく、抱きつく、抱きつく。
本当の妹に。
おっぱいなんてどうでもいいのだ。
妹になりきって、ルーナの吸い付くようなおっぱいに擦りつく。
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「ユウ、狩りは次の地域へ移動させるよ」
「まだ結構残ってますけど?」
「全部倒してから移動って、もし敵が把握してたら見るからにおかしいだろ?」
なるほどである。
次にやるとすれば、大陸中央の火山帯、の南西の端っこか。
普通は弱い、アースドラゴン(種類としてはトカゲらしい)だ。
魔力的に言えば、弱いというには違和感がある。
周囲の同種の中では一番弱いのを狙うが・・・。
地図を指差す。
「この辺のアースドラゴンでやってみます。
魔力的にはぎりぎりかもしれません」
太極拳のように、腰を落とし、右・左と流れるように腕を回す。
魔力ゲージ満杯だ。
あれ?
ゲージが出来ている!
ゲージは満杯だが、増えたはずの容量が見えない。
右外側にスペースがある。
【舞】でちょっと前回転してみる。
右画面が濃くなった。
まずとにかく普通にやってみよう。
突然回転したので皆首を傾げている。
「あとで説明します」
手の動きに戻り、今までの魔力イメージと同じ様に思い浮かべる。
いつもと同じ手順で満杯まで増やす。
魔力量は1.5倍、増えるのも幾分早い。
果たして足りるのか・・・。
脳内の最後部、更に右枠外に全体の半分増えた魔力が見える。
左端一部以外点滅している。
まさか?
「ユウ、イッキまーす!」
潤んだ目で見つめるルーナ。
成功した。
しかも、点滅部分が消費して残ったのは予想通り、僅かだが。
倒せたことを皆に告げ、アリアに質問する。
「このアースドラゴンの種類は・・・この前のは亜種でしたが、相当強い魔力を宿すようなんですけど。
前見たとおり、大きな呪法陣でしたし。
少しだけ増える量はアップしたんですけど、前に比べて消費が減ったような?」
「ユウ、あれから恩恵受けたり練習もしてるだろ?
最初の魔力量自体増えてるはずだし、威力も増したんだろうね」
「なるほど! そうですよね」
自分だけで考えていると視野が狭くなるようだ、いくら【勘】はあっても。
「新しく分かったことまとめて後で報告します、色々」
「次いってみよぉー」
ダミ声じゃないのが惜しい。
光が飛んできた、“44”、また2レベルだ。
こんなに上がるのは、別種でももう無いような気がする。
よく言うフラグとかじゃなくて、【勘】だ。
次を狙う宣言をして踊る。
魔力増量はレベル上昇に比べ鈍って、50数%、60行かない。
だが今度はゲージを見ながら狙えるし、恩恵による強化もあるはず。
2匹、アースドラゴンでギリギリ行けるのを見つけ撃破できた。
やはりレベルは上がらないが、後は積み重ねだ。
離れた場所から連日狙えるのだ
。
シンヨルのみんなには悪いが、オーガより遥かに効率は良いはず。
ユウは魔力ゲージと点滅の話をする。
全員信じるしか無い。
連日のビックリ人間祭りだ。
「まるで、この“呪われ”狩りを想定したような能力ね。
ユウちゃんすごすぎる!」
「魔法師の待機中に使うことが出来れば強力ですね。
“癒やし”も以前消費が不明だった事を思えば、安心して使えます」
茶さんのフォローがイケメン過ぎる。
「でもいいのか?
俺達にこんなに全部話しちまって。
スパイでもいたらどうするんだよ」
ロロが空気を読まずに言う。
だが確かにそれも絶対無いとは言えない?
「スパイはいるよ」
全員の動きが凍ったように止まった。
アリアを見る。
他のメンバーを見ることはない、有り得ないと思っているから。
「スパイはギルドのアンテ協力者にいるよ。
情報は適当に流してるから安心しな」