ユウ、開花?
ベットでユウは色々思い浮かべていた。
一見強めのオーガから続けて狙ったが、いきなり倒せた不思議。
【舞】の違和感。
リリアのおっぱい。
いくらでも考えることが出てきて・・・・・・
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翌朝は何もかも忘れていた。
早い朝食を満喫。
ハムと卵をはさんだサンドイッチは最高だ。
前の世界よりおいしいかも。
「朝はギルドの受付に顔だけ見せるよ。
丸一日行方不明だと心配だろうから」
なら、夜に顔だけ見せるべきだったと思うが別にいい。
昨日と同じ様に踊る。
いつもの違和感。
【勘】にもスイッチがあって入れっぱなしだ。
頭の中の【舞】スイッチがある?
オンにしてみる。
ググッと魔力量が減って・・・違う、魔力容量がグググッと増えている。
魔力はそのまま・・・最大値が徐々に増えてゆく。
色んな動きを試すが、腕をゆっくり回す『太極拳』のような動きがいいみたいだ。
ちょっと基本だけはやったことがある、足を曲げ、腰を低くする。
「ほう、武術かい」
アリアに全く説明せず夢中になっていた。
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「へえ、もう『勘』の域を超えてるんじゃないかい?
自分の事がよく分かる能力、とでも言うのかねぇ」
さっきからうろついていた毒スパイダーが来た。
「クモがいます、右に離れてオーガです!」
リリアの定位置が正面方向で、アリアの位置が後ろである。
「で、どのくらい増えるんだい?」
「分かりやすくなるようできるかもです。
いまのとこ3割位、でしょうか」
「どんどんやってみそ、大事な時にまとめて報告でいいよ」
満杯になってこれ以上増えない、というあたりで思いついた。
頭の奥の画面、レベルの数字と増えた能力は常に見える。
それぞれ意味が簡単だが分かる。
中央の何もない部分はそのうち埋まると思っていたが、このままだと何百レベルとかにならないと埋まることはないだろう。
新しい能力で、よくある『ステータス』みたいな物が見えるのか期待はしていたが。
何か出来るかも、というのは単なる勘だが、それ自体が能力という不思議。
あらゆる事に使えそうだし、何より自分の能力で分からなかった事まで解き明かしてくれる。
この【勘】自体に何かあるような気までしてくる。
結局、帰る時間まで脳内表示の変更はできなかった。
そんなに簡単に出来るわけはないと思いつつ、常にヒントが無いかと探るようになっていた。
「大丈夫ですか?」
遠くを見つめうわの空のように見えたのか、茶さんが声をかけてくれる。
嬉しいが、これは仲間としての心配だろう。
「はい、ありがとう」
ニッコリアピールを忘れない。
アリアはギルドで定時報告。
汚れた鎧やローブだけ洗い、とりあえず全員集合。
8時前だが。
アリアが帰ってきた、忘れてた。
「ユウの舞闘の秘密がわかったよ、ほら、ユウ」
言わせてくれるんだ、さすがアリアさん。
「えーといまのところ魔力上限が3割くらい増えます。
さらに踊ると満杯にすることができます。
手を回してる時は上限上げ、他は魔力上げです」
そういえば、魔力上げの効率化を忘れてた。
それだけでも、他の4人はポカーンとしている。
ビックリ人間だ。
まあ今更だが。
食事はおいしかった、風呂だ。
今日はカンを養うためのリリアパイの観察だ。
きっと、きっと、あの山を超えてみせる。
みなさん見ていてください。
わけのわからないことを考えつつ、ルーナパイに吸着しつつされつつ時は過ぎた。
「それじゃあみんなおやすみ、ゆっくり休むんだよ」
「これからユウの“呪われ”狩りですよ!」
マジメなリリアがツッコむ、アリアの狙い通りだ・・・。
「最近ボケちゃってねえ、ゲホッゲホッゲホッ」
20歳の体で言われても。
完全にボケの方向性を見失っている。
「若返ってるのに何を言ってるんですか!」
しばらく他の全員で観察、終わるのを待つ。
「あのアリアさん、もしかしてオーガは魔力的に耐性がなかったりするのでは?」
「ほう、さすがだねえ。
その通りだよ、オーガは筋力や敏捷性は魔物の中でもピカイチだけど、魔力に対する耐性は皆無と言われてるね」
「やっぱり。いきなり強いはずのオーガを倒せたんで変だと思ってました」
「見えた魔物で倒せそうなのを選んだんだよね?
それでいいし、おそらく今後は見分けも倒すのも、もっと良くなってくるはず」
【聴】で魔物を探る。
その地域で一番強そうなオーガを見つけた。
これも“呪われ”なのか・・・。
いや、“呪われ”の中で一番強いだけか。
昨日おとといと一匹ずつ倒したが、増えている。
同じ場所ではなく、ばらばらに。
「まだはっきり分かりませんが、“呪われ”は増えているかもしれないです。
ウイルス・・・伝染病のようなものかも」
「今後は可能なら複数倒していく必要があるかもしれませんね。
原因はまだ分からないですけど」
リリアだ。
「うん、今日一匹は確実そうだから、踊りながら余裕を見て2・3匹狙えたら狙おうか」
「そんなに・・・やってみます!」
まずは手を回転させるように、太極拳もどきを舞う。
回復では、サーシャのマネをして回転したり試すが、前後転系がいいようだ。
増やし、満タン。
これは準備しなければ使えないが、この“呪われ”狩りにはぴったりだ。
「イッキまーす!」
緊張の瞬間だ。
増えた状態の3分の1ほど消費でイケた。
また踊っているうち恩恵が届く。
やはりもう簡単に“レベル”は上がらないか・・・。
みんな固唾を呑んで見ている。
一応倒したかどうかとか、色々実況は入れている。
「次は初めてのオークです」
「あれ、オーガを最初に倒して・・・ああそうかスマン」
ロロがストレートに発言してくれるのは助かる面もある。
「魔力は大きいんですね、オークの方が生意気に」
ルーナがよく分からないが腹を立てているようだ。
一匹で以前のフル容量分使った。
違いが見たくて、もう少し呪いの強いオークをフル充電からなんとか仕留める。
「スッカラカンに近いです、今日はもう無理です」
そんなに疲れるものではないが、根気が続かないのでギブアップ。
光が来て・・・“42”、2つめは変わらずだった。
やはり、『初見』扱いの討伐は“恩恵”が上がる。
これで更に、魔力増と【勘】の精度が上がってくれればいいが。