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ザンの問い

ザンは丸1日の休息後、ジェギといつものように対練していた。


休んだとは言え、ジェギの体調は万全ではない。

それでも届かない。



多重思考は多くの選択肢を教えてくれた、いや自分が考えているのか。

ただただ反射的な動きに任せていたが、実は違った動きもあり得るのだ。


文字を読む必要はない。

浮かぶと同時に全てが分かっている。


戦い方のバリエーションは劇的に増え、ジェギも感心している。



だが、考えて動いたのではまるで意味がないのである。

瞬時に動くための『カン』が必要だ。


多重思考にまるで意味がないのではない。

自分に欠けていたやりかたを磨く、そこだ。




(かわ)すだけではなく、剣をいなす、()らす。


時代劇のチャンバラというか殺陣(たて)のように剣をぶつけ合うとか話にならない。

正拳突きに正拳突きを当てるような、マンガの世界である。

第一刃が持たない、いや“纏え”ばありかもしれないが。



実は、“纏える”長さは伸びている。

“授与魔法”オークの首を飛ばしたのもそのせいだ。

ルナノの小剣より少し短いくらいか。


ゴザのサイクロに手紙を送るか、こちらで職人を探して武器と木剣の変更をしようかとも思ったが、このままでいくことにした。

実戦では大きな利点になるだろうし、練習ではもっと上を目指したい。




実はジェギの剣をさばくだけではなく、その場での【重】移動も使っている。

まだ完全にモノには出来ていないが、『その日』も近いだろう。



・・・そして、ザンは気づいていた。


ジェギにはまだ見せていない技があるはずだ。

森で見た変異オークとの戦い。

ジェギがあの程度のはずはない。


普段はジェネラルやもっと強い魔物と戦い、生き残っているのである。





あらゆる動きにおいてザン自身変わった。

イジワとルナノにもアドバイスし、全員の戦闘は洗練された。

だが違和感も感じていた。



これからザンはより洗練された戦いができるだろう。


それは本来(つちか)うべきだった剣技で、ザンには足りなかったものだ。

とっさの判断も間違う確率は下がるだろう。



だが本命は恐らく、『この先』だ。


まだ想像もつかないが、この【多】を進化させることで何かが見えてくるような・・・気がする。



~~~~~~~~~~~~



ウインドさんを探すのは簡単だ、普通は違うらしいが。


ギルドでリュリュさんに耳打ちすると彼女はギルド長の元へ向かう。

しばらくすると

「冗談じゃねえ、人をいいように使いやがって」

などと悪態をつきながら現れるそうだ。


ザン自身は応接室で待っているので、そう聞いただけだが。



ウインドさんはバイブ付きポケベルならぬ通信石を持っている。

もちろんギルドのお偉方専用だ。


ザンなので、さん、つまり3回光るとオレの呼び出しだそう。

どれだけニホン好きなんだ。





「すみません、こっちの都合でいつも呼び出して」

「いいよ、こっちも楽しいから。

また不思議なことでもあったかい?」



“授与魔法”オークについては聞いてある。

(おおやけ)にはなっていないが、対“悪魔教”の結びつきと“アンテ”関係者のみに情報共有されている。


“授与魔法”モンスターが発見討伐されたのは3例のみだ。


無い両手を見るとたまに思い出す、あの障壁ドラゴン。

そして先日のオーク、その2匹はザンの手による。



もう一例、西の火山でのアースドラゴン亜種だ。

恐らく既にもうこの世界の各地にいるのではないかと思われる。


討伐できた者だけがその存在を知っているのだ。




「以前から思っていたことを話します。

こんなでいいのかと、ずっと思っていたんですが・・・相談できる人が、ウインドさんが身近にいることを思い出したらいても立ってもいられなくなって」


「うん、あまり自信はないが、答えられる範囲で答えよう」



「オレの能力についてです。

まだメインの能力は発展途上ですが、これだけ自由に動ける能力があってそのおかげでAランクにもなれました。


でもこれはもらった能力で、言ってみればインチキ、チートってやつです。

こんなに楽な思いをして、仲間はもっと努力しているのに」



「なんだ、夫婦関係かと思ってたよ。

私は結婚こそしていないが、以前は女と暮らしていたこともある。

まあまあのアドバイスができるかと思ってたんだが。

相手が処女なら、最初の頃はまだ良くは思えないから・・・」


「ウインドさん・・・」


大事な事を聞けたような気もしたが、本題に戻って欲しい。



「うーん、まず君の状況を整理しよう。

34歳のおっさんが13歳くらいになって15歳の嫁さんをもらって。

そこは関係ないな、すまん」


この人わざとやってないか。

あまりに真剣なオレに力を抜かせようとしているのかも。



「はっきり言うと、君は両手を失った。

私なら2ヶ月は・・・いやずっとかも、部屋に閉じこもっていると思うよ。

それが努力でここまでになった。

スゴイ事だとは思わないかい?」



「確かに多少努力はしましたが、能力あっての事です」

思っていた事だ。


ウインドさんは考えている。



「1億以上いたっけ、ニホンには。

その中で2人だ、宝くじどころじゃない」

「それって運がいいってことですか?」


スウェーデンにも宝くじはあるのか。

問題はそこじゃない。



「すまん、例を間違った。

恐らく、もっと前からニホンでの適格者を探していたはずだ。

それが2ヶ月前にやっと2人そろって、ここに送った。

どんな条件だったっけ?」


「確か、能力を受け取ることが出来て、こちらに来ると思える人間です」



「こういう世界に憧れる人間って結構いるんじゃないかな。

その中で、能力を受け取ることが可能な人物か。

それってただの運なのかな?


君には元々それだけの器があったと。

ニホンでも君は同じになれた気がするよ」



元の世界で重力に逆らって飛べる人間なんていない。



何を言ってるんだこの人は。

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