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ザンの斬、その意味

ウインドさんはザンの見た夢を、聞く前からより詳しく、自分なりの解釈を含めて語った。


例えば、黒いモヤの結末が思い出せない理由。


あの時点では絶対勝てない相手だったはずだが、今ではそうでもないだろう、将来には打ち破るイメージしか沸かないはずだと。



わけの解らないこともあるが、女神様に会い部下とこの世界を救うための話を続けたことは信用できると思う。


隠し玉を持つ可能性もあるが、ウインドさん自身は強くはない。


ジェギは強く、かつ信用できるはず。

彼らが味方に付く保証さえあれば・・・。




まずは、できる範囲でウインドさんに自分の能力を語った。

2人で話す時は普段どおりでいいと言うが、オレの場合かえって難しい。


「オレの能力は『とにかく』斬る。

ですが、今の状態では範囲が短く何が切れるのか不明です。

サブ能力で丈夫な体をもらって、これは部下によるとビンゴだそうで」


「あのおかしな動きと速さは後から()えてきたんだな?」



毛のない人が聞いたら怒りそうだ。


「脚力と吹っ飛ぶ能力の組み合わせです。

10レベルごとに生えました」



「よし、“魔断の風”を訓練相手としてキミらにつけよう」

「そんな事が?」


「依頼としてやらせる。

ギルドマスターを通せば問題無い」




イジワとルナノには、ウインドさんが同じ国から来て同じ体験をした人だと伝えた。


『限られた時間』の事も。



ウインドさんがSランクである事も知った。


Sランク所持の条件は単純に強いことではない。

もちろんかつて『英雄』と呼ばれた人たちはSランクだったらしいが。


例えば対“悪魔教”の組織 “アンテ” の重要人物などや、人の素性を見通すことのできるウインドさんのような特別な存在がいるらしい。




翌日からは、“魔断の風”には正式に依頼が出された。

名目は『兵器と装備の実験』だそうだ。



イジワはひたすらモスコと打ち合う。



ザンはまずはジェギと対練する。


懐に入れば打たれ、避けようとすれば勝てない。

この壁を超えなければならないのだ。




新たな訓練がルナノとエリルの協力で行われた。

ルナノの訓練も兼ねて魔力切れ手前まで行う。



試験にも使われた対魔レンガを積み重ね魔法の的にする。


的は両端にあり、そこに交互に打たれる魔法へザンが跳び、斬る。

斬るだけなら最初から出来たが、連射スピードが上がるにつれて移動も纏うことも難しくなる。


エリルの魔法は、とにかく速い。

ルナノも連射速度、到達速度、魔法容量と地味だが上がった。




数日後、変異オーク発見の報が入った。


変異、しかもジェネラルと呼ばれる個体がやはり変異の群れを連れているという。



「依頼の一環として、共同討伐を頼む。

ジェネラルはザン君が仕留める事」


ムダラの(めい)であった。



~~~~~~~~~~~~



ゴザの森の奥地と景色こそ変わらないが、異様な気配が充満している。

『魔素』と呼ばれるものらしいが、異常に濃いのだ。



「近いぞ」

さすが、ジェギさんの感覚は鋭い。


2匹の変異オークだ。

オークのくせにオーガ並みの速さで跳んでくる。



一匹ずつの頭部に炎の槍が刺さる、だが頭はまだある。

丈夫過ぎる。


つまづいて転がるオークの頭部にジェギとモスコが剣を突き刺す。

こめかみ辺りを突いたようだ。

勉強になる。


ザンも26にレベルが上った。




一気に6匹、でかいのはジェネラルだろう。



ザンは『先手必勝』とジェネラルへ跳んだ。


正確には飛んだ。ジェネラルが跳び込んで来る前に倒す。

他はこの戦力なら任せられる。



真っすぐ飛ぶザンをジェネラルは余裕ではたく、はずが消える。


ザンは既に首の後ろを突き刺し、えぐりこみ、更に力を込める。

“32”と見えた。



背後では後衛へ向かうオーク2匹の目をルナノとエリルが潰しイジワが先程のパターンを繰り返す。


ジェギとモスコが一匹づつ、剣を強固な腕の振りで弾かれながらも、余裕で背後に回り首に飛びつき、刺す。



イジワも残り一匹を何とか同様に倒せた。



ほっと一息、残った変異種がいないか警戒しつつだが。


足元に見覚えのある赤色の魔法陣が。


例の魔法陣だが、これまで見たものと違う、と思った。

自分と、Aランク3人だけだ。



反射的にザンはとんでもないことをする。


そうするのがベストだと、頭に浮かんだ多くの選択肢から選んだ。

魔法陣に斬りつける。


地面を切っているようなものだが、明らかに手応えが違う。

ザク、ザク、と音を立てて魔法陣が切れていく。

少し、力か生気か吸われた気がする・・・。


魔法陣は消散し、生気が戻った。



今までのザンなら、残り全ての魔法陣を斬りに走ったはずだ。

その選択肢もあった。


それを無視して、最良の行動を選ぶ。



ザンは跳ねた、そして【重】を上に向け上空へ飛び上がる。



いた、変異オークより小ぶり程度のオーク。


こちらには気づかず、魔法陣を見て残虐な笑いを浮かべて。



最高速でオークの背後へ飛ぶ、いや落ちる。


停止した瞬間にはオークの首は飛んでいた。




皆は?


魔法陣は消えていたが、3人とも倒れている。

ルナノがエリルから順に気付けのヒールをほどこす。


ジェギだけは無理に立ち上がろうとしていたが、動けず。

ヒールを受けてやっと歩けるようになった。





イジワがエリルをおんぶし――うらやましい、いやオレは妻帯者だ――ザンはモスコをおぶり、おっさんの感触を十分味わった・・・。


スローペースだが1時間は歩き、やっと安全圏へ。

ジェギが絞り出すように言った。



「斬ったり飛んだりはともかく、“授与魔法”らしきやつを倒した判断は見事だった。

初陣のザン君がいなければオレたちは・・・。

しかし、アレは一体何だったんだ」



あの魔物の事含め、帰ったらウインドさんに聞かなければ。



脳内右下には【多】の文字、“多重思考”らしい。


次話より第三章です。

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