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黒いユウ

“能力を看破する天賦の才(ギフト)”と聞いた途端、ギクリとなるほぼ全員、アリア除き。



ユウとリリアが警戒するのは当然だ。リリアは自身もだが、主にユウの事で。


一方、相手パーティーメンバーには、まさかバカ正直に最初から明かした事への驚きだと、ユウにも理解できた。



「ご心配なく。

味方であれば望まれないのに“視たり”はしませんから。

第一、アリア殿にはすぐにばれる、と思うんですが。

これは視なくても分かります」



「ああ、ユウさん・・・茶色ユウ、茶ユウさんとでも呼ぼうかねぇ。

何もされてないことは・・・それだけだけど、分かるよ。

あと、殿とか嫌だから、全員呼び捨てか()()付けくらいで頼む」


なら私は黒ユウか。

これはひどい。




「わたしはルーナ。親を恨むわ」

「オレ、私はロロ(ろろ)だ」


・・・・・

短い。



ギルド長がフォローする。


「彼らはずっと同じパーティーでやってきた叩き上げだ。

Aランク最初の依頼だが、フォローするメンバーを探していた。

出発には余裕があるから、まずは親睦を深めて欲しい。

・・・それとこれを」


“新たなる夜明け”メンバーに渡されたのは紐付きの巾着袋。

アレか。



彼らが宿を先に出た理由は諸々の食料や道具など、先に買いに行ったようだ。


山のような荷物だが、魔法袋は持っていないらしい。

ギルドが貸与するので、量は数分の1になる。



小声でリリアが教えてくれる。

「ルーナっていうのは伝説の魔法使い、女の子に名付ける親が多いの」


有名人や主人公の名前を子供につけるようなものか。

嫌がっているようだが、立派過ぎる余程の人物・・・というか、娯楽も少ないだろうからそういうのは目立つんだろう。




片付け終わると、最初に喋りかけてきたのは茶ユウだった。


「すみません、先に言っておくますが僕は握手しません。

隠したい能力まで分かってしまいますんで。

細かい個人情報までは分からないですが、誤解を受けて恨まれる事もあって。

それとユウさん」


まさかのご指名です。



「この間はすみませんでした。

視えたのは年齢だけです」


工工工エエエェェ!




そういえば、一瞬とは言え触れたのだ。高速回避されたが一瞬だけ。


「真っ白で、完璧な隠蔽術でした。

それ自体悪意のあるものではないとすぐに分かりましたよ。

神聖な力でした」



ちょっとまずいので、手招きをして彼を部屋の隅に呼び寄せる。

ルーナに睨まれている。その他全員は不思議そうだ。


両手で口を覆いながら小声で伝える。

「12歳ということで、内緒でお願いします!」

彼は頷いた。



すごい成果だ。


 ・実は大人の女アピール

 ・秘密の情報の共有


特に後者は大事だ、となにかの雑誌で読んだ事がある。

これでおっぱいも独占、一石二鳥!




それからは簡単に得意技などを極めて適当に話す。


勿論隠し玉もあるかもしれないが、味方であれば詮索する必要もないだろう。



ロロ(ろろ)は『必中の弓師』だそうで、魔物の目を射るのが得意。

ルーナは風魔法のカッターを中心に牽制担当。


そして、茶さん・・・ペッとか言ってしまいそうだ・・・。


茶ユウさんは、実質このパーティーをのし上げてきた人だ。

彼が魔物の弱点を確実に見抜き、2人の協力で仕留める。


おかげで全員が“レベル”を上げてここに至ったのだろう。



彼はパーティー結成以前、以降にも1人で無茶をしたらしく『神速の剣』と言われる程と、残り2人が自慢する。


仲はいいようだし、悪い人達には見えない。



リリアは居合斬り。


ユウ、黒い方は予め決めた通りの説明。

火・水の無詠唱・連続射出、まあそんなところ。

時が来れば勝手に並列(同時)射出してしまうだろうが、その時はその時。


アリアはほぼさっきの紹介通り。



「あっそうです。茶ユウさんとか黒ユウとか、色々めんどくさいし嫌だし、何か呼び名変えませんか?」


「あんた本気にしてたのかい?

それぞれ役目は違うし、ある程度独立して動くから身内は呼び捨てて必要時にはユウさんとか言えばいいんだよ・・・」

「あっはい」


他の全員、えっという感じでアリアを見ていた。

全員本気にしてたと思う・・・。




2頭が引く、いわゆる2頭立て馬車が2台もあった。

こっちがVIP待遇ということっぽい。


パーティー別々では情報交換もできないし、味気ないのでそれぞれのユウを交換。


ユウさん、アリアさんに襲われなければいいが・・・大丈夫か。

いや、リリアさんの方が・・・もうやめよう。




ゆっくりと馬車が走り出す。


・・・いったいどこに行くんだろう。

いったい何を討伐するんだろう。

全く何も聞いてない。



「ユウちゃん・・・ごめんなさい、ユウさん、どうかしました?」

ルーナさんが心配そうだ。


さっきは緊張してたのか厳しい目で、特に茶ユウさんを手招きしたときには睨まれたような気さえしたが。

相手は12歳の子供だから当然かも知れないが、めちゃ優しそうだ。


ロロ(ろろ)さんは飄々と?窓から景色を眺めている。



「ユウちゃんでいいですよ。

ルーナお姉さんって呼んでいいですか?」


うああああ、これはあざとい。

自分でツッコんでしまったがこれで行こう!



「実は今度の敵がどのくらい強いかよく知らなくて。

アリアさんは平気平気って言うんですけど・・・」


「ファイアドラゴンだけは厳しいよな」

あ、ロロ(ろろ)さん喋った。


「だから、アリアさん達が付いてきてくださるのよね。

ユウ・・・ちゃんも頼りにしてます」



突然【聴】がオンになった。


イノシシ12匹か、このままではどちらかの馬車に衝突しそうだ。

特に停まる必要もないだろう、単なるイノシシだ。


「えーと、天窓から外見たいです」

ルーナお姉さんが台を持ってきてくれる。

「開け方分かるね?押さえてるから」


空は、雲が切れ切れだが晴れている。

まだイノシシは見えない。ボアだったか。


森を抜けて姿が見えるまで・・・ぎりぎり見えた。



同時射出禁止なので、シパパパパパパパパパパパパ、と氷槍連続射出で12匹仕留める。


ロロ(ろろ)だけが見ていて、ひっくり返らんばかりになっている。

「あれ、おま・・・ユウさんがやったのか?」




「はい!」

天窓から顔を引っ込め、にこやかにお返事。

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