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ユウ、スポーツで発散する

夕食では、例の舞闘術の話で盛り上がった。


「それが、素早く避けるんじゃないんですよ。

(かわ)しながら、多分剣は全部受け流して・・・見えなかったですけど。

ほんとにゆっくり踊ってるんです」



「ええ、あれは凄いと思いました。

相手の少年たちもかなりのものだったようですが、あれ程流れるような動きは今までどんな舞闘家でも見たことがなかったですわ」


「ああー、もうちょっと早くやめとけばよかったねー。

日が暮れる前に見に行けたかもしれないのにぃぃ」



アリアがテーブルに突っ伏して残念がっている、皿の肉に直接噛みつきながら。

器用というか下品過ぎる。




「憧れるけど、魔法使いには関係ないですよね。

氷壁もありますし」


「そうかねぇ?ユウの氷壁は絶対防御になりそうな気がするけど、解除しないと中級は撃てないよねー。

それに回避しながら撃ちまくる魔法師なんて、かっこいいよねー」


アリアの言葉に、ユウはくるくると攻撃回避しながらアローを撃ちまくる自分の姿を想像した。



「ブレスや対魔法に対してはありでしょうけど・・・」


リリアの言葉はもう耳に入っていなかった。




その夜、ユウは興奮していた。


性的に、ではなくて。

サーシャさんのあの舞いを思い出すうち眠りに落ちた。





翌日からユウは舞闘魔法使いになった。〔つもり〕



風魔法で体を浮かし、魔法を撃つ。

横風で左右に動く、というより吹き飛ばされなから。


アリアは避難して離れている。


リリアも何事もないように離れたところで魔物を斬る。



2人とも最初呆れながらも、最初に言っていた練習さえ出来ていれば文句は言わない。

ただ、変なクセが付きさえしなければいいのだが。



そんなこんなでやっていると、結構あちこち自由に飛んでいるようなのである。

回転こそしないが、浮遊魔法かと思えるレベルかもしれない。


ただし、風か強くて近づけない。


明らかに舞闘ではないし。



「そろそろ帰ろうか」

少し早いが、アリアもあの舞闘の催しを見たいのかもしれない。


「ふう、めちゃくちゃ疲れました・・・」


「結構楽しかったかもねぇ」

「お、おつかれさま」





その日、あの舞闘の催しはもうやっていなかった。


舞台を片付けるのは、この町のルールか何かで毎日必要なのかと思っていたが、数台の馬車も消えていた。

見た限りでは、あの程度の儲けで他の町にまた移動できるのか疑問だが。


見れなかったアリアさん、かわいそう。




ユウは細かい動きは見えなかったものの、あの美しい踊りははっきり記憶した。


あれが目標だ。





次の日も、風魔法の練習のついでに、本当の訓練もしたようなものだった。


きのうは丸1日風吹かしっぱなしで魔力が1/5くらい消費したように思えたが、それ以上に筋肉痛と体の疲労がきつかった。

今日は魔力消費がほぼ感じないくらいに減り、吹かせるのは自分の体の周囲のみになっていた。

体も平気。


たまにくるりと回転してみると、アリアがすごいすごいと歓声を上げた。



リリアは呆れているというのか、もう見ないふりをしていた。


アリアが言うには、

「こういう一見バカみたいな遊びが、新しい魔法を創ったり、とんでもないものに結びついたりするんだよねぇ。

それで普通の訓練が出来なきゃ本末転倒だけど、出来てるから何も言うことなし!」

だそうだ。


バカみたいと思われていた・・・まあ確かに。



美味しいご飯を食べ、疲れ切った体で満足とともにぐっすりと眠りにつくユウであった。



~~~~~~~~~~~~



「3日練習出来たけど、今日は共同討伐の顔合わせだよ」

突然だ。いきなり朝言うとは。


ああ、初めての経験にユウが緊張して眠れなかったりしないように考えてくれたのかもしれない。



「あの方たちかもしれませんね」

あの方、と言えば心当たりはあの『茶髪の君』のパーティーしか無い。


舞闘に夢中で忘れていた。

ストーキングスイッチオン!


害意を感じなければ自動発動しない、使えない能力だ。



同じ宿だった。

風呂があるのはここだけらしいから、当然かも知れない。


あ、宿からもう出ていく。どうやら違うのか・・・。




朝食をとり、準備を済ませギルドへ向かう。


ララに連れられ応接室に行くと、『まさに彼ら』がいた。

ストーキング能力、やはり使えない。

目の前なのに。


以前、自分達の座った所に彼らは腰掛けている。



ギルド長は別の椅子に腰掛け・・・立ち上がって私達を迎える。

ララに(うなが)されて座るが、こちらが上座では?


ああ、そういうのはここでは無いのかも。

3人とも怪しいフードを外すが、まだ怪しい。




ギルド長は我々の方に手を差し出し、言う。


「まず、私の立場から正式に紹介させてもらうよ。

Sランクのアリア殿、そして、その下で特殊訓練を受けたユウ殿とリリア殿だ。


つい先日、あちらの2人は便宜上冒険者となった。

だからランクに意味はない。

後はそれぞれご自分でお願いします」



いきなり衝撃の事実・・・と言う程でもないが、Sランクだったとはビックリだ。


彼のパーティーメンバー達からも緊張が伝わった。


「あたしゃアリア、Sランクだけど、これコネだから、コネ。

ただ、絶対邪魔にはならないよ。この2人に任せっきりだろうけど。

まあ司令塔ってことで」

よく分からない紹介だが、能力などを自ら言う必要は無いそうだ。


聞かれることもない。

どうせ分かる。



「わ、私はユウと言います。

魔法使いです。

得意は火と水と光魔法です。

よろしくおねがいします」


クラス替えの時の紹介か、と自分でツッコむ。



「私はリリア、剣士ということでお願いします」

そういえば元のランクはBかAか・・・、聞いていない。


元は魔法使いだった剣士か、言わないけど。




向こうも3人、この世界は3人パーティーが多い。

あっもう終わりか、という感じで慌てている。


ギルド長が座ったままあちらに手を差し出し、とりあえず紹介。

「こちらは新進気鋭のAランクパーティー、“新たなる夜明け”です」



まず、リーダーらしき茶髪の彼だ。


「私は・・・私もユウと言います。剣士です。

敵の能力を看破する天賦の才(ギフト)で成り上がった新米Aランクです」


皆さんも体を動かして発散しましょう!

(余計なお世話)

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