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ザン、素人脱出?

この世界の雨の話だが、神の恩恵で決まるそうだ。

例えば、雨の必要な農村では必要分だけ降るとか・・・。


都合が良すぎると思うが、実際に今代の神になってからはそう信じられ、これを否定する人もいないようだ。


まだ他の冒険者たちとは怪我の後はちゃんと話していないが、うちの2人はそんなの当たり前という感じで言う。




訓練は続いていた。

但し、ザンの腕には既に短剣のセットされた義手が付いていた。


正確には義手というより肘に短剣を固定する装具だ。

“纏える”場所だ。



レベル25になって変わったのは、一言で言えば『勘が冴える』ようになった事。


自由に跳び好きな方向に“落ちて”も、大体で止まり次の移動に移れた。

いきなりの進歩だった。もう激突は無かった。


『素振り』でも、どこで切り替えればピタリと止まれるか分かる。

分かってもまだ完全にできるわけではないが。



「えい!とりゃ!そりゃぁ!」

と、変な掛け声が聞こえる。


ルナノがいつもに増して変だ・・・。




短剣の脱着も一応練習する。


カチッと鞘に戻し、カチッとまたセットする。

ここから剣をローブから出す際に布が切れてしまい、前側は切れ目だらけだ。


慣れればなんとかなるだろうが、しばらくこのままで行こう。



短剣用のアタッチメント付き鞘はローブの内側前面に『逆ハの字』に付いている。


ここを肘で押せば短剣がセットされ、もう一度鞘に押し込めば収納できる。

鞘の上側には、硬いが表面は滑りやすい革が縫い付けてあり、収めようとして布を切ってしまうことはまず無いだろう。


いざとなれば短剣なしでも“纏えば”切れるのだが、建前上必ず使う。



練習用の木製短剣も作った。



練習用はイジワとの対練に使う。


最初、【重】だけでやってみたが、横に『落ちて』移動するオレに翻弄されて勝負にならず。

そこで、その場から動かず、体捌きと剣での受けのみで練習する事に。


イジワも同じ事をしているが、リーチの差はあるがいい勝負だ。

恐らく2人ともに体捌きのみならず、立ち会いでの勘が鋭くなった。


これは予想外に良い鍛錬になったと思う。



ちなみにこの最初の対練で思いついたのが、【重】のみの移動『素振り』だ。

何もアクションせずに、最大限の移動を行う練習。


【足】【重】複合の『素振り』と併用した。




仕上げとばかりに、全力とはいかないが相当なレベルで動き回る。

ちょっと酔った。


そのまま、2種類の『素振り』を行い、もう1度動き回り・・・。

何度繰り返したか、平気になり、もう1度・・・と。



「帰るか」

イジワが声をかけてきた。


いつの間に日は暮れかかっていた。




完全ではないが、もう実戦に出る時期だろう。


本当に高みを目指すなら。





帰りはサイクロの店に寄って、武器装具の緩みを見るが異常なし。

結構イジワの木剣を受けたが、大したものだ。


長期での保ちを見るため、敢えて補強などはせず。



~~~~~~~~~~~~



夕食。


また手伝われないよう、気をつけて食器を扱い何事もなく無事に1人でできた。

ルナノも何もしてくる様子はない。


なぜか無言の食事だった。

何かあっただろうか、思い出せないが。



ルナノはスプーンやフォークを洗いすぐ戻ってきた。


今日はイジワが食器を下げに行く。

木剣を片手に持っているが大丈夫か。


「そのまま練習してくる。3時間は絶対戻らない」

何だこれは。




「ザン君、お話があります」

「はい」


テーブルはまだ置いたままだ。床に直に座る日本風というか、ルナノと斜め向かいにいる。まあいつも話をする時はこうなのだが。


ここの習慣では、個室に入ると靴を脱ぐので床には寝っ転がり放題、日本スタイルだ。

椅子が置いてあればまた変わるが。




「ほんとうは、怪我をしたあの晩に言いたかったけど。

それからもずっと言おう言おうと思ってた。


くっついて、触れて、ザン君の温かみを感じるだけで幸せだからもうずっとこれでいいかって、思ったこともあった。

だけどやっぱり耐えられない、このまま何も言わないとか。


でも、わたしってずるいなーって思ったの。

ザン君が落ち込んでる時にそれにつけこんで。くっついて。

だから、大丈夫になるときまで待とうって・・・。


ザン君はもう大丈夫なんだよね。

明日から狩りに行こうって言ってたし。

もう戻ったよね、前のザン君に」




ザン君ザン君って、今更照れくさいけど。


何か言った気がするけど、もう大丈夫なのは間違いない。

以前より戦う覚悟は出来たと言ってもいい。

能力に裏付けされた戦術で魔物を倒す、いやまだまだ未熟だが。


「うん、もう大丈夫。前に戻・・・いや、前より覚悟はあるよ」


恐らくオークは問題無い。

いや、オークでこそどんな戦いが出来るのか知り、一撃必殺の急所斬りを磨かなければならない。


オーガからは【重】の本領・・・・




「ずっと一緒にいてください!ずっとずっと。

ザン君のお嫁さんにしてください!」



もう告白されていて、自分も拒否していなかったはずだ。

分かっていた気がする。


結婚はいきなりだと思うが、この世界なら普通なのだろう、多分。



「うん」






イジワは裏庭にいた。

2人で近づくと気づき、剣を振るのを止める。


そういや、自分とイジワ以外練習するのを見たことがない。


真面目な日本人と真面目なイジワ、いや自分は【丈夫な体】で体力が余っているだけかもしれない。



「まだ30分も経ってないが・・・おめでとう」

ルナノの表情とローブの上から絡みつく腕で察したようだ。


オレは微笑んだつもりだが、変な表情はしてなかったと信じる。



「俺は1人部屋に移るよ」

「え?」

「当たり前だろう。決定事項だ」


い、い、い、い、い、い、いきなり初夜キタ━━━!!


「今日は遅いから、明日からだ」

あ、そうか。ほっとしたような悔しいような。



「イジワも戻って。色々相談したいから」

ルナノの言葉で気づいた。結婚式とかどうなるんだろう。


日本の結婚式を思い浮かべると憂鬱になるが、ここは違う。




3人だけが仲間だ。


すごく普通の、純情な展開でした。

(R15なのでカットされたシーンあり。)

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