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ザンと名工

今日も練習日和。


この世界、この地方かな、雨が少ないイメージがある。

ダンジョンに行く前に2日連続雨で休んだ記憶はあるが。


雨が降ると、魔物も休みらしい。実際はどこかに隠れるとかだと思うが・・・。



いつもの練習場だが、おや、2人の練習パターンが変わっている。


離れたところから、ルナノが魔法詠唱と思われる数秒間動かずその間にイジワがダッシュして打ち込む。

ルナノは剣で受けて横へに逃げたり、軽く打ち合ったり、パターンを変えている。




ザンはまず最初に1つのパターンをこなす。

2点の移動。他の動きは無し、【足】と【重】の組み合わせのみで。


剣で言えば素振りのように、まずこれだけを極めることに決めた。


単純だが、最速の蹴り出しに加え調整した重力変更、からの停止。

止まる際の重力タイミングと出力が非常に難しく、まずはそこに全集中。



感覚でできるまで繰り返すと少し速度を上げるが、まだ遅い。

バックステップは更に難しい。



単純作業を紛らわすためにも、今度は自由に跳び回る。


前後左右、岩山などへの高低差。

とにかく感覚で動き回り、速くしていく。



コケることはほぼ無い、だが、激突は増えた・・・。

やはり、【重】での加速からの停止・方向転換は難しすぎる。

だがここは慣れるに任せる。


明らかなミスの後だけは数度やりなす事もあるが。




そして『素振り』に戻る。


自由に動いた感覚が残っていて、ほぼ止まれず行き過ぎたり戻ったりするが・・・数回に1回、感覚でピタッと行くことがある。

感覚だけで同じことを繰り返す、上達を感じる時だ。


大丈夫と感じたら更に速く。

次に自由に飛び回ると、スピードは上がる。

その分激突はするが、確実に上達している。



心に留めておくのは――これは結局感覚の調整――という事。

貰った力で、自分で努力して得たものではない。


だが、最大限に引き出さなければいけない。

絶えること無く鍛錬して。



いきなり“25”が見えた。レベルが上がった・・・。



初めてだ、こんな事は。

覚悟で上がった?タイミングとしては。


ドラゴンで24.8とか9だった可能性はあるが・・・。

新しい力を使いこなす訓練のせいもあるだろう、けれど既にオーガなら数十匹かそれ以上必要になっているはず。


何か「女神様ボーナァス!」的なものか。

ふふっと微笑んで、ザンは訓練に戻った。



1段階、いやほんの少しか、違うフェーズ(段階)に入った気がした。





日暮れ前、少し早めに帰途につく。

装具屋に寄るためだ。



主人はサイクロという、初老の男。


「傷口を隠すタイプと義手は出来てるよ。

武器タイプは剣と肘を直結する金属製になる。

これには加工用の白鉄合金板が必要だが、実費で」


色々と物が並んだ…スプーンやフォークもある…机の端に設計スケッチが置いてあった。

なるほど、剣のジョイントから肘の曲げ部分まで外側が金属か、でないと剣筋もブレブレだろう。



「いくらです?」

「かかった分だけでいいよ。まあ、追加でもう2万行かないと思う」

ルナノを見たが、何も言わないうちに金貨20枚を数えて差し出した。


「仕入れにかかるでしょうから。

余ったら技術代で受け取ってください、返してもらうのは面倒なので」

ルナノにありがとと言うと、顔を赤くして頷いた。



前は行き帰りにもひっついてきたのに、今日は普通だった。よく分からない。




スプーンやフォークは付属品で、全て加工済みだった。


台座にそれらが並んでセットしてあり、義手を押し付けるとジョイントでロックされる。

台座に押し付けると外れて元に、付け替え自由だ。


別に、鉛筆など筆記具や小さな道具類をネジ込むジョイントと台座もある。



至極単純で、手の形さえしていない道具としての義手を頼んだが、左手には押し付けることで紙などがソフトに掴める機構も付いている。

至れり尽くせりだ。




これだけのギミックを仕込んで、道具付きで足は出ないのかと聞くと

「食えりゃいいんだよ。こんな商売で儲けたら神様に申し訳ない」

だそうだ。


経験を積んでの技術の金は取らないが、金属代金で損をしてはたまらないと申し訳なさそうにしていた。




壁にスポーツ選手用の義足そっくりのものが飾ってある。

あの義足は?と聞くと驚いたようだ。


「よくあれが義足と分かったな。

あれは、ある冒険者がどうしても復帰したいと言うんで、1年かけて一緒に完成させたものだ。

走ることも出来るようになって復帰したが、今はどこの町で狩ってるやら・・・」


現代いや元の世界とほぼ同じ義足を作るとは。

この人は凄い、と確信した。



イジワもそういえば居たが、生暖かい目で少し後ろで見ていたようだ。



調整するから何でも言いに来てくれ、と言う主人に送り出され、荷物を抱えて店を出た。

まだ義手は付けていない。


人通りもなかったが、念の為路地に隠れて魔法袋に収納。

1人1つ、オレも持っているが、必要なときには何でも放り込んで後で取り出して貰えばいい。


大きな物の場合の“被せ収納”もサエラさんに習った。



~~~~~~~~~~~~



食事は、やっと1人で食べられる、と思ったが・・・

義手を付けるところまでは自分でできるように作ってあるのでよかった。


フォークをセットするのにブレて上手く出来ないと、ここぞとルナノが二人羽織状態で手伝ってくれる。


あまり背中に押し付けないで欲しい。

色々こっちも、あっちも大変なんだから・・・。




朗読では普通にひっついてくるのが習慣化している。


その後、文字を書く練習は自分で全てやるのでどうしても必要なら起こすから、と1人になった。

腕の動きで文字を書くので慣れないが、無難に一通り終えた。


ノートの最後を見る。

夢のイメージは最初メモった前後の記憶を書き加えてある。

あんなにはっきりしていたイメージだったが、薄れかけて来るような気がしたからだ。



ユウには会わないと公言したが、あれは決意のようなものだ。

その時が来れば、一緒に戦うことになるだろう。


ルナノの事もあった。




そういえばルナノがよく分からない。


イジワは結構2人きりにしてくれているように見えるが。

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