表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/115

ユウ、初ギルドへ

街を歩く。

ショーウインドウに並ぶドレス。


人通りも多く、獣耳の人もいる。

すれ違ってから、さり気なく振り返ると、尻尾があった。


まるで(元の)現代のような懐かしさと、違和感と。



ザンさんを感じた。なにかが起こった。


ぼんやりと、方向ははっきりしないが遠い国にいる、確実に。

懐かしさとワクワクする心、ザンさんの事がそれぞれ渦巻く。



何を迷っているのか自分でもわからないが、口に出せぬまま、どこかに着いたようだ。


「先に済ませましょうか」

「うん、ギルドでやることはやっておこうかねぇ」


周囲と比べても結構立派、というか数倍以上大きい建物。



扉を開けて入ると、広い。学校とかの体育館・・・よりは小さいくらいか。


左側は市役所のようなカウンター、L字に奥に続くが、正面以外はただの仕切りのようだ。

仕切りより右側は食堂か喫茶か酒場か、兎に角そんな感じ。


昼前だからか、人はまばらだ。




ローブにフードの怪しい3人、大(普通)・中・小トリオの中がフードを取って受付へ。



「アリアと言って取り次いで」


受付の綺麗なお姉さん――エルフだろうか耳は尖ってはいないが大きい――は首を傾げて、アリアが両手で差し出すギルドカードと光る石を見た。


はっとして、背後を向き「ララ!」と言うともう1人エルフっぽい人――顔同じ?――が来た。

やはり石を見たようで「どうぞ」とカウンターの一部を開き、中に入れてくれた。



暫く待たされて、小太りだが鋭い目をした男性が降りてきた。

正装なのだろうか、ピシリとした感じの高そうな服。


今度は石だけ見せる。

「アリアです」

「あのアリアさん・・・で?」


「話せる場所で、いいかい?」

男性は「はい」と頷いて「こちらへ」と歩く。


「君にも動いてもらうかもしれないから来なさい」

ララと呼ぶ事務員も一緒に。




2階の応接らしい部屋。

ギルドの2人と私達は向かい合って座った。


「本来マスタールームに来て頂くのでしょうけど、取り敢えずということで。

城塞都市、ナーラへようこそ。

ギルド長のガドラです。


こいつはララ、邪魔にはならないと思います」

マスター、ルーム?社長室みたいなものか。



アリアが主役のようで、口を開く。

「お嬢さんは事情はどのくらい知ってるんだい?」


「ララはこういう時のために置いていました。

妹の、受付の方はそっちと事務で仕事ができるので、普通に石所持者への対応をさせているだけです」



「なるほど。じゃあマスター、確認するよ。

“悪魔教”はどう思う?」


「光は闇を照らし、消し去る。ですね」


? あ、『山』『川』みたいな暗号、符牒(ふちょう)だ。

しかし、こちらが言うのなら分かるが、ギルド長がなぜ?




話は進む。


「この2人はあたしと同じに扱って。あなた達以外には秘密で」

「ルルが・・・受付の妹が石を見ていますが」


「あたしのことだけ、えらい人って感じで言えばいいと思うよ。

まず確認させておくれ、大教皇暗殺未遂のその後の動きはあるかい?」


「何もありませんな。

犯人が病院から脱走したという知らせは有りましたが、後は何も」


いきなりどストレートにそんな事を聞くのか・・・。



「こっちの要望からね。この2人は今日冒険者登録するから表向きは普通に。

ただし、うちで訓練して・・・エース級だから依頼種別等は制限なしでね。

今のとこはそのくらいかねぇ。

ギルド側からの要望はあるかい?」


「実力を出して頂くのは大変結構ですが・・・“アンテ”の事は内密にして頂ければ。

言うまでもないとは思いましたが」


最後は何か立場が逆のような。



リリアを見ると、当然というようにすべての話に頷いている。

知らないのは、いや分かっていなかったのは私だけ、か。


遣り取りはそれだけで、事務的だった。




下に降り別れる寸前、ギルド長はしらじらしい事を割と大声で言う。


「いやいや、懐かしい人が来たと聞いて。

観光なり、冒険者なり、まあ無理せず楽しんでいってください」


隣の食堂も人はまばらだが、まあそういう事にする方が問題がないのだろう。



早速受付にララが耳打ちをして去っていった。

手はず通り、か。


リリアとユウは新規冒険者登録。

Eランクらしい。


リリアがカードを見て目を細め、ふんっと懐にしまう。


「宿でも取って、ゆっくり話そうかねー」

「そのほうがいいですね。まあ予想通りでしたが」



ザンの事を話そうと思ったが、まだ整理がつかない。


なにしろ、更に分からないことだらけだし、話を聞くべきだろう。

ユウは何も言わず頷いて、付いて行く。



~~~~~~~~~~~~



受付で教えてくれた宿は“くつろぎの湯”。


銭湯みたいな・・・ということは風呂があるのか、この世界には。

主人公が自分で風呂を作るのが定番・・・いや現実なんだからここは。


考えているとわけがわからくなるので、やめておく。

落ち着こう。




(1人除いて)新米冒険者らしく3人部屋。


いや多分、稼げたとしても3人部屋だろう。

床に腰を下ろす。


森での野営テントと同じだが、宿でも椅子無し。

畳こそ無いが、何か日本的な感じがする。



「アリアさんは“里”出身でしたね。

予想はしてましたが、“アンテ”中枢のお方とは。

で、“里”自体が“アンテ”なのですよね?」


「カマをかけてる、ってわけでもないよねぇ。確信してるようだし」

リリアさんが考えていたのはこの事だったらしい。



ユウも聞いてみる。

「里っていうのはどこのことなんですか?」


「“里”は“里”だよ」

「みんな誰もが里と言っています。

場所はほぼ知られていないようですが・・・」


「はあ・・・」

里というのがアリアの故郷の名前らしい。



あとはなんだったか、聞くことがあったはず。


「ギルド長によって色々な立場の者がいてねぇ、不正の無いように管理・監視する繋がりはすごいけれど、必ずしも一枚岩というわけじゃぁないんだよ。


だから、“アンテ”にとって信用できるマスターか、まず確認しなければならなかったんだよ。

“悪魔教”について尋ねるのがそれ」


アリアの方から言ってくれた。



「信用できるギルド長からヤツらの私の扱いが聞けたことで、行動可能なことが分かりましたし。

勿論顔などむやみにさらさないようにはしますけど」


「うん、暗殺未遂のあと病院から脱走したのに手配もない。

大教皇と教会の『寛容さ』を見せる狙いもあるだろうけど、死亡が確定しているから、というのが本当のところだろうねぇ。

手配なんて無駄でしか無い」


「あっ、なるほど」


「最初からEランクでしたし。まあ簡単でいいですけどね」

聞くと、本来は見習いのFランクのはずだそうだ。



多分おおまかには分かってきた。ギルド長に会った意味も。


・・・大事な事を聞かなければ。

ザンさんの身に何かが。




「大事な事を言えていませんでした!


この街に入って、ザンさんの身に何か起こった事が伝わって来たんです。

あの時に言えなくてすみません。ショックと・・・この街に着けた安心とか色々入り混じって・・・」


「あの時ね」

「尋常じゃないとは思ったけどねぇ」


「弱々しいザンさんの気配、というか光点のようなものが。

あ、近くじゃなくて物凄く遠くの国だと思います。

分かるんですなんとなく」



「もし『会うべきか』とか言うんなら違うと思うよ。

いや、少なくとも待つべきだろうねぇ。


本当に必要なら、ザンさんの方から探そうとするはず。

間違いなく。

まあ今夜はここの風呂にでも入ってゆっくり休もうよ」




温泉・・・違った、風呂か。異世界で。


リリアさんの巨乳がまともに見れる。



わたしのなかのおっさんが目を覚ます。


次回は普通のお風呂シーンです。

ザンが次元を超えて覗き見という展開はありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ