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ザンとギルド長

ルナノは、必死で腕を繋ごうとしてくれたようだ。


2人が連れて帰ってくれた。


治せない事を二人に言った。


ギルドでは、いつものおねえさんとにこやかなおっさんと話した。


聞かれたことをそのまま話した。


「報奨金」が入るそうだ。良かった。

2人にこれ以上迷惑はかけられない。



宿では、トイレだけは恥ずかしかったが・・・イジワはいいやつだ。


ぴっとりと寄り添って夕食を食べさせてくれるルナノを、初めて愛おしいと思った。


横になっても、ルナノの体温が右半身に残っていた・・・。



~~~~~~~~~~~~



イジワとルナノ側から語っておこう。



追いつた時には、腕のないザンとすぐ前に赤い鎧の男が倒れていた。


血溜まりを見て、男の鎧が血で染まったかと思ったが、腰から下の鎧と服装を見て違うと分かった。


そんな事よりやるべき事を。



「傷を診てやれ!」

イジワはルナノに言い、奥のドラゴンへ向かう。


こちらは赤い体液が所々垂れ、飛び散ってはいるが、大量に出血してはいない。

ドラゴンというものが良くは分からないのだが、本などで読むと普通の魔物や生物と変わらず血は出ると思っているが。


致命傷は・・・頭部を調べると刺し傷、この下にだけ血溜まり、これだ。



一方ルナノは一瞬迷ったが、腕を拾い切断面に当てようとして不思議なものを見た。


ザンの腕の切断面は既に肉が盛り、赤い奇妙な魔法陣が浮き出ていた。


とにかく、利き腕の右腕を切断面に押し付ける。

まだ間に合う可能性もある。


聞いた話ではあるが、腕などが切断されても即座にくっつけて幾度もヒールを使えば血管など繋がり、後に治療できる可能性がある。


部位欠損してしまえば、大教皇クラスの治癒魔法が不可欠なのだ。




全く魔力が通らない。自分では手に負えない。


切れた腕に冷却をかけ氷漬け寸前にし、袋に入れる。

イジワが戻ってきている。


「変な模様が、切れた所にあるの。ギルドに頼るしかないよ」

「とにかく急ごう」


バックパックには、服がボロボロになった時用のローブがあった。

ザンにローブを掛けてやる。



急を要する。


持ち帰るのは冷却した腕と、ザンの短剣のみ。

2人でザンの腕を支え、一刻も早く・・・。



途中一度だけザンが喋った。


「やつは、治癒は効かない、このままだ、って」





ギルドに入ると受付嬢に


 ・ドラゴンと赤い鎧の男を倒したこと

 ・冷却した腕を持っておりザンに治癒魔法が必要なこと


を伝えるとギルド支部長の居るらしき上階へ走っていく。



ギルド長は何らかの手段で各方面へ連絡を取るらしく、すぐに治癒魔法の使い手を手配し、調査隊が現地に向かうと言った。


3人は2階の応接間らしき所に通された。

ルナノは腕を机の上に取り出し、再度清浄と、調整した冷却を掛け続ける。



「話せるか?何があった」


「ドラゴンはヤツのペットだった。

知らずに殺して・・・怒っていた」


しばらく沈黙が続いたが、ルナノが訪ねた。

「治癒が効かないって?どういう事?」


「・・・

魔法陣が・・・呪いのやつらしい・・・一生苦しめ・・・って・・・」




1時間くらいか、はっきり分からないがやっと教会の神官が来た。

名前さえ忘れたが、最も腕がいいらしかった。



ルナノが状況を話すが、すぐに傷を見て厳しい表情。


「世間で言う“悪魔教”の呪い、呪法陣ですな。

この禍々しい赤色は間違いないでしょう。

大教皇でも繋げることさえできないでしょう。


解呪もできません。

思いつくのは手を根本までもう少し切って、痛そうですが・・・聖級治癒魔法をかけるとかですが、私の読んだ知識では呪法陣は消えないはずです。


ただし、他の部位は治癒できるはず。

そういう呪いですので」



神官が帰り、3人とも沈黙したまま。


ルナノは腕を冷やし続けた・・・。




宿に帰るべきかと思い始めた頃、扉が開いた。

受付嬢サエラと、白髪交じりの強そうな割に温和な笑顔を浮かべる男。


「調査が終わりました。オークエリアなのでDクラス以上の護衛集めに時間がかかりました。

報酬もですが、いろいろとあってギルド長から話します」



「ギルドマスターをしているラダンだ。ご苦労だった。

神官から別室で聞いたよ。気の毒だったね」


どうでも良い事だが、ギルド長は強かったくせに温和で“なめられやすい”らしい。

だから必要がなければ顔出しはせず、裏方に徹しているそうだ。



「ヤツが、ヤツらがあそこで何をしていたか、聞いたかね」


ザンは俯いて自分の腕を見つめたまま黙っている。


ルナノははっとして、腕をズタ袋に詰めようとした。

「待ちなさい、腕はギルドの保存庫に入れておこう。

今後何らかの治療法が見つかる可能性もある」


受付嬢は持とうとしてためらい、ルナノが持ち保存庫へ行くようだ。


後で聞いたが、敵の身元等情報は秘匿されていて、受付嬢だけが交代を置いて部屋に残れたようだ。



イジワが先に説明する。

「ペットだったそうです。呪いをかけられたと」


「なるほど。他にはなにか話したかね」

遠慮がちに頭を低くしてザンの顔を覗き込むように尋ねる。


「パピィと、言ってました。お前は許さん、と。

多分魔法を受けて。一生苦しめ・・・と」


「それだけかね」

ザンはゆっくりうなずいた。


ルナノとサエラが戻った。




「ドラゴンとヤツの死体はここの魔法袋を総動員して持ち帰ってある。

解体は手伝わせたが、それ以外は護衛にも秘密は守らせる。


これからの情報は、君たちと私とサエラのみに・・・いや、後日に本部関係から調査が入ると思うが」



「話を総合すると、ヤツはペットにした子ドラゴンとあそこで時々会っていたということか。

さっぱり分からんはずだな・・・。


ヤツは秘密裏に手配されていたデュエラノという男だ。

“悪魔教”の関係者であることは確定している。

元Aランク冒険者だ。

ヤツらは赤い衣装に身を纏うことを好む。


ドラゴンの使う“障壁”は魔法陣の特徴から、ヤツが何らかの方法で付与したものだろう。

そのため、ドラゴンの調査は信用できる者のみに依頼していたのだ」



「報酬だが。

ドラゴンの調査と討伐、ともに5万ジョネン。

デュエラノの報奨は50万ジョネン、本部確認後だが。

あと、これも確認調査後だが、ドラゴンの全ての部位、デュエラノの装備、もしくは相当の代金が君たちのものになる。


慰めになるかどうかは分からないが・・・。

ああ、当然君たちが討伐者であることも秘匿される。

ランク昇進には考慮するから安心しなさい」



ギルド長は退室、受付嬢に促されのそりとザンも立ち上がり皆で宿へ。


ザンはローブに身を包んだまま部屋へ。

トイレにはイジワが同行。


食事は部屋へ運び、ルナノが口に運んであげた。

ザンを2人で着替えさせ、先に寝かせた。




ささやくように話すイジワとルナノ。


「ザンはいずれにしても俺たちが守る。いいよな?」


「私、私、ザンとずっと暮らす。一生。

同情とかじゃない、ザンのこと」


「・・・本人に言え。

今日は洗濯とかして寝よう。色々有りすぎたからな」

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