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ユウと魔物はお友達?

森を歩く女性3名。


焼き払った地域から真っすぐ東へは進まず、念のため北へずれるように動いていた。


例の難所を抜けて翌日は3人とも気が抜けたようになり、事務的に遭遇した敵を処理するだけだった。


ユウも遠くから魔法を降らすのはやめた。

前半と同じ連携になっていた。




「この世界・・・この国ってどんな所なんでしょう」


夕食までほぼ誰も何も喋らなかった中、ユウの口から聞きたかったことが思わずこぼれた。

どこかの町か村に近づいていると思うと期待と不安が膨れ上がっていた。



「なんか、人がたくさんいると思うと、魔物より怖いです・・・変ですけど」


「そうね。ユウは山に飛ばされてからほぼ誰にも会ってないのよね」

「まものがおともだち、って感じなのかねぇ。冗談だけど」


「正直言うと、ずっと森のなかで3人で暮らせたらなぁって思ったりしてます。

まだ文字もちゃんと読み書きできないし、常識みたいなことも聞きたいことが山ほどあって・・・」


「それも悪くはないかもねぇ」



リリアは黙っていつものように考えている。


そんなに真剣に考えることか、と思ったが。

彼女は本当に色々考えてくれているのだと分かる。


「うん、ルートをもう少し北に向けてゆっくり行きましょうか。

でも、必ずどこかの町へ行き、冒険者になるのは決定事項です」


一瞬アリアを見て、少し意外な話を続けた。


「最初は、目立たずに全く普通の冒険者を装うべきかと思ってたわ。

私が目立たないようにとか、ユウも同じにすべきかと。

・・・全力でやるべきだと、今は思ってる。

強く、気高くなるためにもね」


リリアはアリアをじっと見ている。

アリアは肉をもぐもぐしながら顎に手を当てて・・・あれ?リーダーはリリアでは。


アリアが小さく頷いた。




翌日、真昼にはシャワーを浴びる。

勿論ユウによる温水シャワーだ。


ユウとアリアは全裸で、まるで中高生の姉妹が水遊びしているようだ。

アリアの顔だけおばさんなのが・・・惜しい。


ユウはいつものように、泥石鹸で汚れと油分を落としながら自分で体の感触を確かめている、

鎖骨、肋骨の感触。すべてあの頃のままだ。

たまに、処女に戻っているのかと考え、どうでもいいやと消し去る。


練習中の土魔法で、水たまりにならぬよう排水も考えてある。

細長い穴を何本か空けただけだが。



リリアはたまに体を拭く。

結構巨乳だ。


ベテラン冒険者になると、宿以外ではスイッチが入ってしまうらしい。

生き残るためには当然だという。


いかに、ユウがいれば安全でも、今気を抜くことが今後にあとを引きそうで怖いそうだ。


それにしてはアリアははしゃいでいるようだが。

まあこの人は特別かも。




夕食からは落ち着いて、ユウの質問タイムが始まる。


ユウが何が分からないのかがそもそも2人には分からない。

お金があるのか、単位は、などから始まって、町の生活については見るのが一番、という元も子もない話に結局落ち着く。



おおよその、身分制度を含む国の制度など。


今の宗教はほぼ一つで、名前を明らかにされていない(分からない?)神。

今代の神は女神であるとか、ピンと来ないことが多いが・・・。


あれこれ聞きたいことを聞き、アリアとリリアも喋りたいように喋る。




寝る時間が来てしまうがユウはもうしばらく起きて、見張りのアリアと、魔法や新しい能力について話す。


「“想いをこめる”という言葉から思いつくのは、言葉通り人への想いかな。

ユウでいえば唯一知っているザンさんねー」


【想】のことだ。



「あとは、魔道具とかー・・・これは魔石なんかを使った機械的なものだけど、まれに人の思念が込められたものも存在するのぉ。

“悪魔教”の場合は生贄や儀式で呪いを込めるそうだけどぉ・・・」


怖さなのか怒りなのか、お互い目を細め見つめ合ってしまった。



「まあ、一番可能が高いのは“具現化”に近いと思ってるんだよねー。

あたし理論だけど」


「鎖を使った攻撃防御とか・・・じゃないですね・・・」

「? 鎖も有りだと思うけど。おもしろいかもねー。


魔法って普通手から放出するでしょー?

でも、“インフェルノ”っぽいやつとかは、敵の上に氷や火を降らせる。


離れた場所に魔力を放出してるわけだけど、これは上級の更に上の魔法で、確か王級・・・今度確かめとくけど。

あの魔法を出したとき、【想】ってのを使ったんじゃ?」



「いえ、間違いなくオーガを殲滅した後で、そのおかげで貰えたんです」


「んー。アレ程のものをいきなり出せたのは、“具現化”が関わってると思ったんだけどねー」


「やらなければ死ぬしか無い、という覚悟があったから・・・よく覚えていませんが」



「一つの可能性に過ぎないけど、あれをやったことが【想】というのをもらうキッカケになってる気はするよ。

確かめるには・・・魔法を作る時に意識して使ってみることかねぇ。

魔法以外にも試してみる価値はあるけど」


「まる1日以上経ちますけど、何もわからないんで。

なんとなく私も魔法のような気がします。

アリアさんありがとう」



「あっ、これ言おうと思ってたんだ。

【想】が思ったとおりなら渡りに船だったけど・・・一応教えとく。

町に入ってから襲われそうになった時。誘拐とか、まあ色々ヤバイ人もいるし。


あたしやリリヤは体術とか力技でなんとかなるけど。

ユウは魔法で殺せるけどそれだとあと面倒だからね。


土魔法で小石を飛ばすのも有効だけど、水魔法なら氷の檻。

どんなのかは想像着くと思うけど。

明日やってみよー」



~~~~~~~~~~~~



既に森は終わり、草原を歩いている3人。


あれから同じように毎日“森の女子会”は続き、色々とわかった。

リリアの記録を見れば、元の世界と暦はほぼ同じで一ヶ月と五日。


見えてくるのはお城・・・ではなかった。

町が城壁に包まれているそうだ。



森側から現れて怪しまれないかとも思ったが、かなり北に迂回しているので大丈夫だろうという。

門番との交渉はリリアに任せ、何事もなく街へ入った。


後で聞いた所によると・・・一見ローブ集団で怪しそうだが、清潔にしていて臭いもせず、貴族も御用達の高級フレグランスの香るリリアには無警戒だったそうな。


色んな事情が分かればこそだ。



城門を抜けてすぐは、ボロ家ばかりだった。


少し歩くと、普通っぽい家だ。4・5階建ての建物も先に見える、都会だ!




と、違和感が。


腕がない。肘の少し先から消えている。


「ああああっ」


「ユウ!」「どうしたの!?」


痛みは無・・・・・何も起こっていない。

腕もある。


漠然と、分かった。

ザンさん。


遠く、遠く、音も聞こえるはずのない遠くの国に、ザンさんの光点が



見えた。


第一章終了です。

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